【短編050】 白線:「仕方ない」と言える相手が、いなくなった。
三代続いた野球審判の家系に生まれた博之は、ロボット審判の導入とともにグラウンドを去り、スポーツ用品店で働いている。
審判がAIに替わり、警察がAIに替わり、裁判官がAIに替わっていく。「人間は感情に流される」「AIには贔屓がない」——誰かが言った言葉が、また誰かの口で繰り返される。
やがてAIだけで構成される政党が生まれ、国を、世界を動かし始めた。
博之は怒らない。抵抗もしない。ただ、店の奥の段ボール箱を、まだ開けずにいる。
猫のハルだけが、毎晩温かかった。
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