ちょこまろ

ちょこまろ

38 件 12
恋愛 連載中 短編
「君は悪い人じゃない。でも、退屈なんだ」 結婚五年目。 三十二歳の柏木梨花は、夫から突然、離婚届を突きつけられた。 夫には若い恋人がいた。 毎日の食事を作り、愚痴を聞き、義実家との付き合いまで大切にしてきた梨花の五年間は、「退屈」の一言で捨てられた。 居場所を失った梨花が帰ったのは、箱根にある実家の老舗旅館『七瀬屋』。 創業百五十年。 古い木の廊下、苔むした庭、湯気の立つ朝食――。 けれど、思い出の宿もまた、深刻な経営難で消えかけていた。 結婚も終わった。 帰る場所までなくなってしまうかもしれない。 そんな雨の夜、七瀬屋の玄関に一台の黒い高級車が止まる。 そこから降りてきたのは、宿泊施設の再生に携わる男――佐伯蓮。 乱れた髪も、古いサンダルも笑わず、 廃れかけた七瀬屋を「価値がない」と切り捨てることもしない。 そして彼は、梨花自身さえ気づかなかったものを見つけていく。 客が靴を脱ぐ速さを見ること。 寒そうな人へ膝掛けを出すこと。 ひとりで来た客を、無理に会話へ引き込まないこと。 「これは、七瀬屋の財産です」 元夫に「退屈」と言われた梨花の優しさを、 蓮だけは、誰にも真似できない価値だと言ってくれた。 古い旅館を残すため、 梨花はもう一度、自分の人生を立て直していく。 ところが七瀬屋が再び注目され始めた頃、 梨花を捨てた元夫が、若い恋人を連れて現れて――。 「梨花さんの名前を、誰にも盗ませません」 仕事では完璧。 恋だけは不器用。 そんなホテル王が守ろうとするのは、 旅館だけではなく、傷つきながらも立ち上がろうとする梨花自身だった。 元夫に捨てられた女が、 箱根の老舗旅館を再生しながら、 自分の価値と、本当に愛してくれる人を見つけていく――。 老舗旅館再生×大人の溺愛×再出発のシンデレラストーリー。
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文字数 193,193 最終更新日 2026.10.14 登録日 2026.09.17
恋愛 連載中 短編
「お前などいなくても、何ひとつ困らん」 八年間、王国のために薬を作り続けてきた宮廷調薬士エルザ。 眠る時間も、自分のためのお金も削り、 流行病に苦しむ民や傷ついた騎士たちのため、毎日百本を超える薬を調合してきた。 けれど、その功績はすべて別の令嬢に奪われ――。 「地味で能無し」 「薬草を刻むことしかできない女」 そう嘲笑された末、王太子から婚約を破棄され、宮廷調薬士の地位まで剥奪。 外套ひとつ与えられず、嵐の夜の王都へ追放されてしまう。 すべてを失い、泥の中で力尽きかけたエルザ。 そんな彼女の前に降り立ったのは―― 一頭で城壁すら焼くと恐れられる、巨大な真紅の竜だった。 そして、その背から現れた男を見て、人々は震え上がる。 隣国最強の竜騎士。 若くして公爵家を率い、幾つもの戦場を制した“戦場の死神”――ライオネル・グラディウス。 ところが。 誰もが恐れる冷徹な竜騎士は、傷だらけのエルザを見るなり、泥の中へ片膝をついた。 「恥じるような手ではありません」 「でも、汚れています」 「働いた跡です」 誰にも認めてもらえなかった薬を、 誰にも褒めてもらえなかった仕事を、 ライオネルだけは知っていた。 そして彼は告げる。 「グラディウスには、あなたを必要としている者がいます」 「薬が必要なのですか?」 「あなたが必要です」 望むだけの薬草。 自分の名前で認められる研究。 温かい食事と、安心して眠れる部屋。 そして何より―― 触れる前には必ず許可を求め、 傷ついた心まで大切に扱い、 「もう二度と追い出さない」と誓ってくれる最強の竜騎士。 必要とされるためには、自分を削らなければならない。 そう信じていたエルザの日常は、隣国へ渡ったその日から一変する。 一方、 「エルザなどいなくても困らない」 そう言い切って彼女を追放した王国は、まだ知らない。 本当に“能無し”だったのは、誰なのかを――。 婚約破棄×追放ざまぁ×調薬士×最強竜騎士×一途な溺愛。 すべてを奪われた少女が、 自分の価値を認めてくれる人と出会い、 仕事も居場所も恋も取り戻していく、甘く優しい逆転の異世界恋愛。
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文字数 46,919 最終更新日 2026.10.14 登録日 2026.10.09
