「はいはい、魅了持ちが通りますよー」
休憩時間、トイレからの帰り道。教室の入り口にたむろしている男子生徒に一声かけてから前を通る。手の平をぴんと伸ばし上下に揺らしながら周囲に警戒を促すのも忘れない。
「あはは、押すなよー。あ、うわっ!」
トン☆
それでも。ここまで注意しても事故は起こる。話に夢中になっていたクラスメイトの一人がよろけて私にぶつかってしまった。
「悪ぃ、悪ぃ……げっ! アイリーンじゃん! 気を付けろよなー、俺、まだ婚約すらしてないのに」
「あれれ? 惚れちゃった? んじゃ、特別サービス『魅了ウイ~ンク☆』! ……どう? 魅了されちゃった??」
「されるかっ! サングラスで瞬きすら見えねえっつうの! サングラスにマスクの不審者令嬢なんかに魅了なんてされねーよ!!」
ド……っとクラスに笑いが起きる。
よし! 私の防御は今日も完璧のようだ。
私は強度の魅了持ち。面倒ごとに巻き込まれないようにとサングラスにマスクで魅了スキルを打ち消して自衛しているのに、不審者好きの王子が熱烈に告白してくるようになった。いや、どうすんだこれ……。
文字数 16,186
最終更新日 2022.01.27
登録日 2022.01.21
「お姉様ばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私もダンスを習いたいわ」
ダンスが苦手だった私が二年間ほど習ってようやく楽しめるようになったころ。妹がそんなことを言い出した。そして遅れて習い始めた妹に半年もしないうちにサクッと追い越されてしまう。
ああ、やっぱりこうなるのね、と思う。
妹は何でも私のマネをしたがる。そして優秀な妹は私の数倍の速さで色々な技術を身に付ける。両親はそんな妹に期待をかけて、いつの間にか妹に習わせたいものだけを私にやらせるようになった。
料理も水泳も山登りも、私が望んだものは何一つ習わせてもらえない。
そして常に品行方正を強いられる。
妹のためとはいえ、様々な習い事や勉強で知識を増やしてきた私はそれなりに注目されていたらしく、なんと王太子殿下の婚約者に指名されてしまった。
そして、王太子妃教育が始まり3年立ったころ。
やはり、いつものアレが始まった。
「お姉様ばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私も王太子妃教育が受けたい」
……妹の中では王太子妃教育も習い事に入るみたい。
文字数 4,063
最終更新日 2022.01.27
登録日 2022.01.25
俺の母親は凝り性だ。お友達と楽しくお昼を過ごせるように、と高校に入ってから毎日、細部までこだわった見事なキャラ弁を作ってくれる。
しかしいじめられっ子な上、ぼっち属性が強い俺は、高校に入学してからずっと一人でソレを食べ続けた。
そんな今日のお弁当は、ファンタジー雑誌に載っていた願いを叶える魔法陣を模した海苔弁当。
ソレはあまりにも精度が高すぎて、日頃から現実逃避している俺は異世界召喚をされてしまう。
文字数 4,592
最終更新日 2022.01.21
登録日 2022.01.18
「カメリア・アイオーラ伯爵令嬢! 悪いがお前の妹との婚約は破棄させてもらうっ!!」
王家主催の夜会が始まるや否や、王太子殿下が私に向かいそう宣言した。ざわめく会場。人々の好奇の視線が私に突き刺さる。
そして私は思う。
(ああ……またなの。いい加減、本人に言ってくれないかしら)
妹は魅了のスキル持ち。婚約者達は本人を目の前にすると言えないからって姉である私に婚約破棄を言ってくる。
誠実さが足りないんじゃないですか? 本人に言ってください。
文字数 11,501
最終更新日 2021.11.22
登録日 2021.11.17
――悪役令嬢様、悪役令嬢様。いらっしゃいましたら階段の所までお越しください――
転生者が多く通う学園でいつの間にか広まった遊び『悪役令嬢様』。『こっくりさん』や『○○様』といったいわゆる降霊術を異世界仕様にしたものである。婚約者を持つ者がやると悪役令嬢様が現れて、恋のアドバイスをしてくれるという。
伯爵令嬢のメリーは婚約者の浮気で悩んでいたが1人では怖くてできなかった。オカルト研究会部長のエーサンは興味はあったが婚約者がいないためできなかった。そんな2人で儀式をやったら悪役令嬢様が帰ってくれなくなっちゃって……!?
