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俺が死んだ時、神は泣かなかった。
事故で命を落とした青年・悠真が死後に出会ったのは、人を救う存在ではなく、死んだ魂を世界へ還すだけの無感情な観測者だった。
神は善でも悪でもない。
人の死も、村が焼かれることも、子供が泣くことも、ただ世界に起きる変化として見ているだけ。
本来なら悠真の魂も消えるはずだった。
だが、悠真の放った一言が、神の中に初めて小さな揺らぎを生む。
「それなら、あんたは誰にも覚えられないんだな」
その言葉に興味を持った神は、悠真を異世界へ転生させる。
ただし、チート能力はない。
魔力もない。
剣の才能もない。
知識無双できる環境もない。
あるのは、前世と変わらない普通の心だけ。
そして神は、美しい人間の姿を作り、リィアと名乗って悠真のそばを歩き始める。
けれど、その神は悠真以外を救わない。
村が襲われても。
奴隷商に人が売られても。
仲間が傷ついても。
理不尽に命が奪われても。
神はただ、悠真だけを見ている。
「私の興味は、お前だけだ」
何の力も持たない悠真は、それでも目の前の誰かを見捨てられない。
救えない。
守れない。
届かない。
何度も失い、何度も神を憎み、何度も自分の無力さに膝をつく。
それでも、彼は立ち上がる。
これは、無力な人間が救われない世界で、それでも誰かの名前を忘れまいと抗う物語。
そして、感情を持たない神が、たった一人の人間と旅をする中で、初めて“友達”を知るまでの物語。
文字数 291,804
最終更新日 2026.09.06
登録日 2026.07.09
⭐️倒れた老人を救った底辺操縦士が、伝説機と律姫で空へ翔ぶ物語!
泥と錆に沈んだ廃工区で、少年レオ・グランツは古びた作業骸機《ガンボルト七号》に乗り、瓦礫を運ぶだけの毎日を送っていた。
貴族でも、騎士でも、特別な才能を持つ者でもない。
けれどレオには、ひとつだけ捨てられない夢があった。
いつか、本物の星導騎士になること。
そんなある日、レオは路地裏で倒れていた謎の老人を助ける。
金もない。腹も減っている。自分の寝床すら満足にない。
それでも彼は、見捨てて眠るくらいなら、腹を空かせて眠る方を選んだ。
その小さな善意が、レオの運命を大きく変える。
老人がレオに託したのは、地下深くに封印されていた伝説の星骸機《アストラル・ヴェイン》。
そして、その機体と共に眠っていたのは、人に恋をしないはずの律姫、ルシェリア・ノアだった。
感情を持たぬ戦乙女。
名ではなく役割で呼ばれてきた少女。
人の心を理解せず、ただ操縦者を補助するためだけに存在するはずだった彼女は、レオと出会い、少しずつ変わり始める。
だが、世界は優しくない。
律姫を「資源」として扱う者たち。
封印機を狙う騎士団。
廃工区の底辺少年を、決して英雄とは認めない空の支配者たち。
レオが手にした力は、夢を叶えるための翼であると同時に、巨大な争いへ引きずり込まれる証でもあった。
それでも彼は、目の前で泣いている誰かを見捨てられない。
たとえ敵が貴族でも、騎士団でも、世界そのものでも。
たとえ自分の機体が傷つき、体が限界を迎えても。
泥の中で見上げていた星は、いつしかレオ自身の手の中で輝き始める。
これは、底辺操縦士の少年が伝説機と出会い、恋を知らない律姫の心を目覚めさせ、奪われた者たちの鎖を断ち切っていく物語。
壊れかけの相棒に話しかけていた少年は、やがて空を揺るがす騎士となる。
――泥の底からでも、星には手が届く。
文字数 709,995
最終更新日 2026.09.06
登録日 2026.07.04
「セレナ・アルヴェイン。今夜をもって、君との婚約を解消する」
