第1回きずな児童書大賞

第1回きずな児童書大賞

選考概要

昨年度までの絵本・児童書大賞より「児童書」カテゴリを独立させ、初の開催となった第1回きずな児童書大賞。少年少女が妖怪や怪奇現象に対峙するハラハラドキドキのスリリングな話や学園で繰り広げられる甘酸っぱい青春ラブストーリーはじめ、学園恋愛モノ、ファンタジー、ミステリー、ホラーまで実に幅広いジャンルの作品が集まり、エントリー総数は826作にのぼった。

その中から大賞候補となったのは10作品。選考の結果、いずれの作品も発想力が豊かで物語の構想もよく練られていたが、編集部の評価が最も高く、心霊現象の描写の巧みさや動画配信という人気コンテンツをうまく融合した「中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP」を大賞とした。また、次に評価の高かった「うた×バト〜思いは歌声にのせて〜」と「その付喪神、鑑定します!」「がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ」の3作を優秀賞に選出。テーマ別賞には、主人公の揺れ惑う恋心がキラキラと眩い「ホントのキモチ!」を『学園恋愛賞』、捻りのある物語で構成力も高かった「鎌倉西小学校ミステリー倶楽部」を『謎解きユニーク探偵賞』にそれぞれ選出した。さらに、魔法使いの女の子と吸血鬼の交流を描いた「宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~」、学校の心霊部に入った少女の活躍を描いた「こちら御神楽学園心霊部!」に特別賞を授与することとなった。その他、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP」は、中学生4人が心霊スポットを巡るホラー作品。主人公や友人たちのキャラクターが秀逸で、読者層にマッチした人気コンテンツなども巧みに組み込まれ、最後まで読み手を飽きさせない工夫が多い意欲作だと評価された。

「その付喪神、鑑定します!」は、物に憑いた「付喪神」が見える主人公が、ひょんなことから学園のアイドル的存在の少年たちに探し物を頼まれるというユニークな設定。展開が早く、続きがどうなるのか、どんどん読みたくなる魅力があった。

「うた×バト〜思いは歌声にのせて〜」は、人の歌声を通して成長するAIアニマルを使ってシングバトルをするという青春学園ストーリー。設定のオリジナリティに加え、学園内で繰り広げられる友情や恋も丁寧に綴られ、総じて完成度が高かった。

「がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ」は、子どもが気になる物はなんでも揃う「ふしぎ堂」で始まる、ちょっと変わった少年少女の冒険譚。「神商品」というアイテムのワクワク感や、店番である「にゃすけ」の語り口など、独特な世界観を楽しめる作品であった。

「ホントのキモチ!」は、主人公の少女と双子のイケメンによる青春学園恋愛もの。主人公が告白する相手を間違え、相手もそれを受け入れるという、勘違いから始まる王道展開だが、魅力的な双子の間で揺れる主人公の感情が瑞々しく、爽やかな読後感だった。

「鎌倉西小学校ミステリー倶楽部」は、小学校にある「ミステリー倶楽部」のクラブ活動を中心に、少女ふたりと猫又が妖怪やお化けと対峙する作品。物語導入部のワクワク感や噂が妖怪を作り出すといった設定の独自性が光った。

「宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~」は、宝石店の娘ルリが赤い目をした吸血鬼の少年レオと宝石を巡る冒険に繰り出し、心の交流を深めていく物語。登場人物の戸惑いや気持ちの変化の描写が丁寧に描かれていた。

「こちら御神楽学園心霊部!」は、取りつかれ体質の主人公が中学校の「心霊部」に入部したことから始まる、ホラー要素の強い作品。心霊体験の中で、人や幽霊との関わり方を学びながら成長する様子が鮮やかだった。

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応募総数 826作品 開催期間 2023年08月01日〜末日

編集部より

霊が見えるヒロインとイケメン幼馴染み二人が、ホラー体験を動画配信するという設定は、今の小学生や中学生に親しまれやすく、スムーズに受け入れられそうなリアリティがありました。ホラーとしてもしっかり怖く、安定して高い筆力が感じられ、次の展開を予想しながらドキドキしつつ読めました。


編集部より

ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。のびのびと冒険をする主人公が爽快に描かれており、楽しく拝読いたしました。主人公ケーンと彼を思いやる家族との関係性が素敵で、その優しい雰囲気も読者を引きつけたのだと感じます。


編集部より

付喪神が見える元いじめられっこヒロイン、学園の有名人であるイケメン御曹司二人と幼なじみ一人という四人のキャラクターの配置が絶妙です。主人公の雪乃が異なるタイプの学園の王子様たちに好意を寄せられ、甘酸っぱいやり取りをする姿にキュンキュンさせられました。


編集部より

主人公の少女と、彼女の歌でだけ安眠できる多忙なアイドルをメインにしつつ、読者にとって身近な学園を舞台に、主人公の成長物語がしっかりと書けている点が好印象でした。AIを用いたゲーム要素もオリジナリティに溢れ、思わず引き込まれました。


編集部より

主人公の日常と非日常を自由に行き交う姿を堪能でき、ストーリー構成も緩急あって結末がどうなるのかドキドキしながら読みました。子供にとって魅力的なアイテムが盛り込まれ、読後の感想に何がほしいか、どうやって使うかなど友達同士で話したくなりそうです。


編集部より

双子の男の子のひとりに恋する主人公が、もうひとりの男の子に告白してしまう、勘違いから始まる王道の学園ラブストーリーにドキドキします。不器用な主人公が一生懸命、恋に向かっていく姿に共感しながら読めました。


編集部より

小学校で起こる「学校の怪談」の正体を暴いたようでいて、実はこっそり退治するという捻りのある展開は新鮮に感じます。メインとなる三人と猫又の人物描写が巧みで、一人ひとりが生き生きと活躍していました。


編集部より

話の構成や展開がスムーズで、物語に引き込まれました。宝石や妖精、吸血鬼などの世界観も魅力的で、ルリとレオがだんだんとお互いを理解し、仲良くなっていく過程にも心が癒されます。


編集部より

主人公の灯里と晴人先輩、トッテさんとの関係性が秀逸でした。オバケや悪霊を退治する場面描写も緊迫感があり、ハラハラしながら思わず応援したくなる魅力がありました。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

奨励賞

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