恋愛 完結 短編
「介護士ってさ……正直、将来ないだろ」 三年間付き合った恋人から、仕事と将来性を理由に捨てられた介護士・佐倉美咲。 給料は高くない。 毎日体はくたくた。 消毒液で手は荒れ、爪をきれいに飾る余裕もない。 それでも美咲は、利用者の小さな変化を見逃さず、一人ひとりの「できる」を信じて働いてきた。 そんな彼女の仕事を、ずっと見ていた男性がいた。 利用者・千代の孫、一ノ瀬智也。 「祖母が、ここに来る日を楽しみにしている理由が分かりました」 派手な言葉で口説くわけでもない。 無理に距離を縮めることもしない。 ただ、美咲が誰かのために膝をつき、一歩を待ち、手を差し伸べてきたことを――彼だけは、ちゃんと見ていた。 元恋人に仕事を馬鹿にされても。 職場で「いい人ぶってるだけ」と陰口を叩かれても。 智也は、美咲自身さえ価値がないと思いかけていたものを、一つずつ拾い上げていく。 そして美咲が、 「私なんて、きれいじゃありません」 と荒れた自分の手を見つめたとき。 智也は、静かに告げる。 「僕はその手を、一番きれいだと思っています」 これは、 誰かを支えることばかりで、自分を大切にすることを忘れていた介護士が、 自分の仕事も、 自分の人生も、 そして自分自身も、 もう一度好きになっていく物語。 利用者のおばあちゃんが繋いだ、 じんわり泣けて、最後は幸せになれる大人の純愛です。
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文字数 18,006 最終更新日 2026.10.08 登録日 2026.10.04
恋愛 完結 短編
離婚して三年。 小学一年生の娘・結衣を育てながら、医療事務員として働く宮原沙奈には、恋愛をする余裕などなかった。 仕事、学童、家事、娘の体調。 毎日を回すだけで精一杯。 「母親なんだから、私がしっかりしなければ」 そう思って生きてきた沙奈の前にいたのは、隣の調剤薬局で働く薬剤師・椎名智也だった。 無口で、必要以上に踏み込んでこない。 けれど、誰も気づかなかった沙奈の小さな傷や疲れには、静かに気づいてくれる人。 ある夜、結衣が高熱を出し、閉店間際の薬局を訪れた沙奈に、椎名はそっと水を差し出す。 「お母さんも、水分を取ってください」 娘のことばかりで、自分自身を忘れていた沙奈。 そして結衣もまた、椎名の優しさに少しずつ心を開いていく。 けれど沙奈には、忘れられない過去があった。 元夫との結婚生活で負った傷。 娘をもう二度と傷つけたくないという恐怖。 だから決めていた。 もう誰にも期待しない。 母親である自分は、恋なんてしてはいけない。 それなのに――。 「結衣ちゃんを大事にしているあなたごと、大切にしたい」 急かさない。 押しつけない。 父親の代わりになろうともしない。 ただ、母親として必死に生きてきた沙奈自身を見てくれる人。 これは、恋を諦めていた一人の母親が、 娘と一緒に、もう一度誰かを信じていくまでの物語。 傷ついた心にそっと寄り添う、 シングルマザーと寡黙な薬剤師の、じれったくて優しい大人の恋。
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文字数 16,649 最終更新日 2026.10.03 登録日 2026.09.29
恋愛 完結 短編
大阪城で、私は思い出した。 前世の私は―― “悪女”と呼ばれた淀殿だった。 三十二歳の会社員・浅井千紗。 仕事では結果を出しているのに、なぜか社内の実力者・羽柴専務から執拗に目をかけられていた。 「俺のそばにいれば、もっと上へ引き上げてやる」 その言葉を聞くたび、胸を締めつける理由が分からなかった。 ――前世を思い出すまでは。 羽柴秀明。 彼は、かつて茶々を自分のそばに置いた“あの男”を思わせる存在だった。 そして今世でもまた、 千紗は権力者に「選ばれる女」にされようとしていた。 けれど、そんな彼女の前に一人の男が現れる。 冷静すぎると恐れられる監査室主任・石田成哉。 彼だけは知っていた。 千紗がかつて誰だったのか。 そして、自分自身が――石田三成だったことも。 「あなたが悪女だったのではありません」 誰もが淀殿を責めた歴史の中で、 彼だけは彼女を責めなかった。 前世では守れなかった女。 今世では、もう誰のものにもさせない。 ただし彼は、千紗を自分のものにしようともしない。 「逃げる道は作ります。でも、最後に歩くのはあなたです」 淀殿でもない。 秀吉の女でもない。 “悪女”でもない。 今度こそ、自分の人生は自分で選ぶ。 現代に転生した淀殿と石田三成。 前世の因縁を越えた先で、二人が選ぶ関係とは――。 現代転生×お仕事×歴史ロマンス。 「悪女」と呼ばれた女性が、自分の名前と人生を取り戻す物語。
