幼い頃から、いつか幼馴染のミハイルのお嫁さんになると信じていた狼獣人のリゼット。
けれど成長した彼は次第にリゼットを当たり前の存在として扱うようになり、ついには“番”だと分かっても彼女を拒絶した。
「もう、あなたを待たない」
泣き明かした翌朝、リゼットは故郷を離れることを決意する。
そして三日後、王都へと旅立ち、薬師として自分の人生を歩き始めた。
そこで出会ったのは、誰にでも冷たいのに、なぜか自分にだけ優しい黒豹獣人のフェリクス。
一方、リゼットを失ったミハイルは、ようやく自分が一番大切なものを手放したことに気づいて――。
これは、誰かに選ばれるのを待つことをやめた少女が、自分の意思で愛する人を選ぶまでの物語。
名門ブランデンブルク伯爵家に嫁いで2年。
政略結婚で多額の負債を抱えていた家を、オディリアは寝る間も惜しんで自身の商才と実家の財産を注ぎ込み、見事に立て直した。
しかし、夫ディルクは妻の献身を「伯爵夫人の義務」として見下し、功績をすべて自分の手柄として吹聴する。
さらにディルクは、没落寸前の幼馴染キルステンを屋敷に住まわせ、あからさまに寵愛し始めた。
オディリアへの冷遇、義母エルヴィーラの理不尽な侮蔑、キルステンの厚顔無恥な挑発。
だが、オディリアは決して泣き寝入りなどしなかった。
彼女は2年間の婚姻契約満了日に向け、伯爵家を支えていたすべての経済基盤、商取引の権利、優秀な人材を引き払う準備を完璧に整えていたのだ。
「2年間お世話になりました。離縁しますので覚悟してくださいね」
離縁状を叩きつけて去るオディリアを迎えたのは、彼女の才能を高く評価し、長年待ち望んでいた北方屈指の大貴族カジミール公爵。
一方、オディリアを失った伯爵家には、彼女が肩代わりしていた莫大な負債と契約解除の通知が次々と押し寄せ、破滅へのカウントダウンが始まる。
「お前の名前を出すと、英雄譚が分かりにくくなるんだ」
魔王討伐の作戦士アルレンは、勇者に自分と仲間の功績を奪われた。
口止め料を拒み、向かったのは王の前で開かれる報告会。
「第一結界を、なぜ夜明けまで破らなかったのですか」
三つの質問と、討伐前から残る記録。
華々しい武勇伝の裏で、誰が何をしたのか。
英雄の嘘を暴き、仕事と名前を取り戻す逆転ファンタジー。
【祝】HOTランキングランクイン!たくさんの応援ありがとうございます!
社交界で「理想の夫婦」と称えられるグランヴェル伯爵夫妻。だが実態は、毎夜幼馴染の愛人の元へ通う夫レオナルドと、一人冷たいベッドで眠るアメリアの「白い結婚」だった。
愛人に金品を貢ぎ、妻を「冷たい飾り」と見下す夫。しかし彼は知らなかった。己が誇る「優秀な領地経営」を担っていたのが、アメリアの頭脳だったことを――。
限界を迎えたアメリアの知的な罠が弾ける時、偽りの夫と愛人に完膚なきまでの絶望が襲いかかる!
