春の物語 小説一覧

2
1

読切短編 五月の桜は、誰も見ていない

読切短編 五月の桜は、誰も見ていない
東京に来て十年。四月になるたびに職場で飛び交う「桜前線」の話を、俺は少しだけ苛立ちながら聞いていた。 俺の地元、札幌の桜が咲くのは五月だ。本州の花見が終わり、誰もが桜を忘れた頃に、北の木々はようやく動き始める。そしてその季節になると、決まって思い出す顔があった。 幼馴染みの麻衣。彼女の誕生日は五月三日で、毎年その頃に桜が満開になった。 今年、初めて五月に帰った。理由はうまく説明できない。ただ気づいたら、航空券を調べていた。 待ち合わせの公園で、俺は手紙を書いた。書き出しだけ、すぐに決まった。 「本州では誰も桜の話をしなくなった頃に、あなたのことを思い出していた」 彼女は来た。そして俺は、手紙を渡さなかった。
現代文学 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 1,212 最終更新日 2026.05.13 登録日 2026.05.13
2

シャッターチャンス ― 何回桜を ―

シャッターチャンス ― 何回桜を ―
余命を告げられた美桜は、 もう何も感じられない自分に戸惑っていた。 そんな彼女の前に現れたのは、 画面の向こうに映る一枚の桜。 レタッチソフトを使い、光と色を調整していくうちに、 かすかな実感が胸に戻っていく。 撮ること、残すこと、 そして“いま”を生きること。 「あと、何回桜を見れるだろうか?」 その問いの先に、彼女が見つけたものとは――。 静かに心がほどけていく、春の短編。
ライト文芸 完結 短編
感想数 0 文字数 2,912 最終更新日 2025.11.19 登録日 2025.11.19
2