エバーシェリンは百舌鳥の巣に入る

灯りを絞った宵闇の中、マリールイーズは目が覚めた。
名を呼ばれた気がした。父の帰りを待つあまり、夢を見ていたのだろうか。

夢ではないかもしれない。父が帰ってきたのかもしれない。

勢いよく寝台から起き上がり、窓辺に駆け寄り外を見た。
だが窓の外には、雪明かりに仄白く浮かぶように庭園が見えるだけだった。

マリールイーズの父であるロングフォール子爵は、行方知れずとなっていた。

子爵家には死の気配が付き纏う。口さがない人々からは『死人(しびと)の家』と噂されている。
マリールイーズは、そんな死の気配に覆われた家にとり残された令嬢だった。


早春のある日、子爵家を一人の若き貴婦人が訪れた。

「私はエバーシェリンと申します。ラグウッドより定められた管財人、の見習いですわ」

エバーシェリンはこうして、『死人の家』ロングフォール子爵家へ足を踏み入れることとなった。


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