破談録──婚約破棄に至り続けた男の記録
王室の末端に生まれた彼にとって、人生の大半は「駒」であることしかなかった。
王の庶子として生を受け、乳飲み子のうちに母を亡くし、傅役の老伯爵邸で「婚姻外交の道具」として磨き上げられた。秀でた容貌と知性、そして与えられた役割を完璧にこなす謙虚な振る舞いは、全てが国益のための「商品価値」だったのだ。
9歳で結ばれた北の大国との婚約。次いで、女性君主が台頭し始めた国際的潮流の中、新たな外交戦略の要として求められたF国王太女への婿入り。だが彼の縁談は、幾度となく持ち上がっては消えていった。特に「真実の愛」を理由に破談を突きつけられた屈辱は、彼から愛を信じる心を奪い、冷徹な軍人へと変貌させた。
やがて国際情勢は激変し、彼の「駒」としての役割も終わりを告げたかに見えた。しかし、心に深い孤独を抱えた彼を突き動かしたのは、軍務への狂気的な没頭と、そして──ある令嬢との出会いだった。
彼女は、王室の思惑にも、世間の目にも、貴族社会の倫理にも逆らってでも、彼が手に入れたいと渇望する、唯一の存在。「私の家族」だ。
これは、「駒」として生きてきた一人の男が、全ての運命に抗い、自らの手で唯一の王国を築こうとする、苦く切実な「破談」の記録である。
※架空の国の架空の人物の手による手記形式の読み物です
王の庶子として生を受け、乳飲み子のうちに母を亡くし、傅役の老伯爵邸で「婚姻外交の道具」として磨き上げられた。秀でた容貌と知性、そして与えられた役割を完璧にこなす謙虚な振る舞いは、全てが国益のための「商品価値」だったのだ。
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