『わ・い・ん・か・け・ろ』
『き・ょ・う・か・し・ょ・か・く・せ』
『の・ー・と・や・ぶ・れ』
悪役令嬢様の指示は絶対だ。達成しないと帰ってもらえない。でも、メリーには他の転生者とは違うある事情があって……。
文字数 97,626
最終更新日 2021.11.16
登録日 2021.10.29
侯爵令息のミルトは長期入院中の病院で、婚約者となるミュゲと出会う。同じような状況だからと退院目前の2人はあっという間に仲良くなった。
しかし退院すると、ミルトの妹が具合が悪いと言って邪魔をしてくるようになった。婚約者であるミュゲはそれが気に食わない。そんなある日、些細なことで妹よりミュゲを優先してきたミルト。それでミュゲは気が付いた。優しい彼は、より具合が悪い方を優先してくれるのだと。
ミルトをめぐってどちらが具合が悪いのかを競いだすようになる妹と婚約者。待っていたのは意外な結末だった。
本当の情弱は誰?
文字数 6,114
最終更新日 2021.10.21
登録日 2021.10.19
前世、俺はいわゆるアル中だった。色んな言い訳はあるが、ただ単に俺の心が弱かった。酒に逃げた。朝も昼も夜も酒を飲み、周囲や家族に迷惑をかけた。だから。転生した俺は決意した。今世では決して酒は飲まない、と。
それなのに、まさか無実の罪で毒杯を賜るなんて。
文字数 4,145
最終更新日 2021.10.06
登録日 2021.10.05
モモリー・アイドール公爵令嬢は転生者。
前世、高度成長期の日本に育った彼女はアイドルが大好きだった。ブラウン管の中の微笑みに夢中だった。
モモリーは卒業パーティーで婚約者だった王太子に婚約破棄をされてしまう。それはいい。しかし、王子に引っ付くヒロインの、中途半端なぶりっこだけは許せないっ!
(高位貴族男子にのみ愛想を振りまくその態度。ぶりっこの風上にも置けないわ。やるなら、徹底的に、老若男女問わず、全方位にやるべきよ)
婚約を破棄され、自由になった公爵令嬢は、王太子妃にはふさわしくないと封印していたアイドルごっこを解き放つ。卒業パーティー、自らを断罪するこの場所で、最高のパフォーマンスを見せて差し上げましょう。
伝説の舞台が、今、始まる――!
※本編は一話のみで完結しています。影さん視点の番外編があります。影さん視点で本編前・本編裏・本編後が分かります。
文字数 57,812
最終更新日 2021.07.27
登録日 2021.06.21
「カレーナル・エンギリー侯爵令嬢、『婚約破棄』などという、はしたないスキルを持つ君は王太子である僕の婚約者にふさわしくない。君との婚約は破棄し、ここにいるキャリー・アイストック伯爵令嬢を新たな婚約者とする」
(ああ、またなの……)
侯爵令嬢のカレーナルは『婚約破棄』のスキル持ち。嫌われスキルのせいで過去2回ほど婚約破棄をされている。そして卒業パーティーで王太子から断罪され、婚約破棄は3度目に。
カレーナルはまだ、一度もスキルを使っていないのに。
「良かった……! それならば、私と婚約をしていただけませんか。ずっと、探していたのです。『婚約破棄』のスキルを持つ貴方を」
そんな中、他国の王子がカレーナルに婚約を申し込んできた。彼の国には『冥婚』という制度があるらしく……。
※この作品を気に入ってくださった方は、よろしければ作者ページから『冥婚悲恋歌』へどうぞ☆ 本編では深く語られなかった王子や悪役令嬢達の悲劇を集めた短編集です。
文字数 39,286
最終更新日 2021.07.02
登録日 2021.06.23