別れ話をしましょうか。

ふまさ

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「僕には、きみが何を言っているのか、まるでわからない」

 真正面からデージーを見据えたアールが、強い口調でそう告げた。

「僕がコリンナに告白? きみという婚約者がいるのに、そんなことするはずがないだろう」

「……で、でも。アール様は、お姉様を愛していて」

 軽いパニック状態のデージーに、アールは「何年前の話をしているんだ?」と眉をひそめた。

「僕がコリンナに告白して、コリンナがそれを受けた? あり得ないだろう、そんなこと」

「お、お姉様は、アール様のことがずっと好きだったんです。ですが、資産家のニエミネン伯爵家との繋がりがほしいとの、父の命で仕方なく好きでもない人と婚約を……」

「コリンナがそう言ったのか?」

「は、はい。確かにそう言っていました」

 アールは、はあとため息をついた。

「……学園で、二人を見かけたことが何度もあったけど、コリンナはとても満足そうな顔をしていたよ。欲しいものは何でも買ってくれると、友に自慢しているところも見た──いや、むしろ……」

 顎に手をあて、少し考える素振りを見せたあと、アールは立ち上がった。

「行くよ、デージー。コリンナは今日一日、屋敷にいると言っていたね」

「い、言いました……」

「ここでこうしていても、らちがあかない。元凶に話を聞きにいくとしよう」

 デージーは、元凶? と目をぱちくりさせた。姉のことを悪く言う人など、これまでお目にかかったことがなかったから。

「ほら、おいで」

 手を差し出すアールの顔を、デージーは思わず、じっと見詰めた。数秒後。デージーの目から、ぽろっと涙が零れた。

「……あ」

 意図せず流れた涙に、デージー自身が驚く。アールはそんなデージーに、ハンカチを差し出した。ありがとうございます。デージーはぼんやりしながら、それを受け取った。

 ハンカチで涙を拭うと、アールの匂いがほのかに鼻をくすぐった。また、涙が溢れた。

「……わたしはまだ、アール様の傍にいられるのでしょうか……?」

 涙ながらに小さく問うと、アールは、いてくれないと困るよ、と優しく笑ってくれた。



 
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