代筆 小説一覧
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4件
1
『代筆係ごときが出過ぎた真似を』と追放された公爵令嬢は静かに笑った——『十年で三千通。明日から、どなたがお書きになるのですか?』
公爵令嬢セラフィーナは、十年にわたり王国外交局の全書簡を代筆してきた。署名欄に記されるのは常に婚約者である外交局長の名前。三千通を超える書簡が隣国との和平を支え、通商条約を結び、同盟を維持してきた。
「代筆係ごときが出過ぎた真似を」——外交局長の側近にそう告げられ、セラフィーナは追放される。十年間の功績は全て婚約者の手柄として歴史に刻まれていた。
だが彼女が去った翌週から、外交が音を立てて崩れ始める。隣国の大使は文体の変化に気づき不信を抱き、通商交渉は暗礁に乗り上げ、同盟国は離反の構えを見せる。
やがて発覚する真実——セラフィーナは先王が密かに配置した「影の外交官」であり、三千通の書簡には、彼女と隣国の宰相だけが読める暗号で、本当の外交が綴られていた。
2
「婚約を解消して彼女に求婚する。いつものように手紙は君が書いてくれ」と婚約者に言われました。では、ご自分でどうぞ
子爵令嬢アメリアは、婚約者ローレンスの手紙を代筆してきた。
礼状も、招待状も――そして、彼が公爵令嬢セレスティアへ送る恋文も。
家のために必要な婚約だった。愛される妻にはなれなくても、役に立つ妻にならなれる。そう自分に言い聞かせ、気づけば恋文は百通になっていた。
けれど百通目を書き終えた夜、ローレンスは新しい白紙を差し出す。
「君との婚約を解消したら、セレスティアに正式に求婚する。その手紙を書いてくれ。彼女が喜ぶ言葉は、俺より君のほうが分かるだろう?」
婚約を解消したあとも仕事なら用意してやる。公爵家と縁ができれば、アメリアの家の面倒も見てやれる。
そう語る彼を前に、アメリアは初めて代筆を拒んだ。
そして、その白紙に別の手紙を書く。
これまで届いた百通の恋文を、すべて持ってきてほしい――と。
百一通目だけは、ローレンスではなく「アメリア・ノーウッド」の名前で。
一方、初めて自分の名で書いた原稿を出版商へ持ち込んだアメリアは、その文章を「あなたのもの」として読んでくれる編集者ユージンと出会う。
そして百通の恋文を大切に保管していたセレスティアもまた、そこに綴られた言葉を覚えていた。
「これは、あなたの文章ではありません」
十通ずつ束ねられた十束の恋文を前に、百通の言葉が本当は誰のものだったのかが明らかになっていく。
他人の名前のために言葉を使い続けてきた令嬢が、百一通目から、自分の名前で仕事も未来も恋も選び直す物語。
3
聖女の代筆師は、最後の一行だけを書き換える
王国の歴史を書き残す代筆師アマリアは、誰にも読まれない「最後の一行」にだけ真実を書き続けていた。
十年後、聖女アデリアが婚約破棄され、すべての功績を奪われそうになった夜。
王太子は知らなかった。
自分たちが都合よく書き換えた記録の末尾に、たった一人の代筆師が、すべての嘘を暴く証拠を残していたことを。
4
手紙
恋に落ちたのは、坊ちゃん――ではなく、手紙を綴っていた“代筆屋”だった。
想いを込めた文は届いた。しかし、その先に待っていたのは、予期せぬ結末。
恋とは、心か、それとも言葉か。
一通の手紙から始まる、甘くてほろ苦い恋のすれ違いドラマ。
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