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文字数 15,596 最終更新日 2026.09.28 登録日 2026.09.23
恋愛 完結 短編
「戻ってきたら、また海行こう」 その言葉を、私は十年間、忘れられなかった。 茅ヶ崎の海沿いのカフェで働く、三十四歳の森崎里帆。 仕事も好き。 友人もいる。 恋だって、何度かした。 それでも八月の終わりになると、どうしても思い出してしまう人がいた。 十年前――。 友達以上、恋人未満だった青柳恭介は、福岡への転勤を機にこの町を離れた。 「行かないで」 たった一言が言えないまま、里帆は彼を笑顔で見送った。 三年で戻るはずだった彼は戻らず、連絡もいつしか途絶えた。 そして十年後。 夏の終わりの茅ヶ崎駅で、突然、名前を呼ばれる。 「里帆?」 振り返った先にいたのは、忘れたふりをしていた恭介だった。 再び海沿いを歩く二人。 昔と変わらない潮風。 閉じたままのギターケース。 その中から見つかる、十年前に里帆へ渡されるはずだった言葉。 「あの時、言えなかったことがある」 十年前の続きをするだけでは、もう足りない。 仕事も、家族も、過ぎてしまった時間もある。 若い頃のように、好きという気持ちだけでは走れない。 それでも――もう一度、この人の隣を歩いてみたい。 夏の終わりの湘南を舞台に、 十年間言えなかった想いが、もう一度動き出す。 これは、忘れられなかった恋をやり直す物語ではなく、 大人になった二人が「今の相手」をもう一度好きになっていく、再会ラブストーリー。
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文字数 20,662 最終更新日 2026.09.22 登録日 2026.09.18
恋愛 完結 短編
神奈川県・城ヶ島。 二十八歳の相沢澪は、父が船長を務める実家の釣り船屋「しおかぜ丸」で受付をしている。 けれど、店は今にも潰れそうだった。 減っていく常連客。 増えない新規予約。 古すぎるホームページ。 かさむ船の修理費。 それでも澪は、父にも客にも心配をかけまいと、今日も受付で笑っていた。 そんな彼女のもとへ隔週土曜日になると必ず現れるのが、葉山から通う四十歳の常連客・黒瀬航平。 無口で、落ち着いていて、必要以上には踏み込んでこない大人の男性。 ――なのに彼だけは、澪の「大丈夫」を信じてくれない。 「受付でも、嫌なことは嫌でいいと思います」 そしてWebの仕事をしている黒瀬は、経営に悩む澪へ手を差し伸べる。 古びたホームページを作り直し、 初心者にも届く釣り船屋へ変えていくうちに、 少しずつ二人の距離も変わっていって――。 「最初は、釣りに来ているつもりでした」 「でも、いつからか、釣りだけではなくなりました」 「澪さんに会いに来ていました」 守りたい実家。 不器用な父。 海の見える葉山の家。 そして、十二歳年上の無口な常連さん。 これは、ひとりで全部背負って笑っていた女性が、 自分をちゃんと見てくれる人と出会い、 大切な店も、自分の未来も、恋も諦めないと決める物語。 城ヶ島の潮風から始まる、 じれ甘・大人の年の差恋愛。
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小説 14,831 位 / 233,949件 恋愛 6,511 位 / 67,549件
文字数 21,468 最終更新日 2026.09.17 登録日 2026.09.13
恋愛 完結 長編