※ハッピーエンド保障
※全5話完結しました
祖母が袖を詰めた古い制服に、祖母のICカード。40分バスに乗って通う編入生の私を、名門・綾嶺学園の1年3組は、ひと目で「特待生」だと決めつけた。
「特待生はここ」――足で押された椅子の先は、最後列のゴミ箱の隣。
前の晩、父には電話でこう言われていた。
「学校では、セイラントグループの娘という肩書を置いて、鈴木瑶でいなさい」
だから私は、何も説明しない。椅子を少しだけ戻して「ありがとう」と座り、記念行事費は一万円札3枚で払う。
学食では「特待生は下で食べて」。中間テストで1位を取れば「写したのよ」。
祖母が30年ピアノを教えたこの学校で、旧音楽準備室に残る祖母のピアノには「処分」の紙が貼られた。保護者会では、杖をついて来た祖母に、PTA会長が年金の額を尋ねる。
隣の席には、何も聞かずに丸パンを半分くれる子が一人だけいる。
12月、500万円するという腕時計が、私の机の中から出てきた。
「警察に通報してください」
返ってきたのは、処分が決まるまでの自宅待機3日。
待機の3日目、祖母宛てに白い封筒が届く。
創立記念式典 12月6日 午後6時 特別招待 倉橋芙佐子様 ご家族同伴可
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
王立魔法院の末席に籍を置く治癒術師ミュレナ・フィオル、十九歳。
小柄で人前が苦手な彼女は、ある朝、魔法院の正門前で婚約者ヴァルドから婚約破棄を告げられた。
「君の取り柄だった治癒魔法も大したことがないと判明した」
そこへ現れたのは、彼女の直属の上司――王国魔導騎士団総監にして侯爵、ゼルヴェイン・クローディス。
三級判定のはずのミュレナの力が、実は『王国唯一の原初活性術』と認定されていたことを告げ、彼は微笑んだ。
「ようやく空いたからね」
空いたのは、彼女の婚約者の席。
三年間、彼女に触れないよう見守ってきた男は、もう遠慮しない。
そして王都の結界を支える精霊樹が枯れ始めたとき、ミュレナは自分の力で立つことを選ぶ――。
地味だと捨てられた治癒術師が、自分の力と、自分を見て愛してくれる人を見つける異世界溺愛ファンタジー短編。
前世の俺は、家族のために自分の人生を差し出した。
育ての母、葉山文江は、妹の佳苗には進学の機会を与えてやりたいと言った。家には金がない。お前は長男なのだから、先に働いて家計を支えろ。妹が卒業したら、自分のことを考えればいい。俺はその言葉を信じ、必死に勉強して手に入れた大学への進学を諦めた。
やがて文江は、沢渡家に恩があるからと、精肉店の娘、美津子との結婚を迫ってきた。俺が断ると、母は泣きながら、これまでどれほど苦労して俺を育ててきたかを語った。結局、俺は母の涙に負け、幼なじみの菜穂との将来まで手放した。
菜穂は俺の心変わりを信じられず、一人で会いに来た。その帰り道、川の堤防近くで酒に酔った田辺和彦に襲われた。深く傷ついた菜穂は川に身を投げ、命を絶った。俺が彼女の最期を知ったときには、もう何もかも手遅れだった。
結婚生活も悲惨だった。美津子は酒を飲んでは暴れ、和彦との関係も続けていた。ある日の夫婦喧嘩で、彼女は木の腰掛けを振り上げ、俺に叩きつけた。内臓を損傷して大量に出血した俺は、病院へ運ばれた。
手術を受けるため、文江と妹たちに治療費を頼んだ。だが、家には金がないと言われ、美津子も手続きに協力しようとしなかった。
俺は病院のベッドで息を引き取った。
意識が遠のくなか、佳苗の笑い声が聞こえた。
「お兄ちゃんって、本当にちょろいよね。何を言っても言うことを聞いてくれるんだもの。うちで飼ってる牛のほうが、よっぽど手がかかるよ」
文江も一緒になって笑った。
「昔からお人よしだったからね。私が頼めば、何でも信じるんだもの」
次に目を開けたとき、俺は昭和五十年、一九七五年の春に戻っていた。
高校を卒業したばかりの俺のもとには、千代篠大学から合格通知が届いていた。入学金の納入期限が迫るなか、文江は俺に進学を諦めさせ、貯金を佳苗に回すつもりでいた。
今度こそ、自分の人生は自分で決める。
もう、誰にも俺の未来を奪わせない。
妹のクラリセンダに夫のペルディアンを略奪され、身一つで家を追い出されたエルゼビエッタ。
絶望の淵にあった彼女を救い、後妻として迎えてくれたのは、社交界で「氷血の怪物」と恐れられるヴァルテマル公爵だった。
周囲の懸念をよそに、ヴァルテマルはエルゼビエッタを慈しみ、彼女もまた夫の不器用な優しさに触れて深い愛情を育み、穏やかな幸福を掴んでいた。それから3年。
贅沢三昧で家を破綻させ、泥水のような生活に落ちぶれた妹と元旦那が、あろうことかエルゼビエッタの前に現れる。
豪奢な公爵邸と美貌の公爵を目にした妹は、「姉のものは私のもの」「その旦那様も私に寄越しなさいよ」と、再び厚顔無恥な略奪を仕掛けてきた。かつては理不尽に耐え、ただ涙を流して去ったエルゼビエッタだったが、心から愛する夫を愚弄された瞬間、胸の奥で冷たい怒りの炎が燃え上がる。
「二度と、私の大切な人を奪わせはしない」
温厚だった妻の苛烈な覚醒と、妻を溺愛する公爵の徹底的な庇護のもと、浅ましい侵入者たちへの無慈悲な断罪劇が幕を開ける。
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