小林恵那の願いごと ── 好きなのかどうかがわからない
小林恵那は、幼少期から天才だった。何を見ても構造が透けて見え、他人が一生かけて辿り着く場所に十歳で立っていた。周囲との圧倒的な差は、彼女に傲慢さではなく、世界をただ正確に計測・分類しようとする静かな習性を植え付けた。
恵那は、人を表で管理している。
欄は七つある。名前。年齢。学部と英語。金の入り方と出方。断る回数。頼まれたときに残る時間。人を並べるときに頼めるかどうか。
百人に会って、九十二人を外した。外す理由は一行で足りる。続かない。断る。数字を見ない。人を数えない。自分の話をしすぎる。自分の話をしなさすぎる。よそで同じことを始める。
残った八人は、一行では書けない。
去年の暮れに、列を一つ足した。見出しを付けていないので、幅だけが広い。
その列は、測って入れるものではない。自分で決めて入れるものだった。
山内貴之 恋
二十二の年の二次会だった。鞄を引き寄せられたとき、二つ下の後輩が入口から来て、いつもと同じ丁寧語で一度だけ言い返した。
それだけのことだった。それだけのことを、恵那は二年かけて測っている。
五月に、表へ行を一つ足した。名前の欄に、入れる名前がなかった。
年齢も、学部も、金も、断る回数も、空にした。
最後の列にだけ、一文字打った。
愛
これは表に入れられない、と恵那は思った。それでも消さなかった。
誰も、悪人はいない。誰も、命令していない。
これは、測れないものを一つだけ持ったまま、八人を選んで、願いを叶える機械を作った人の記録。
恵那は、人を表で管理している。
欄は七つある。名前。年齢。学部と英語。金の入り方と出方。断る回数。頼まれたときに残る時間。人を並べるときに頼めるかどうか。
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残った八人は、一行では書けない。
去年の暮れに、列を一つ足した。見出しを付けていないので、幅だけが広い。
その列は、測って入れるものではない。自分で決めて入れるものだった。
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年齢も、学部も、金も、断る回数も、空にした。
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これは、測れないものを一つだけ持ったまま、八人を選んで、願いを叶える機械を作った人の記録。
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