才を得て心を失った戦士は、勇者となり死を目指す。

 遥か昔、人々が天から授かったと言う始祖の魔法。それは現代の私たちにとっては、一種の伝説であった。勇者が命を捧げ、この世を救うことができる魔法が存在するという。

 マイは小さな村の宿屋の末娘である。そんな宿屋に、ある日、帝国からの戦士がやってきた。村の裏山に何かを探しに来たらしい。そんな彼を裏山に続く森へ招待すると、森に異変が起こる。

 彼はマイの瞳をまっすぐに見据えると、こう言った。
「自分が選んで、この才を得たのではない。
 
 俺は人の命を奪うことに、何も感じなくなってしまったのだ。
 誰かを憎むことも、愛することもできない。

 そんな世を生きていたいか?
 勇者になりたくて、来たのではない。
 死ぬことが出来れば何でもよかったんだ。
 だから俺は、死する運命を持つ勇者になる。」

 そう宣言する戦士に、マイは何も言えなくなってしまう。
 ただ、彼の瞳を見て涙を流すことしかできなかった。


 後世の人々は勇者を称える。勇者になりたいと、少年らは剣を振る。
 
 歴史に名を遺した勇者は、正義に溢れた優しい者だったのだろうか。
 平凡であることを恨む町娘と、才を得たが心を失った戦士の冒険が始まる。
 


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