大公様、ヒロインはそちらです。
「結婚式は三ヶ月後に決まったよ、ミレイユ」
伯爵令嬢ミレイユ・オルブライトは、婚約者から結婚式の日取りを告げられた瞬間、前世の記憶を取り戻した。
ここは、生前に読んだ恋愛小説『雪原に咲く花』の世界。
そしてミレイユは、ヒロインでも悪役令嬢でもなんでもない、物語の序盤で婚約者の陰謀に巻き込まれ、「事故死」として処理される名もなき脇役令嬢だった。
婚約を破棄しようにも、相手は皇太子派の有力侯爵家。
そこでミレイユが目をつけたのは、皇帝の従弟にして北方領の支配者ーーそして何より彼こそ、原作小説の男性主人公である、冷酷無慈悲と恐れられる大公、カシアン・ヴァレンシュタイン。
しかも、ミレイユは知っている。
三日後ーーカシアンが暗殺されることを。
ミレイユは未来の知識を取引材料に、大公へと持ちかける。
「三ヶ月でいいんです。私を、あなたの婚約者にしてください」
もちろん、本当に結婚したいわけではない。
カシアンにはいずれ、原作ヒロインである心優しい聖女と運命的な恋に落ちてもらう予定なのだから。
自分は死亡フラグを回避できればそれでいい。
ヒロインが現れたら、自分は潔く退場する。
完璧な計画だった。
……はずだったのだが。
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