赤十字(戦死者達の記録)


<屑カゴの小説から>

 自分は誰の為に戦って居たのだろう。
 自分は何の為に戦って居たのだろう。
 自分は何故、こんな時代に生まれたのだろう。

振り返ると・・・、
自分は軍服を着て『戦友(人)の肉』を喰らっていた。
八十年経たこの洞窟に、軍服を着た『自分の遺骨』が眠っている。

 軍人勅諭
一つ 軍人は国家につくすべき
二つ 軍人は礼儀正しくすべき
三つ 軍人は武勇を大事にするべき
四つ 軍人は信義を大事にするべき
五つ 軍人は質素にするべき

昭和十九年(1944)~昭和二十年(1945)
投入兵(十五万七千人)・終戦時の生存者(一万三千人)。
死亡率九二%
戦死者の八十%は 『餓死・病死』

『ジャワの極楽、ビルマの地獄、死んでも帰れぬニューギニア』

東部ニューギニア戦線 従軍兵の記録から

 ・・・そりゃ、酷いモンでしたよ。
兵隊サンが一発撃てば百倍にして返って来るんです。
兵隊サンが一人見えたら動かなくなるまで連射して来るんです。
だから兵隊サンは『戦えない』んです。
兵隊サンは『隠れて居た』んです。
ジャングルの洞穴で飲まず食わずで『生きる事と闘っていた』んです。
 ある「部隊長」サンは独断で降伏し、俘虜に成る事に決めたそうです。
多くの兵隊サンは、
 「自分は残ります!」
と「反対」したそうです。
すると部隊長サンは手榴弾を地ベタに並べ、
 「反対する者はそれを取って直ぐに敵陣に突撃して来い」
と命令したそうです。
 「できないのなら俺と一緒に来い!」
全員が決断する迄に時間なんて必要ありません。
要するにすでに戦闘集団(部隊)の体(テイ)を為していなかったのです。
兵隊サンは急いで汚れた褌(フンドシ)で、『すすけた白旗』を数枚作ったそうです。
褌を外した兵隊サンは南京袋を腰に穿いて降伏して行ったそうです。
万歳じゃなくてまさに『漫才』ですよね。
軍人勅諭?そう言えば『軍隊手帳』に何か書いて有りましたね。
『そんなモノ』は・・・失(ナ)くしました。

 この小説は読み流す作品ではありません。
 評価や価値を期待するモノでもありません。
アナタの父や叔父達が軍服を着たままこの『不条理の島』に眠っているのです。

※ この作品は著作権を放棄したものではありません。『映像化希望』
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