第1回児童書大賞
選考概要
全955作品が集まった第1回児童書大賞。児童文庫向けだった「きずな児童書大賞」から方針を一新した今回は、根強い人気のホラーから、子供たちの繊細な感情を描く部活小説、キャラクターの個性が光るファンタジーまで、幅広いテーマを題材とした作品が集まった。その中から一次選考を通過したのは35作品。
その後、編集部内で最終選考において大賞候補としたのは、「文香とヒミツの本のカギ」「アオ君の意味が分かると怖い話」「はろォわァく! ようこそ、おそろし楽しき『お仕事体験』へ」「もりの丘小学校 情報クラブ〜不思議なカメラでタイムリープ〜」「茜谷文の伝説の一作」「花守さんの花言葉堂には、秘密が咲く。」の6作品。
これらの候補作の中で、不思議なお店で手に入れた花を巡って人間関係が壊れていく恐怖を連作短編でまとめ、編集部内で最も支持を集めた「花守さんの花言葉堂には、秘密が咲く。」を大賞に選出。
テーマ別賞としては、ショートショートのホラー短編の中で語り手の謎に迫る「アオ君の意味が分かると怖い話」にサバイバル・ホラー賞、寂れた文芸部で小説を書く二人の少女の友情に心揺さぶられる「茜谷文の伝説の一作」にYA賞を授与した。
さらに、不思議な道具を手に入れた少年少女たちの奮闘を描いた「文香とヒミツの本のカギ」「もりの丘小学校 情報クラブ〜不思議なカメラでタイムリープ〜」の2作品を謎解きユニーク賞、人気の職業に対するブラックユーモアのセンスが輝いた「はろォわァく! ようこそ、おそろし楽しき『お仕事体験』へ」をおしごと賞とした。
なお、一次選考通過作品のうち、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「花守さんの花言葉堂には、秘密が咲く。」は、ミステリアスな店主が営むお店で花をもらった少年少女たちの、花言葉にまつわる奇怪な連作短編。読みやすい筆致と人間性の裏表を描くぞくっとする描写のギャップが高く評価された。
「アオ君の意味が分かると怖い話」は、主人公がアオと名乗る語り手に話を聞く形式で進行するホラーショートショート。人気の題材だが、語り手たちに個性とストーリーがある構成が他とは一線を画した。
「茜谷文の伝説の一作」は、やる気のない文芸部員たちの中で浮いてしまっている主人公と、識字障害をもつ少女の友情物語。真剣に創作に向き合う二人の葛藤やすれ違いが熱量を持って描かれ、物語に引き込まれた。
「文香とヒミツの本のカギ」は、物語の中に入れる鍵を手に入れた少女が消えた祖父を捜す本格ファンタジー。作り込まれた重厚感のある世界設定が印象的な作品だった。
「もりの丘小学校 情報クラブ〜不思議なカメラでタイムリープ〜」は、祖父にもらった過去に戻れるカメラを使って学校内で起きた事件の真相を探るクラブ小説。タイムリープの制約を上手く利用した展開が巧みだった。
「はろォわァく! ようこそ、おそろし楽しき『お仕事体験』へ」は、憧れの職業の裏側を覗く一風変わったお仕事小説。体験をもちかけてくる怪しげな人物のインパクトのあるキャラクターが光っていた。
今年は応募要項で多くのテーマ別賞を創設したこともあり、多様性に満ちた作品が集まった。来年以降も、定番の枠にとらわれない、新しい作品の応募に期待したい。
花守さんの花言葉堂には、秘密が咲く。
児童書・童話―短編集―
ポイント最上位作品として“読者賞”に決定いたしました。バラエティ豊かな世界観がぎゅっと詰まっているため、それぞれの物語は短編でありながらも非常に読みごたえがありました。子どもから大人まで、多くの読者が笑顔になれる作品です。
アオ君の意味が分かると怖い話
子供に身近なものを題材にした、読みやすい文体のホラーでありながら、物語が進むほどに恐怖を感じられます。アオ君がつむぎに語り聞かせるという形式も面白く、物語の世界に没入して楽しむことができました。
【完結】茜谷文の伝説の一作
二人が出会い、「伝説の一作」の創作を通して絆を深めていく様子が感動的に描かれておりました。重たいテーマを、重たくなりすぎず、読み応えある作品に仕上げている筆力も見事だと思います。
文香とヒミツの本のカギ
物語の世界に入り込み、トライアンドエラーを重ねていくという斬新なアイデアに、冒頭から引き込まれました。親しみやすい主人公をはじめとした魅力的なキャラクターたちが作り込まれたファンタジーの世界観とも調和しています。
もりの丘小学校 情報クラブ 〜不思議なカメラでタイムリープ〜
過去に戻れるカメラを手に入れた主人公たちが事件を解決していく中で過去のわだかまりを解消し、成長していく姿が微笑ましい、あたたかな読後感の作品でした。等身大に描かれたキャラクターたちが非常に魅力的です。
はろォわァく! ようこそ、おそろし楽しき『お仕事体験』へ
キャラクターや設定にインパクトがあり、おどろおどろしい雰囲気でありながら親しみやすく描かれていました。お仕事についても程よい温度感で語られた児童書にちょうど良い按配の作品でした。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
奨励賞
投票ユーザ当選者
- ariya さん
- kero さん
- 白千ロク(玄川ロク) さん
- 花野りり さん
- さきんこ さん
- ナナシマイ さん
- ぜらちん黒糖 さん
- 夢までBLまみれの変態です さん
- さと さん
- 青木 さん
怪しげな花を売るお花屋さんという設定と不気味な店主のハナハナさんの存在感も相まって、作品全体に漂う独自の雰囲気が魅力的でした。花を選んだ子供たちに、花言葉になぞらえた奇妙な出来事が起きる、というキャッチーな展開にも強く惹きつけられます。