それは約束が違うと思いましたが、まあこれでもいいかと思わされました
借金で破綻した父の工房を救う代わりに、公爵家に仕えることになった天才魔道具職人シシリー。十六歳で自由になる――その約束だけを支えに働き続けるが、運命はなぜか彼女を解放してくれない。十五歳で王立アカデミーへの留学兼助手、十八歳で教員、二十歳で准教授と、次々に「好条件」の延長が提示され、気づけば約束はどんどん先送りに。戸惑いながらも、研究環境の魅力と周囲の期待に流されていくシシリー。そして二十二歳、ついに提示されたのは公爵家当主レオナルドからの「公爵夫人としての永久就職」。しかも研究費はほぼ無制限。自由を夢見たはずの彼女がたどり着いたのは、最高の研究環境という名の“逃げられない場所”だった。これは、天才ゆえに囲い込まれていく少女が、自分の意思と流れの狭間で揺れながらも、最後には「まあ、これでもいいか」と人生を選び取る、静かで少し皮肉な成功譚である。
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