『ふたりの聖女と、神なき王国』 ――都合のいい聖女じゃ、終わらせない

アムール王国――愛と美を司る女神の加護を受けた国。
その加護の象徴として、“聖女”は神殿に仕える。選ばれるのはただひとり、清く、優しく、そして愛を知る者。

前聖女クラリスは、神託によって追放された。
新たに聖女となったのは、王太子のそばにいた少女。
誰もが手のひらを返し、クラリスを「愛を失った者」と嘲った。

だが、それは仕組まれた裏切りだった。
聖女に恋をしてはならない。
愛を向けてはならない相手がいた。

「君を守るために、手放した」
そんな言い訳を聞くために、私は“聖女”だったわけじゃない。

――だったら、奪われた“私”は、私自身の手で取り戻す。

たとえ神に見捨てられても。
私は、私を裏切らない。
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