綿あめの溶けたあとに

ふわふわの綿あめのようなむらさきいろは、今にも消え入りそうに揺れているのに、それに触れる勇気は俺にはない。
自然豊かな田舎から都会の高校に引っ越してきた清水健斗(シミズケント)が痴漢から助けたのは、ふわふわのパステルパープルのカールヘアに、華奢な身体をぶかぶかな水色のパーカーで包んだともすれば美少女にも見える、所謂ジェンダーレス男子、篁絢人(タカムラケント)だった。
「お前、男!?」
「やっぱり変なの、ふふ」
どこか掴みどころのない絢人は「俺の彼氏になってよ」と笑いながら告げる。
可憐で軽薄なその言葉は、健斗の心を妙にざわつかせた。
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