「車内」の検索結果

全体で125件見つかりました。
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 碧色(へきいろ)。それは表面は澄んでいながら最奥までは見通すことのできない深い碧。毎日のように級友たちと顔を合わせているにも拘わらず、気心の知れた友達ですら、その心の奥底までは見透かすことができない。でも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、それは深海の底から沸き上がる気泡のように目視できることがある。主人公わたしは電車内で不意に唇を奪われた。それも同じ学校の女生徒に。彼女の名前は瀬名舞子。今日転校してきたばかりの同級生。それ以後、わたしの受験生としての日常は彼女に翻弄されることになる。碧春(へきしゅん)。それはきらめく青春の断片。碧春。それは誰もが抱く永遠の思い出の欠片。
大賞ポイント 597pt
文字数 26,950 最終更新日 2022.07.09 登録日 2022.06.27
仕事に充実感が得られると、好ましい出逢いの機会も訪れる……。 毎朝、職場に向かうため、駅のホームに立つ牧野修也と高守那美は、並ぶ電車乗車口の場所は違うが、互いに視界に入るその存在に好感を覚えていた。 厳しい競争社会の中で日々を忙しく過ごすふたりは、夫々の職場で有能な社員として認められていた。 仕事を通して関わる多くのシーンで、人との交流が生まれ、その中で恋愛が生まれる機会も少なくはない。 誰にでも、結婚までに至る恋愛のチャンスは訪れるだろう……が、数多くはない。 初めてのチャンスから恋愛、そして結婚へとまっしぐらに突き進むカップルもあれば、互いの気持ちを気遣いながら、慎重に愛を育むカップルもいる。 相手に気掛かりなことがあっても気にしない、それが愛している証拠だ、などとは云いきれない。 気掛かりの向こう側に、看過してはならない真実があるかも知れないのだから……。 修也は偶然、帰宅する電車内で那美と同じ電車車両に乗った。途中、体調を崩してしゃがみ込む那美に手を差し伸べて助けた。それを機会にふたりは急接近し、恋愛のチャンスが生まれる。 恋愛関係に進もうとするふたりの胸の奥に、素直に踏み込めない想いがあった。 互いに伝えず、成り行きに任せることは簡単だったが、那美は、こころに秘めた思いを相手に伝えるべきかどうかと迷う……。 修也は、交際を申し込むのは、醜態を見せてしまった那美の、弱みに付け込むことになりはしないかと、次の行動を躊躇う……。 ふたりは互いの会社の仕事でも関わりが生じる。 苦慮し、躊躇するふたりに、会社の同僚や友人や先輩が耳を貸し、力を貸して見守る……。 修也の大学の大先輩で、ラウンジ.フラーゴラのオーナーシェフ川添伸一郎は、修也のよき相談相手でもあった。 川添シェフは、修也の恋愛を優しく手助けしていく。 恋におちても当然のようなふたりは、互いに素直に自らの思いに従い、思いを秘めたまま、時を待った。 修也の職場の周りには、幾組かのカップルが生まれ、それぞれが恋を実らせて結ばれていく。 嫌いではない同士の修也と那美は、失恋の辛苦を経験することなく別れ、新たな恋に向かって進むことになるが、ふたりの親交が途切れることはなかった……。  (固有名詞など全てフィクションです)……全24話……
大賞ポイント 2pt
文字数 106,780 最終更新日 2024.03.08 登録日 2024.03.08
「わたしはかれを殺し、かれはわたしを救う。これより半年後のことだ」。 誰とも馴れ合わず、無味乾燥なキャンパスライフを送る十九歳の女子大生、朝野聖子。 聖子の計画は遡ること二年前、父親が宴席帰りの列車内で死亡し、鉄道会社が巨額の賠償金を遺族である聖子の母に請求したことに始まる。 それはクリスチャンである聖子の信仰を打ち砕くに十分すぎるほどであった。 神など存在しない。もしくは、驚くほどの怠け者なのだ。 聖子は工学部に入学し、ふつふつとたぎる怒りを込めて成績を上げてゆく。わたしは——ヒトクローンを造る。   神の業を人間の手によって行なえば、神は神ではなくなる。もし反対に神の逆鱗に触れたのちに裁きが下り死したとしても、なんら価値も意味もないこの世に未練など残すまい。これにより神の存在を、その意義を問えよう——そう思っていた。平松高志に心奪われ、なにもかもを絆されるまでは。   当初、平松は聖子の人生に関わるような人種ではなかった。しかし時間をかけて平松の愛情と、大学オーケストラでの友情が凍りついた聖子の心を溶かしてゆく。   平松との愛は、出会ってたった半年間だけの命だった。その愛に今のわたしがあえて名前をつけるなら——「奇跡」だ。   亡くなった平松高志をこの胸に宿し、聖子は死へと近づこうとしていた。
大賞ポイント 1pt
文字数 193,250 最終更新日 2024.03.21 登録日 2024.01.25
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