「通る 意味」の検索結果
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――Ωの遊郭――
そう呼ばれる地域がある。男性、女性の他にα、β、Ωという三つの性別。Ωの数は少ないにもかかわらず、その地域にはΩが数多いる。
そして、そこにいるΩの半数がとある娼館に在籍しているという、「噂」からそう呼ばれるのだ。
「……上手いこと言うじゃないかねぇ」
煙管から口を放した女性が自嘲気味に笑う。流石α、といった貫禄があり、この「花の街」の顔役でもある。
「ママはそれでいいの?」
ここに勤めるβが心配そうに彼女を見た。
「いいも何も、言いたい奴に言わせてやればいいのさ。この都市に住む大半のΩがいるのは事実だしねぇ」
Ωであることを隠すのは、法令に違反し強い罰則が与えらえる。最悪の場合は、罪が課せられ、前科を持つこととなる。その代り、隠さずにいれば|発情期《ヒート》を抑えるための抑制剤を購入することもできるし、補助金も貰える。
だが、それだけに過ぎない。
数か月に一度の|発情期《ヒート》があるがゆえに、まともな職に就けないΩは数多いるし、補助金で賄える抑制剤が効きにくいΩもいれば、拒絶反応を起こすΩもいる。抑制剤もピンキリだが、一般家庭が補助金で賄おうとすると、粗悪なものが多いのも事実だ。
だが、この「花の街」は違う。街の医師が処方する抑制剤は、各Ωに合わせたものであるし、寝食も保証される。侮蔑されたΩたちにとってここはある意味楽園なのだ。
ここのΩに課されたものは二つ。一つは発情抑制剤の治験。――これがあるからこそ、各々にあった抑制剤が貰えるというのもあるのだが。もう一つは「発情期が酷い場合にのみ客を取る」こと。こちらは、希望者のみだ。客は無論、顔役が厳選している故、おかしげな者は来ない。それどころか一度でも問題を起こしたαも街への出入りは禁止である。これは他の娼館ではありえない。
この花の街に住むΩは大半が風俗を「副業」として、一般社会で働いている。それがあっさり通るのも、この花の街ならではである。無論、風俗一本で生きている者もいる。大抵、他のΩに尊敬されている。
そんな都市を舞台にした、摩訶不思議なお話。
文字数 4,229
最終更新日 2021.02.08
登録日 2021.01.25
「はぁ〜…あち〜」
何もかも溶かしてしまいそうな暑さの中、時々なぜこんなところではたらいているのだろうと思う時がある。
昔から人の言われたことを聞くことが苦手だった俺は、親だけならまだしも小中と学校の大人達の話もろくに聞かずに自分勝手に生きていた。
そんな人生を歩んでいたら中学を卒業した途端、親から勘当され中卒で肉体労働の仕事に就くことになった。
あいにく力には自信があったため最初の方はそこまできつくはなかったが、さすがにこの暑さには弱音が出る。
正直、今からでも逃げ出したい。
そんなことを考えていたら休憩の時間になった。
金がない俺でもスマホくらいは持っている。
休憩時間は体力の回復さえはできるが、なにかと暇だ。
なので俺はスマホを開く。
すると見覚えのないアドレスからメールが送られてきた。
どうせいつものよく分からない商売メールだろうが、なにせ暇なためちょっとそのメールを開いてみることにした。
「余命宣告についてのお知らせ」
「?」
意味のわからない文字の羅列に久しぶりに体より先に頭が動いた。
そもそも俺は余命宣告を受けるほどの病気なんて患ってないと言うか患ったことがない。
とりあえず内容を読んでみた。
「おめでとうございます!!
こちらのサイトは世界で10人の方にしか送ら
れない超貴重なサイトとなっております。
内容としては、下記のURLを開くことでこの
スマホの持ち主の方の余命がわかるものとな
っております。尚、余命を知ったことによる
精神変化や体調不良などは一切責任を負いか
ねます。自己責任でお願いします。」
そしてその下にURLがある
「…ハァーハッハッハッハハッハッハッハ!!」
内容が最初から最後まで胡散臭すぎて思わず笑ってしまった。
更にもう結果はわかっていた。
どうせ下記のURLを押したら詐欺まがいのページに飛ばされるのだ。
こんなの騙される方が悪いような気もする。
ふとスマホに表示されている時計に目を移すと、もうすぐ休憩が終わりそうだ。
俺は外の暑さに覚悟を決めて仕事場に戻った。
5時間後
暑さの原因だった日もそろそろ沈む頃になってきて、やっと今日の仕事は終わった。
俺の家はこの仕事場の隣町にあるため電車を使う。最近ではスマホの中にSuicaを入れる人もいる。
俺もその1人だ。
改札を通るためにスマホを取り出す。
その時ふと昼に届いたメールのことを思い出した。
文字数 3,432
最終更新日 2021.08.12
登録日 2021.08.11
「わかった。あんたら全員殺して、あたしだけ生きるってのは、どう?」
ウェーブがかった高い位置にある、ポニーテールが揺れる。
透き通るような青の瞳。
君の一言で俺達はいつだって支配されてきた。
それがわかってるというように――ゾーイ・エマーソンは笑うのだ。
第三次世界大戦で地上は甚大な被害を受けて住めなくなり、人類は空に助けを求めたのだ。
今人類の生活の拠点は、空島である。
俺、澤木 昴(さわき すばる)は、特に秀でた才能や、ましてや将来の夢とか目標もない、だだの凡人だ。
そこで凡人の俺は一発逆転を狙って、必死の勉強の末、エリート養成施設ナサニエルに入学した。
仲が最悪の双子の弟や、世話焼きの幼なじみも一緒だが、それなりに楽しい学園生活を送っていた第二学年の夏休み前。
「このままじゃ、地上に墜落だ!! 全員死ぬぞおおおおおおお!!」
大人達が全員出払っていた時に、空島はコントロールが効かなくなった。
絶体絶命で死を覚悟した、その時だ……
「どうも理解していないみたいだから言うけど? 少なくとも、ここにいるあたし達に、他の生徒達の何百って命がかかってるの。それともう一つ。あたしは、こんなとこで終わるなんて死んでも御免よ」
ゾーイ、君の言葉で俺達は、全員自分を奮い立たせて操縦桿を握った。
「スリー、トゥー、ワンのカウントで、オートパイロットを解除します」
「解除なら、とっくにしてるけど?」
「は?」
まあ、君のせいで死にかけたけどね?
どうにか着陸した俺達は、生きるために未知の世界――地上に足を踏み入れた。
けど、そこで待っていたのは……
「犬と猫? あ、けど……え? これは人間じゃないよな……?」
これは終わりの見えない異世界での生活と、一人の不思議な少女に無茶苦茶に振り回されながらの二重の意味での過酷を経験しながら……
少年少女達が疲労困憊しつつ、青春と成長をしていく物語である――
文字数 515,266
最終更新日 2021.08.02
登録日 2020.10.23
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