春季条約祝賀会の最中、王太子から突然、婚約破棄を告げられた王国監査官セレナ。
妹への嫌がらせ、命令への反抗、国家書類の不正な持ち出し。
身に覚えのない罪を並べられ、監査官の地位まで奪われたセレナは、王都からの追放を命じられる。
けれど、王太子が差し出した決定書には、十一か月前に死亡した財務官の署名が残されていた。
「殿下。この決定書は、いつ作成されたものでしょうか」
契約や帳簿に残る“歪み”を見抜けるセレナの問いを、王太子は鼻で笑う。
「書類を見るだけなら、誰にでもできる」
そうしてセレナが王宮を去った翌朝。
王国の国庫から、金貨一万八千四百二十枚が消えた。
存在しない軍隊への支払い。
廃業した商会への送金。
二つの名前で申請された同じ橋。
誰も、セレナが毎日止めていた不正を説明できなかった。
一方、家族からも絶縁されたセレナへ手を差し伸べたのは、冷徹と恐れられる隣国の公爵レオンハルトだった。
彼が提示したのは、同情でも愛の言葉でもない。
正当な報酬。
危険な任務を断る権利。
そして、彼女が書いた報告書に、彼女自身の名前を残すという契約だった。
「あなたの仕事を、別の者の名前で提出する理由がない」
初めて一人の専門家として扱われたセレナは、新天地で消えた穀物、地図に存在しない村、そして母が遺した三冊の白い帳簿を追い始める。
やがてすべての不正は、母の死と、二つの国を戦争へ導く陰謀へつながっていく。
これは、名前も功績も奪われた女性が、自分の仕事と人生を取り戻す物語。
私だけを追放して、私の仕事だけを王国へ戻すことはできません。
文字数 126,339
最終更新日 2026.09.06
登録日 2026.08.02
「もう、ピアノは弾かない」――かつて神童と呼ばれながら、完璧を求めるあまり舞台から消えた高校生・神楽陽菜。明るく笑う彼女が、放課後の音楽室で誰にも知られず奏でていた音を、偶然耳にしたのは、数学界を去った元天才少年・橘悠真だった。
世界のすべては数式で説明できる。そう信じて挫折し、何にも期待しなくなった悠真は、陽菜の演奏にだけ、答えの出ない美しさを感じる。眠ることも忘れて彼が書き上げたのは、数学から生まれた一曲の楽譜。陽菜がその鍵盤に指を置いた瞬間、論理と感情がぶつかり合い、誰も聴いたことのない音楽が生まれた。
二人の才能を見抜いたのは、無精ひげでやる気のない教師・佐伯潤。だが彼もまた、かつて音楽業界で天才プロデューサーと呼ばれ、すべてを失った男だった。壊れた天才三人が始めた小さな部活動は、初めて出場したコンクールで観客を沈黙させ、陽菜の元ライバル、悠真の数学仲間、佐伯の過去まで呼び戻していく。
再び注目を浴びる陽菜。作曲家として評価され始める悠真。二人を世に送り出そうとする佐伯。けれど、喝采が大きくなるほど、陽菜の指にはかつての震えが戻り、悠真の心には評価への渇きと恋の嫉妬が生まれてしまう。勝ちたいのか。認められたいのか。それとも、ただ隣で音を重ねたいのか。
やがて彼らの前に現れるのは、完璧な演奏で世界を支配する天才ピアニスト、エリック・シュタイン。「君たちの音楽は、いつか冷める恋にすぎない」。その言葉を前に、二人は世界一になるためではなく、自分たちが音楽を始めた本当の理由を証明するため、最後の舞台へ向かう。
これは、才能に人生を壊された少年少女が、音楽を通してもう一度「好き」を取り戻す物語。完璧でなくても、傷ついたままでも、人は誰かとなら新しい答えを生み出せる。数学少年が書いた不完全な曲と、ピアノを捨てた少女の演奏が重なるとき、世界でたった一つの奇跡が始まる。
文字数 218,782
最終更新日 2026.08.22
登録日 2026.07.11
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