彼女が残した物語

――これは、ただ一人の少女が、すべてを奪われて立ち上がる物語。
美しい赤髪と誰をも惹きつける強さと優しさを併せ持つ少女・ネフェルは、誰からも愛される町の誇りだった。
だがその平穏は、隣国の王子・アルストリアによる一方的な求婚と脅迫により、無惨に壊されてしまう。
「娘を嫁に差し出さねば、町を火あぶりにする」
――そんな暴虐な言葉に、ネフェルは自らの犠牲で町を守ろうと、王子の元へ嫁ぐ決意をする。
だが、運命の夜。
彼女が一時的に馬車を離れて町へ戻ったその瞬間、目に映ったのは――炎に包まれた故郷、そして焼かれた人々の亡骸だった。
絶望と怒りに満ちたネフェルの叫びに呼応するように、天は涙を流し、空は割れ、金色の羽が彼女の背に現れる。
その瞬間、少女は「ただの娘」ではなくなった。
王子の兵士たちは全滅し、隣国は日照りに襲われ、王家は崩壊した。
それは本当に、“少女の呪い”だったのか?
時は流れ、古びた伝承として語られていたこの物語は、ある夜、旅の馬車の中で再び語られる。
誰もが「昔話」として笑いながら聞き終えたその瞬間、一人の少女が現れる。
赤髪に緑の瞳、そして――物語にしか存在しないはずの、あの指輪。
「ありがとう。大切なものなんだ」
そう微笑んだ彼女の名は、ネフェル。
「……次に会った時は、ラウスの墓に連れて行って。あの時の告白の返事をするから」
過去と現在が交差し、封印された記憶と力が目覚め始める中、ネフェルは再び歩き出す。
かつてすべてを奪った王子を探し、真実と決着を求めて――
これは、少女が神話になる前の、最初の“裁き”の物語。
次に彼女が剣を振るうとき、それは「戦い」ではなく、「赦しか、それとも滅びか」。
今、世界は再び――彼女の選択を待っている。
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