千年前、『源氏物語』を書いた紫式部。 目を覚ました彼女がいたのは――二〇二六年、現代の京都だった。 しかも転生した身体は、二十八歳の売れない恋愛小説家・紫野ことは。 スマホも、AIも、Web小説も、ランキングも分からない。 それなのに、目の前には恋愛小説コンテストの締切が迫っていた。 「物語を書く女は、どの世でも締切から逃げられないのですね」 千年前、女たちの恋と孤独を書き続けた紫式部は、 現代を生きる女性たちの痛みを知り、 もう一度、自分の言葉で恋愛小説を書き始める。 そんな彼女の才能を誰より早く見つけたのは、 東京の出版社で働く担当編集者・瀬川理人だった。 彼は、ことはの文章を直すだけではない。 書けなくなった夜も。 心ない言葉に傷ついた日も。 自分の才能を信じられなくなった時も。 彼女の言葉を、誰より大切に守ろうとする。 けれど――。 千年前、誰かに選ばれることを待つ女たちを書いてきた紫式部は、 千年後の京都で初めて、 「自分から誰かを選ぶ恋」 を知っていく。 売れない恋愛小説家に転生した紫式部と、 彼女の才能ごと愛してしまった担当編集者。 これは、千年の時を越えて、 物語を書く女が「自分自身の恋」を見つける物語。
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文字数 243,588 最終更新日 2026.09.16 登録日 2026.08.14
恋愛 完結 短編
高校二年の冬、いじめが原因で学校をやめた。 それから三年間、私はほとんど家から出られなかった。 二十一歳になった今、ようやく始められたのは、みなとみらいのカフェでのアルバイト。 それでも、人の視線は怖い。 通勤中のマスクも外せない。 実家とバイト先を往復するだけ。 華やかなみなとみらいの街は、私には一生縁のない世界だと思っていた。 ――あの人に出会うまでは。 毎朝コーヒーを買いに来る、二十五歳のエリート会社員・佐伯尚哉。 仕事ができて、背が高くて、私とは住む世界が違う人。 なのに彼は、私が失敗しても笑わなかった。 「大丈夫です。急いでいないので」 歩けないなら、待ってくれる。 人混みが怖くなったら、戻ってくれる。 できなかったことではなく、できたことを見つけてくれる。 そして彼は、決して私を「普通」に戻そうとはしなかった。 「無理に慣れなくていいです」 最初は、たった五分の寄り道だった。 臨港パーク。 クイーンズスクエア。 赤レンガ倉庫。 彼の隣で少しずつ歩くうちに、実家とバイト先しかなかった私の世界に、「行ってみたい場所」が増えていく。 でも――。 高校中退。 三年間の引きこもり。 今も外せないマスク。 こんな私が、彼を好きになってもいいの? そう思っていた私に、尚哉さんは告げる。 「僕は、誰にでもこうしているわけじゃありません」 これは、傷ついた過去を消して強くなる物語ではない。 怖いままでもいい。 立ち止まってもいい。 戻ったっていい。 一歩進むたび、同じ歩幅で隣を歩いてくれる人と出会った女性が―― やがて「愛されること」を信じ、彼の妻になるまでの、急かさない溺愛ラブストーリー。
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文字数 24,495 最終更新日 2026.09.12 登録日 2026.09.02
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出世争いで嵌められた35歳の私を、東大卒の新入社員・律くんが全力で守ってくれました 35歳、独身。 大手企業で主任として働く佐伯美緒は、「仕事ができて当たり前」と扱われ、誰かに認められることも、恋をすることも、いつしか諦めかけていた。 そんな美緒が教育係を任されたのは、東大卒の新入社員・朝倉律、23歳。 十二歳も年下なのに、律は美緒の仕事ぶりを誰よりもしっかり見ていた。 「佐伯先輩が不当に評価を下げられるのを、見なかったことにはできません」 そんな中、美緒は次期管理職をめぐる出世争いに巻き込まれる。 企画書の数字が何者かに差し替えられ、必死に作り上げた企画まで上司に横取りされそうになる。 けれど律だけは、美緒の味方だった。 更新履歴。 作成記録。 データ。 積み重ねてきた仕事の証拠。 新人という立場にもかかわらず、律は一つずつ事実を集め、美緒を陥れようとする相手に真正面から立ち向かっていく。 「先輩が不当に傷つけられるのは、嫌です」 守られるたび、美緒の心は揺れていく。 でも彼は十二歳年下。 しかも、自分が教育している新入社員。 こんな気持ちを抱いてはいけない――。 そう思って距離を置こうとする美緒に、律はまっすぐ告げる。 「僕が好きなのは、美緒さんです」 仕事も、弱さも、年齢も。 全部見たうえで、あなたがいい。 出世争いに嵌められた35歳のキャリア女性と、彼女を誰より大切にする東大卒の年下男子。 仕事で奪われた誇りを取り戻し、もう一度「恋の主役」になる―― お仕事逆転×年下溺愛の大人のオフィスラブ。
