闇喰らいの代償
三十年前の大災厄以来、太陽が昇ることのない街、ノクスヴィル。灰色の空から降り続ける雨が、腐敗した街を濡らし続ける。
この呪われた街で、カイン・アッシュフォードは「闇喰らい」として生きていた。
闇喰らい――それは、人の罪を喰らい、その罰を代わりに受ける者。殺人、裏切り、過失。あらゆる罪を自らの魂に刻み込み、依頼人を苦しみから解放する。かつて王国騎士団に所属していたカインは、三年前に親友エリックを見殺しにした罪に耐えきれず、自らの意思でこの禁忌の道を選んだ。
ある日、医療ミスで少女を死なせた医師エレナが訪れる。彼女の罪を喰らったカインは、記憶の奥に奇妙な「影」を目撃する。そして数時間後、エレナは謎の死を遂げた。
元戦友ルシアンが明かした衝撃の事実――街では連続殺人事件が発生しており、被害者は全員、闇喰らいに罪を喰わせた者たちだった。犯人は伝説の存在「魂喰らい」。人間の魂を喰らい、生命力を奪う禁忌の怪物。
治安局長マーカスと副長サラによる調査が進む中、占い師イヴリンの証言により、疑惑はカイン自身に向けられる。そして、ルシアンがカインの記憶を調査した結果、戦慄の真実が明らかになる。
魂喰らいは外部の存在ではなく、カインの内部に宿っていた。
他人の罪を喰らい続けたカインの中で、その罪が積み重なり、怪物が形成されていた。カインは無意識のうちに、自分の依頼人たちを死へと追いやっていたのだ。
魂喰らいを分離する儀式の最中、カインは自分の魂の深淵へと引きずり込まれる。そこで対峙したのは、自分と同じ姿をした影――カイン自身の罪が生み出した存在。
影が告げる真実。カインは他人の罪を背負いながら、自分の罪からは目を背けていた。親友エリックを囮にして生き延びた罪。その罪から逃げるために、カインは闇喰らいとなり、他人の罪で自分の罪を覆い隠そうとしていた。
「お前が本当に贖罪したいなら、自分の罪と向き合え」
影の言葉に、カインはついに自分の罪を認める。エリックの死を正面から受け止め、逃避を止めた瞬間、魂喰らいは光となって消えた。だが、代償は重い。カインは今後、全ての罪を一人で背負い続けなければならない。
目覚めたカインの体には、膨大な罪の重さが刻まれていた。治安局の報告書には「余命おそらく一年以内」と記される。それでもカインは、闇喰らいを続ける決意をする。
雨が降り続ける街の片隅で、カインは今日も罪を喰らう。痛みに耐えながら、エリックの分まで生き続けるために。
これは、罪から逃げ続けた男が、真の贖罪へと至る物語。暗闇の中で、ただ一人戦い続ける闇喰らいの、終わらない苦悩の記録である。
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