北の罪: 白き王女に守られし黒き少年

白金色の宮殿、洗練された貴族社会、強大な銃術魔導師部隊を誇る「北方王国ルクセンローザ」。大陸の命運は、この国の手に握られていた。

その中心に輝く王位継承者――

「白蓮の王女」オクタヴィア・ド・ルクセンローザ。その才知、カリスマ、揺るぎない政治力は、臣民から深く愛されていた。

だが、隣国ヴェルデンシュタールの南方に、巨大な光の柱が迸ったことで、すべては変わった。

その神々しいる爆発から現れたのは、遠き南方大陸より現れし肌黒き難民、四千九百九十九名。全員が記憶を失い、混乱の中を彷徨っていた。

ただ一人を除いては。

滅亡させられそうになってる南方王国・バイヤールの近衛兵であった男、
シェゴル・アデトクン――彼だけが、すべての記憶と真実を保っていた。

彼だけが知っている。

呪わしい瘴気〈大腐蝕〉が南方大陸を蝕み、
幾百万もの民が苦しんでいる。
そしてひとつの預言が告げる:
「首の後ろに六芒の刻印を宿す少年が殺される時、
腐蝕は終焉を迎える」と。

だが、ヴェルデンシュタールに集められた四千九百九十九人の難民の中に、
その少年はいなかった。

そして――時を同じくして
北方のルクセンローザの宮殿に、第二の光柱が轟いた。

王女オクタヴィアの私室に、ただ一人現れた肌黒き少年。
記憶を失い、首に微かな六芒の刻印を浮かべるその若者は――

アズビーケ・“アズ”・オカフォロニエ。

彼は何も知らない。
南方のことも、
預言のことも、
自らの存在が意味する惨劇のことも。

しかし、神官長がアズの姿を見た瞬間、顔面は蒼白となり、震えながら言い放った:

「この子こそ――
 北と南、二つの世界の命運を決める存在です」

オクタヴィアは直ちにアズを自らの庇護下に置き、
剣術を教え、学問を授け、
そして側近の精鋭少女銃術魔導師部隊《フルール・アルケビュシエ》を
昼夜を分かたず彼の護衛に当たらせた。

ルクセンローザにとって、
アズは、やがて復活する運命の「北方の闇神」を打ち払う鍵、
“オーラの召喚主”たる預言の子である。

シェゴルにとって、
アズは、南方の故郷を滅亡から救うため、
殺されるべき預言の標的である。

ヴェルデンシュタールの貴族たちにとって、
難民たちは政治的脅威であり、
ルクセンローザが五千人全てを受け入れようとする思惑は疑念の的である。

だが、アズ自身にとって、
この全ては、ただ恐怖に満ちた謎でしかない……いったい、どんな運命が彼らすべてを待ち受けているのか......
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