ベルリンの壁ドン

ベルリンの壁が崩れたのは,1989年の11月でした。
私が生まれる前の話で,映像でしか知りません。

壁ドン,という言葉があります。
少女漫画から生まれた記号で,壁に手をついて誰かを閉じ込める仕草のことです。
ロマンティックな文脈で消費されてきた言葉だけれど,ずっと,うまく笑えませんでした。
壁を叩く手と,壁に手をつく手が,同じ形をしている気がしたからです。

ニュースを読みながら,遠い街の気配が,自分の部屋の温度と,どこかで繋がっている気がする夜があります。

このエッセイは,日常のささいな感触を書き留める日記です。
政治の話をしたいわけではありません。
ただ,遠い場所で誰かが叩いた壁の振動が,海を越えてここまで届くことがある──その事実を,静かに記録したい──ただ,それだけです。

変わりたいのに変われない夜も,変わる必要なんてないと開き直れない夜も,どちらも正直に書きます。

裁かない。
答えも出さない。

それだけのことを,丁寧に。
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