象山先生と、神田お玉ヶ池の怪物たち
「この日本で、世界の現実と真の兵学を知っているのは、この俺一人だけだ」
嘉永三年、江戸。神田お玉ヶ池に、とんでもない男が塾を開いた。
その名は佐久間象山。自作の大砲をぶっ放しては見事に大爆発させ、江戸中から「ホラ吹き男」と叩かれながらも、眉一つ動かさず「職人の技術が俺の数式に追いついていないだけだ」と言い放つ、傲岸不遜な大天才。
そんな「鼻持ちならねぇおっさん」のもとに、時代の地殻変動を察知した若き怪物たちが吸い寄せられるように集まった。
貧乏長屋から死に物狂いで這い上がってきたオランダ語のバケモノ・勝麟太郎。
隻眼に冷徹なロジックを宿す長岡の麒麟児・小林虎三郎。
そして、純粋すぎるゆえに狂気を孕んだ長州の至宝・吉田寅次郎──。
水と油のような天才たちは、夜な夜な最新の西洋兵書を翻訳し、地球儀を回し、日本を救うための「知のデッドヒート」を繰り広げていく。
しかし、1853年。あの「黒船」の到来が、彼らの密やかな黄金期を容赦なく打ち砕いた。
襲いかかる時代の激流。引き裂かれていく師弟の運命。
松陰の死、海舟の台頭。そして、時代を先走りすぎた孤高の太陽・佐久間象山に迫る、暗殺の足音──。
黒船が来航してから、その男が京都の露と消えるまでの十一年間。
精神論を排し、数式と知恵を武器に世界と戦おうとした男たちの、可笑しくも壮絶な幕末青春群像劇!
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