縫い物 小説一覧

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「お人形の中に何を縫い込んだか、ご存知でしたの?」

伯爵令嬢フィンナ・クーリッヒは母から一つの秘技を受け継いだ。「縫い込みの術」——子供の髪、乳歯、初めて血を出した傷の血、初熱の夜の呼気を硝子瓶に集め、縫い目の内側に織り込む。人形は、持ち主が病や呪いを受けるとき、代わりに壊れる。 フィンナは王家の五人の子供の人形をすべて縫ってきた。第二王女の熊が七度破れた時、王女は七度の熱を逃れた。第三王子の狐が夜中に目玉を失った時、王子は一度目の暗殺の毒を吸い取っていた。 婚約者の公爵子息は「人形など縁起の悪い迷信」と嘲り、婚約を破棄した。 フィンナは最後の一体——末姫のための仔羊——を縫い上げ、針を置き、辺境へ去る。 三ヶ月後。王宮に侵入した刺客が、末姫の寝室で短剣を振るう。仔羊が短剣を受け止めた。綿の中から、黒ずんだ糸くずと、小さな硝子片と、誰かの髪の毛が転がり落ちる。 王は震える指でその綿屑を拾い、涙を流した。
ファンタジー 完結 短編
感想数 0 文字数 13,009 最終更新日 2026.04.29 登録日 2026.04.29
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Sarta Tsumugiya

Sarta Tsumugiya
服には人の人生がある。たとえそれが、亡くなっている人だとしても──。 とある街にある仕立屋『Sarta Tsumugiya』(サルタ・ツムギヤ)。 物静かな店主・紬屋科子(つむぎやしなこ)と黒猫の麦(むぎ)。 小さな店で交わされる、ささやかな依頼。 これは、布と記憶と小さな後悔の物語。
ライト文芸 完結 短編
感想数 0 文字数 41,698 最終更新日 2026.03.24 登録日 2026.03.24
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戸を開いたその先に。~捨てられ縫い姫は、貧乏進士(実は皇帝)に溺愛される~

戸を開いたその先に。~捨てられ縫い姫は、貧乏進士(実は皇帝)に溺愛される~
――すまない! 少し休ませてもらえないか! 今日は、門の前で訪れる男性を待つ日。「婿取りの儀式」 門を開け、招き入れた男性を夫とする。 そんなしきたりに従って、家の裏門で訪れる予定もない相手を待っていたのだけれど。 ――すまない。連れの具合が良くないんだ。 やや強引に、ぐったりした連れの少年を抱えて入ってきた青年。 十のときに母が亡くなり、父が連れてきた義母と異母姉。 実の娘なのに、屋敷の隅に追いやられ、もっぱら縫い物ばかりさせられていた。 その上、幼い頃からの許嫁だった人からも婚約破棄され、彼は異母姉の夫となった。 「こんな男を夫にするのか!」 彼らに出会ったことで、父親から勘当されたリファ。 そんな彼女を助けてくれたのは、今日が婿取りの儀式だと知らず飛び込んできた青年。 ――身の振り方が決まるまで。 妻にする気はない。自由にして構わない。 セイランと名乗った青年は、頼る先のないリファに、とりあえずの暮らすところを提供してくれた。 地方から省試を受けるため上京してきたというセイラン。彼の従者で、弟みたいな少年、ハクエイ。 彼らと暮らしながら、少しずつ自立のために縫い物仕事を引き受けたり、彼らのために家事に勤しんだり。 家族に捨てられ、婚約者からも見捨てられ。 悲しみに、絶望しかけていたリファは、彼らと暮らすことで、少しずつその心を癒やしていくけれど。 ――自立。 いつかは、彼らと別れて一人で暮らしていかなくては。いつまでも厚情に甘えてばかりいられない。 そう思うのに。 ずっとここで暮らしていたい。ハクエイと、……セイランさんといっしょに。 ――彼女の境遇に同情しただけ。助けたのは、ちょっとした義侠心。 自分の運命に、誰かを巻き込みたくない。誰かを愛するなんてことはしない。 そう思うのに。 ずっとここで暮らしていたい。ただの進士として、……彼女といっしょに。 リファとセイラン。 互いに知らず惹かれ合う。相手を知れば知るほど、その想いは深まって――。 門を開けたことで、門をくぐったことで始まる、二人の恋の物語。
恋愛 完結 長編 R18
感想数 0 文字数 111,731 最終更新日 2025.07.01 登録日 2025.06.01
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