グルメから始まる前世の記憶~冷たい婚約者は、前世のあこがれの上司でした~
静まり返った侯爵邸の図書館で、私は一冊の古びた本を広げていた。
「……何、これ」
そこに描かれていたのは、海を挟んだ隣国の食文化を紹介する挿絵だった。
お椀に盛られた湯気立つスープ、絶妙な焼き色のついた魚、そして白く輝くつやつやとした粒の集まり。
その瞬間、胸の奥から激しい郷愁が突き上げてきた。懐かしい。たまらなく、無性に、これが食べたい。
視界がぐにゃりと歪み、頭の中に濁流のような記憶が流れ込んでくる。
ーー私は、日本の平穏な家庭で育ち、食べ歩きと料理が何よりの生きがいだったアラサーの会社員だった。
「行くしか、ないわ……!」
その前に、どうしても乗り越えないといけない壁があった。
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