定年まであと少し。
再雇用申請書を引き出しにしまったまま、真壁亮介は三週間、答えを出せずにいた。
「AI使えない世代を残す余裕、会社にもないですし」
その一言が背中を押した夜——深い眠りの中で亮介が見たのは、人間関係の苦痛が完全に消えた未来都市だった。
誰も怒鳴らない。誰も傷つけない。
それは、ずっと望んでいたはずの世界だった。
はずだった。
AIが感情を管理する時代に、それでも生きるとはどういうことか。定年間近のおじさんと一匹の猫が問う、現代SF短編。
文字数 4,580
最終更新日 2026.05.16
登録日 2026.05.16