鈍色の丘陵

明治三十七年、日露戦争。
大日本帝国とロシア帝国は、朝鮮半島と満州をめぐる利権と安全保障を背景に、ついに戦火を交える。
日本軍の前に立ちはだかったのは、ロシア帝国が誇る近代要塞・旅順。機関銃、鉄条網、砲撃、コンクリートに覆われた陣地。そこは、兵士たちをすり潰すための巨大な機械であった。
北海道から動員された第七師団第二十七連隊の一等卒・木嶋は、友人の川上、上官の石橋伍長らとともに、旅順攻略の要衝である二〇三高地へ向かう。
戦争の背景も、作戦の必要性も、彼ら末端の兵士には遠いものだった。ただ命令に従い、砲弾の雨の中を進み、倒れた仲間を越え、名も知らぬ敵兵と刃を交える。
これは、近代戦争の歯車に呑み込まれながら、それでも生きようとした一兵卒たちの物語。
あの鈍色の丘陵は、今日も彼らの前にそびえ立つ。
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