春の風にあらわれながら
了治と了介は、熊本県出身の年子の兄弟。
母親に溺愛されて育った兄の了治は、九州大学、同大学院を出てキャリア官僚となった。元上司である代議士の一人娘に見初められて婿養子となり、いったんは官僚としての将来が約束されたが、二年前に離縁され、今は長崎の出先機関に左遷されている。
母親にほとんど愛されずに育った弟の了介は、幼少期に欠如した愛情を貪り続けているかのように女遊びが絶えない。九州大学の受験に失敗したのちに新聞奨学生、新聞販売店員、ソープランド店員、ソープ嬢のヒモを経て、今は新聞拡張員を生業としている。
兄が三十三歳、弟が三十二歳になろうとしていた二〇〇七年の二月に、二人はそれぞれの仕事に閉塞感を覚えていた。
了治は、本省への異動の内々示を受けたが、閑職巡りの役人人生が決定的となり、憂さ晴らしにデリバリーヘルスを利用する。ラブホテルの部屋にやってきた「セイカ」こと恵は、行きつけのパチンコ店のコーヒーレディーだった。下腹に帝王切開の傷痕を持つセイカの境遇に同情しながら指名を重ね、しだいに了治は恵に惹かれていく。
了介は、仕事の休憩時間中に越谷駅前のへルス店に入り、若いが子持ちの「苺」こと沙織に出会う。三月いっぱいで違法地帯にある本番ヘルスから足をあらうことを決め、顔や体から物悲しさを醸し出している苺に対して親近感を抱くが、指名後に一変した、不可解な態度に戸惑いを覚える。
兄と弟は、やむなく性風俗業界に身を落とし厳しい現実を生きているセイカと苺との出会いを機に、それぞれの人生を振り返りはじめる。やがて春がきて、了治と了介、そして恵と沙織は、新たな人生を歩んでいく。
三年後、春の風が吹くころに、了治と恵、そして了介と沙織は再会を果たす。
(400字詰め原稿用紙換算379枚 この作品は「エブリスタ」にも投稿掲載しています。)
母親に溺愛されて育った兄の了治は、九州大学、同大学院を出てキャリア官僚となった。元上司である代議士の一人娘に見初められて婿養子となり、いったんは官僚としての将来が約束されたが、二年前に離縁され、今は長崎の出先機関に左遷されている。
母親にほとんど愛されずに育った弟の了介は、幼少期に欠如した愛情を貪り続けているかのように女遊びが絶えない。九州大学の受験に失敗したのちに新聞奨学生、新聞販売店員、ソープランド店員、ソープ嬢のヒモを経て、今は新聞拡張員を生業としている。
兄が三十三歳、弟が三十二歳になろうとしていた二〇〇七年の二月に、二人はそれぞれの仕事に閉塞感を覚えていた。
了治は、本省への異動の内々示を受けたが、閑職巡りの役人人生が決定的となり、憂さ晴らしにデリバリーヘルスを利用する。ラブホテルの部屋にやってきた「セイカ」こと恵は、行きつけのパチンコ店のコーヒーレディーだった。下腹に帝王切開の傷痕を持つセイカの境遇に同情しながら指名を重ね、しだいに了治は恵に惹かれていく。
了介は、仕事の休憩時間中に越谷駅前のへルス店に入り、若いが子持ちの「苺」こと沙織に出会う。三月いっぱいで違法地帯にある本番ヘルスから足をあらうことを決め、顔や体から物悲しさを醸し出している苺に対して親近感を抱くが、指名後に一変した、不可解な態度に戸惑いを覚える。
兄と弟は、やむなく性風俗業界に身を落とし厳しい現実を生きているセイカと苺との出会いを機に、それぞれの人生を振り返りはじめる。やがて春がきて、了治と了介、そして恵と沙織は、新たな人生を歩んでいく。
三年後、春の風が吹くころに、了治と恵、そして了介と沙織は再会を果たす。
(400字詰め原稿用紙換算379枚 この作品は「エブリスタ」にも投稿掲載しています。)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
Ⅷ
Ⅸ
Ⅹ
Ⅺ
Ⅻ
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い