婚約者は愛を選び、私は理を選んだので破滅しても知りません!

ユウ

文字の大きさ
59 / 115
第二章

28消せない噂

しおりを挟む



一冊の本を読み、ランドルフは疲れたようにため息をつく。

(一体誰が…)


この本を誰が贈ったのか解らない。
嫌がらせにしてもこんな真似をして何の意味があるのか。

既に傾いた男爵家のすぎないオイシス家を潰しても何の利点もないのだから。


「ランドルフ…なんとかして。こんなの耐えられない」


「エミリー、大丈夫だ」

「ランドルフ…」

涙を浮かべるエミリーは何とかしてくれるのだと思い安堵するも、直ぐに地獄に叩き落される事となる。


「噂なんて気にする事はない。どうせすぐに飽きるだろう」

「ランドルフ?」

「社交界では噂なんて気にしていたらきりがなかった…それに君の名前が出されている訳じゃない。だから君も気にしないでそろそろ外に働いてみたらどうだ?」

「何を言っているの…」

「こういう時こそ堂々とすべきだ。小さい事で悩んでいても仕方ない」


ランドルフは小説の事に関しても外で流されている噂も気にしなければいいと無責任な事を言うばかりで解決策打開策も考えようとしていなかった。


時間が解決してくれると思い込んでいた。
実際社交界に出ていた頃は、悪い噂が広まってもしばらくすれば飽きて騒がれなくなったのだが、その裏で噂を消す為にカナリアが動いていた事も知らない。


貴族達の暇つぶしに噂が消えたとしても平民は別だった。
貧富の差故に貴族や、裕福な商人を憎む平民は少なく無いので面白おかしく噂をするだろう。

町でもまったくの人付き合いがまったくできていないエミリーは友人もいなかった。
ギルドとも関係が良くなく、客に対しても苦情が多くエミリーの評価は最悪だったので助けてくれる人はいなかった。


今さらキャスティ商会に頼るなんてできるはずもなく。


「どうして何もしてくれないの!ランドルフは私が外でも責められても平気なの?小説を今すぐ止めさせて…お願いよ」


「エミリー、それはできない」

「どうして!出版社に直接抗議してくれれば…」

「既に小説は出回っている。何よりそんな力はない」


ランドルフの立場上そんな真似はできないし、出版社に小説を差し押さえるには多額のお金と権力が必要になる。


「劇に関してもだ。傾きかけた男爵家ではどうする事も出来ない」

「だったら宰相様にお願いして…貴方と宰相様はお付き合いがあるのでしょう」


以前は宰相夫妻と付き合いはあったが今は王宮に出入りする事も出来ない状態だ。


「無理だ。宰相閣下との付き合いはカナリアを通じてだ」

「だったら他に…」

「他の貴族もカナリアを介してだ。僕個人の付き合いはないし…既に友人とは縁を切られている。あの挙式で」

最悪な結婚式を行った後に、ランドルフは友人達と縁を切られていた。


今ではランドルフを庇ってくれる友人はいなかったのだから。
しおりを挟む
感想 136

あなたにおすすめの小説

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」 「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」 「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」 「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」  あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。 「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」  うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、 「――俺のことが怖くないのか?」  と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?  よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。 そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。 第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。 周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。

藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。 バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。 五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。 バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。 だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

二人の妻に愛されていたはずだった

ぽんちゃん
恋愛
 傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。  二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。  アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。    アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。  何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。  全二十八話。  十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

処理中です...