傾国の美兄が攫われまして。

 のどかな春の日差しがゆるゆるとふりそそぐなか、
 王宮の一角にある庭園ではいくつものテーブルと椅子が据えられ、
 思い思いの席に座る貴族の女性たちの上品な話声がゆったりと流れていた。

 そんななか、ひときわきりりとした空気をまとった令嬢がひとり、物憂げなため息をついていた。

 彼女の名はヴァレンシア。
 辺境伯の娘で。
 三歳上の兄がひとりいる。
 彼は『傾国の』が冠される美青年だった。

 美女と見紛う中性的な美貌の兄と
 美青年と見紛う中性的な風貌の妹。 

 クエスタ辺境伯の兄妹を取り巻く騒動と恋愛模様をお届けします。



※ 一年くらい前に思いついた設定を発掘し練り直しておりますが。
  安定の見切り発車です。
  気分転換に書きます。

※ 他サイトにも掲載しております。
24h.ポイント 7pt
360
小説 37,944 位 / 211,588件 ファンタジー 5,574 位 / 49,467件

あなたにおすすめの小説

わたくしは勝手に幸せになれますわ~悪意しかない王命結婚、確かに承りました〜

ミズメ
恋愛
父が事業に失敗し、第一王子からは婚約破棄されてしまった侯爵令嬢アメリアは侯爵家没落五秒前の危機を迎えていた。そんな時、周囲を不幸にするという噂のある呪われた王子ユリシスと王命で結婚することになってしまう。 「アメリア・グランディール侯爵令嬢。君が私の婚約者となることは覆せない」 「わたくしは勝手に幸せになれますわ」 狸国王、女狐王妃、婚約破棄王子、傲慢令嬢……周囲の悪意を跳ね飛ばし前向きに生きるアメリアの新生活は、思いがけずハッピーなのだった。 ★呪われ王子が前向きマインド令嬢に幸せにされる話

死んだことにした悪役令嬢、 辺境で騎士団長に溺愛されつつ帝国を建て直します

桃我タロー
恋愛
聖女の嘘で断罪され、婚約を破棄された財務長官令嬢エリアーナ。 帰り道で馬車ごと焼かれ、「死亡」扱いにされた彼女は――生き延びた。 素性を捨て、“死人文官シュアラ”として辿り着いたのは、敗戦の責を負わされ、酒と諦めに沈む騎士団長カイが指揮する辺境ヴァルム。 そこで彼女が開いたのは、戦場よりも惨い「帝国の破産帳簿」。 無駄な支出、特権貴族の着服、不当な予算配分……数字の奥に潜む腐敗を洗い出し、物資と予算を再編するうち、崩壊寸前だった砦は少しずつ息を吹き返していく。 最初、カイにとってシュアラは「帝都から落ちてきた厄介な文官」にすぎなかった。 だが、兵の命にだけは異様なほど執着し、誰よりも自分を後回しにして働く彼女に、冷え切っていた心が、静かに、確実に引き寄せられていく。 死んだことにされた悪役令嬢の文官と、敗軍の騎士団長。 赤字まみれの帝国を帳簿一冊から立て直す、辺境砦発・国家再建×じれ甘溺愛ファンタジー。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

番など、今さら不要である

池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。 任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。 その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。 「そういえば、私の番に会ったぞ」 ※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。 ※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さくら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...