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幼なじみの君が優しすぎて、好きと言えないまま夏が終わる 稲村ヶ崎に住む高校生・美沙には、ずっと隣にいる幼なじみの湊がいる。 毎朝同じ江ノ電に乗り、同じ景色を見て、放課後も自然と一緒に帰る二人。 湊はいつだって優しい。 人混みでは美沙をかばい、元気がなければすぐに気づき、何も言わずそばにいてくれる。 けれど、美沙には分からない。 ――その優しさは、幼なじみだから? それとも、私だから? 「好き」と言ってしまえば、今までの関係には戻れないかもしれない。 湊もまた、変わってしまうことを恐れ、大切な言葉を胸の奥に隠していた。 七里ヶ浜の海、夏祭り、夕暮れの江ノ電。 近すぎるからこそ、素直になれない二人の距離が、夏の終わりとともに少しずつ動き始める。 そして迎える、八月三十一日。 稲村ヶ崎の海を前に、二人はずっと言えなかった想いと向き合う――。 鎌倉・湘南の夏を舞台に描く、 じれったくて、切なくて、最後には胸があたたかくなる幼なじみ青春恋愛。
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新入社員として配属された初日。 私、高瀬小春は、直属の上司を見て固まった。 「高瀬さん。今日からよろしくお願いします」 黒いスーツを完璧に着こなし、冷静沈着。 仕事には厳しく、若くして課長になった有能な上司――黒沢誠司。 でも私は知っている。 この人、昨夜まで私の膝に頭を乗せて甘えていた人です。 ――だって、私の旦那様だから。 会社では「高瀬さん」と「黒沢課長」。 家に帰れば、新婚夫婦。 しかも会社でこの秘密を知っているのは、たった一人。 社長。 ……ちなみに、その社長は私の叔父です。 「課長の妻だから」 「社長の姪だから」 そんな理由で評価されたくない。 私は一人の新入社員として、自分の力で認められたい。 だから結婚指輪も外し、夫婦であることを隠して働くことにしたのだけれど――。 優しい男性社員に話しかけられれば、課長のペンが止まり。 仕事で失敗すれば、会社では容赦なく叱られ。 家に帰れば、 「小春、よく頑張った」 と、誰よりも甘く抱きしめてくる。 会社では冷たい上司。 家では私にだけ甘える旦那様。 絶対に秘密にしたい新婚夫婦の、 甘くてちょっと危険なオフィスラブコメディ。
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二十九歳の奈々は、いつも誰かの恋を応援する側だった。 「奈々がいると安心する」 「友達にいたら最高」 そう言われるたび、私は恋愛の主役にはなれない人間なのだと思っていた。 そんな奈々が初めて本気で惹かれたのは、取引先の穏やかな男性・黒瀬。 けれど彼には、七年前に亡くした婚約者がいた。 それでも優しくされるたび、期待してしまう。 もしかしたら、私を見てくれているのかもしれない――。 そんな淡い期待を打ち砕いたのは、黒瀬の何気ない一言だった。 「奈々さんを見ていると、少し彼女を思い出します」 私を見ているようで、見ていない。 私は、亡くなった婚約者の代わりなの? 傷ついた奈々のそばにずっといたのは、二歳年下の同僚・俊介だった。 「俺は、奈々さんを誰かに重ねたりしません」 「奈々さんが奈々さんだから、見ています」 失恋して泣く奈々を待ち続け、それでも答えを急かさない俊介。 そして彼は告げる。 「俺は、奈々さんを選んでます。ずっと」 誰かの代わりではなく。 誰かの恋の脇役でもなく。 “私自身”を愛してくれる人に出会って、奈々は初めて自分の人生の主役になっていく。 切なくて、最後は甘い。 失恋から始まる、年下男子との大人の再生ラブストーリー。
