『黒脛巾組、伊達政宗を天下へ盗み上げる 〜忍び、詐欺師、盗人、山伏、女掏摸。奥州の悪党どもが独眼竜を覇者にする〜』
奥州、米沢。
伊達家の若き跡取り・藤次郎政宗は、隻眼であることを陰で笑われ、若すぎることを侮られ、周囲の大名たちから「扱いやすい小僧」と見られていた。
だが、政宗は知っていた。
刀を振るう前に、戦は始まっていることを。
敵の兵糧の行き先。
城内で不満を抱く家臣。
商人が握る借財。
僧が運ぶ密書。
女たちの井戸端に落ちる本音。
酒場でこぼれる将の愚痴。
それらを集める者がいなければ、若き当主は奥州で食い殺される。
そこで政宗は、信夫の地から一人の男を呼び寄せる。
名は柳原戸兵衛。
盗人、詐欺師、山伏、掏摸、薬売り、博徒、元足軽、抜け忍まがいの者たちを束ねる、黒い脚絆の男。
戸兵衛は政宗に言う。
「殿。綺麗な者だけを集めた軍は、綺麗に負けます。汚れた者を飼う覚悟はおありで?」
政宗は笑う。
「汚れた手でよい。俺の目の届かぬ場所を見ろ」
こうして、犯罪スペシャリスト集団「黒脛巾組」が生まれる。
彼らは敵城に商人として入り、女中として潜り、山伏として祈祷し、博徒として賭場を荒らし、贋文書で敵を惑わせ、偽の噂で軍勢を動かす。
やがて政宗は、父・輝宗の死、人取橋の危機、摺上原の大勝、小田原参陣の綱渡り、豊臣秀吉との駆け引きへと進んでいく。
表の歴史に名を残すのは伊達政宗。
だが、その足元には、黒い脛巾を巻いた悪党たちの足跡がある。
これは、天下を取れなかった男の物語ではない。
天下を取る寸前まで、奥州の闇を使い切った男と、彼に人生を賭けた悪党たちの痛快時代劇である。
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