ミステリー 心理サスペンス 小説一覧
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死者の衣を洗う店〈ピースアー〉。――香りが戻るたび、真実がほどけていく。
タイ語で蝶を意味する「ผีเสื้อ(ピースアー)」は、直訳すれば「幽霊の衣」。
死者が羽衣をまとうように、もういちどこの世を舞う――という信仰がある。
大きな事故で夫を失った高瀬梨紗は、〈ピースアー〉という古いクリーニング店の店内で、亡き夫の衣を洗い直す提案を受ける。
店主・飛木祐奈が手に取った布には、失われた時間の温度がまだ残っていた。
香りの記録を辿るように、梨紗はかつて夫と交わした言葉を思い出していく。
青い光の蝶が舞うその瞬間、封印された“真実”が少しずつ浮かび上がっていく――。
〈ピースアー〉は、愛した人をもう一度この世に留めるための、最初で最後の洗い直しの物語である。
――真実は、洗われても跡を残す。
文字数 15,751
最終更新日 2025.10.18
登録日 2025.10.17
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喫茶店「マルグリット」を舞台に繰り広げられる、静謐にして重厚なミステリーサスペンス。元新聞記者の坂本新拓は、ある日ふと立ち寄ったその喫茶店で、品のある謎めいた女性・橋本麻里と出会う。店のマスターは古風な紳士で、まるで時間の止まったような空間を提供していた。しかし、常連客たちの失踪、過去の未解決事件、そして麻里の言動に潜む違和感が、坂本の探究心を徐々に揺さぶっていく。
取材の名目で真相を追い始めた坂本は、次第に喫茶店と町に絡みつく過去の罪と秘密に引きずり込まれていく。信頼と疑念、記憶と虚構が交錯する中、彼が辿り着いた真実は、あまりにも皮肉で残酷だった。最終章、麻里が見せた微笑みの意味とは──。
静かに焙煎されるコーヒーの香りの奥に潜む、深い苦味のような謎が、読者の心をじわりと締めつける。美しくも哀しい余韻を残す、どんでん返し小説。
文字数 8,982
最終更新日 2025.06.13
登録日 2025.06.13
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