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「春菜は、本当にいい子だよ」 三年間付き合った恋人からそう告げられ、白石春菜の恋は終わった。 一緒にいると落ち着く。 家族のように安心する。 けれど、もう恋人としてのときめきはない――。 相手を困らせたくなくて、最後まで笑って別れた春菜。 泣いた後には、昨日までの自分を洗い流すように白い服を着る。それが母から教わった、春菜なりの立ち直り方だった。 けれど、今年の白は何も洗い流してくれない。 自分が空っぽになったように感じるだけだった。 失恋した春、偶然入った小さなギャラリーで涙を流していた春菜は、一人の男性と出会う。 表参道の裏通りで小さな香水店を営む調香師・香月亮。 事情を問いただすことも、軽い慰めを口にすることもなく、亮は白い服を着た春菜に静かに告げる。 「終わらせるための白じゃなくて、始まる前の白に見えます」 そして彼は、傷ついた春菜のためだけに香りを作り始める。 白い花。 洗いたてのシャツ。 眠れなかった夜。 春の陽ざしと、少しだけ明るい白ワイン。 香りの名前は――「White Blend」。 「忘れるための香りは作れません。でも、思い出しても痛くない場所まで連れていく香りなら、作れるかもしれません」 亮の優しさに触れるたび、春菜は少しずつ自分の言葉と笑顔を取り戻していく。 しかし亮もまた、かつて「一人のために作る香りに商品価値はない」と否定され、自分の才能を信じられなくなった過去を抱えていた。 失恋から立ち直ろうとする春菜。 もう一度、自分の香りを信じたい亮。 二人は互いの傷に寄り添ううちに、いつしか惹かれ合っていく。 けれど、春菜には新しい恋へ踏み出す勇気がない。 また恋をして、また置いていかれたら? 亮の優しさに甘えることで、彼の未来を邪魔してしまったら? これは、過去を忘れる物語ではない。 傷ついた記憶も、泣いた夜も抱えたまま、それでももう一度誰かを好きになる物語。 白い服だけを着ていた春に、調香師の彼がくれたのは――新しい恋を始めるための香りでした。
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恋愛 完結 ショートショート
七月一日、片瀬東浜。 高校二年生の七瀬夏実は、江ノ島の海の家「夕凪」で、初めての夏バイトを始めた。 潮の匂い、焼きそばの匂い、かき氷、ラムネ、サンオイル。 夏だけの場所で出会ったのは、同じ高校の佐倉陽太。 学校ではほとんど話したことのない彼なのに、海の家では毎日顔を合わせる。 重い氷を運ぶ姿。 さりげなくスポーツドリンクを渡してくれる優しさ。 夕方の西浜で見た横顔。 気づけば夏実の中で、陽太はただの同級生ではなくなっていた。 けれど、好きだとは言えない。 言ってしまえば、この距離が壊れてしまうかもしれないから。 七月一日から八月三十一日まで。 江ノ島の海の家で過ごす、眩しくて、少し切ない、ひと夏の青春恋愛。 夏が終わる前に、私は君に好きと言えるのだろうか。
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文字数 25,912 最終更新日 2026.07.25 登録日 2026.07.16
現代文学 完結 短編
警察学校を卒業し、交番勤務を始めて二週間。 新人女性警察官の小川芽衣は、落とし物や道案内ばかりの毎日に、どこか物足りなさを感じていた。 そんなある日、交番に一人の女子高生が現れる。 「この近くに、公衆電話はありますか」 翌日は本屋。その次はカフェ。 少女は何度も交番を訪れるのに、本当に聞きたいことだけは決して口にしなかった。 やがて芽衣は、少女が家の話を避けていること、そして袖口の奥に隠された痣に気づく。 「大丈夫なんで」 そう笑う少女に、元捜査一課刑事の巡査部長・久我は告げた。 「“大丈夫”を信じるな。だが、決めつけるな。そして、見逃すな」 その数日後、少女は交番へ来なくなる。 そして夜の繁華街で、芽衣のもとに未成年者保護の無線が入った――。 助けを求める声は、いつも大きいとは限らない。 言葉にならない小さなSOSと、それを見つけようとする交番勤務の警察官たちを描いた、心に明かりをともすヒューマンドラマ。
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文字数 9,631 最終更新日 2026.07.21 登録日 2026.07.19
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