第1回新エンタメ小説大賞
選考概要
ジャンルに捉われず新たな大ヒット作を生み出すべく企画した第1回新エンタメ小説大賞。初開催ながら計923作品ものエントリーが集まり、本大賞に対する高い熱量、意気込みが感じられた。今回、王道・旬のワードを掛け合わせた12のテーマを掲げたが、それぞれのお題を様々な解釈で自作に落とし込んでおり、選考する側も熱が入り、大いに盛り上がった。
それら作品群の中から、編集部内で総合大賞候補としたのは、「一糸報いて、幕は下りる」「身代わりのあなたに花束を」「恋愛リアリティデスゲームショー〜脱出条件は真実の愛だけ〜」「珠珠は死者の想いを読む 毒杯の皇后が遺した後宮継承録」「よしなにお頼み申す」「勇者の終わりと英雄の始まり」「余命4時間〜あの日、きみはなぜ消えた?〜」「後宮書庫の記録係 ~腹黒監察官と文字に憑かれた下女~」「俺と邪龍の神成り物語」「お江戸 盗人懲悪帖」「友情相関図」「お嬢様と『私』は、終末世界で釣りをする。~侵略宇宙人は調理法次第でそこそこ美味しい~」「ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~」「【逃げた勇者のやりなおし〈アフターエンド〉】」の14作品。
いずれもお題に相応しい実力のある作品ばかりではあったが、突き抜けた面白さやポテンシャルという点で一歩及ばず、大変残念ながら総合大賞はなしとし、読者から最も高い評価を得た「一糸報いて、幕は下りる」を読者賞に、そのほかの作品には下記の通りテーマ別賞を授与することとなった。その他、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
・犯罪スペシャリスト集団×時代小説賞:「よしなにお頼み申す」
・犯罪スペシャリスト集団×時代小説賞:「お江戸 盗人懲悪帖」
・倒叙ミステリー×中華後宮賞:「後宮書庫の記録係 ~腹黒監察官と文字に憑かれた下女~」
・倒叙ミステリー×中華後宮賞:「珠珠は死者の想いを読む 毒杯の皇后が遺した後宮継承録」
・モブな女性×壮絶な復讐劇賞:「身代わりのあなたに花束を」
・勇者×ダークファンタジー賞:「ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~」
・恋愛リアリティショー×デスゲーム賞:「恋愛リアリティデスゲームショー〜脱出条件は真実の愛だけ〜」
・終末世界×ほのぼの賞:「お嬢様と『私』は、終末世界で釣りをする。~侵略宇宙人は調理法次第でそこそこ美味しい~」
・時間制限×頭脳バトル賞:「余命4時間〜あの日、きみはなぜ消えた?〜」
・同性バディ×クソデカ感情賞:「俺と邪龍の神成り物語」
サイコパス×ギャル賞、即席バディ×子育て賞、おっさん×無実の罪賞、中高年主人公×ロードノベル賞は該当作なし
「よしなにお頼み申す」は、どん底まで落とされた主人公が、新天地で出会った仲間と義賊として再起を図るという時代小説。実直な主人公をはじめ、彼の周囲に集まる魅力的なキャラクターたちと、軽快な文章でテンポ良く描かれるストーリーが評価された。
「お江戸 盗人懲悪帖」は、町人に扮した盗人たちが江戸を舞台に暗躍する物語。登場人物同士のやり取りが生き生きとしていただけでなく、各キャラクターの立ち位置がはっきりとしていて犯罪スペシャリスト集団としての個性が際立っていた。
「後宮書庫の記録係 ~腹黒監察官と文字に憑かれた下女~」は、洞察力に優れた主人公・漣が、腹黒監察官の公孫と手を組み、父の死の真相を追うという後宮ミステリー。ロジカルに描かれるミステリーパートに加えて、漣と公孫の間で繰り広げられる、個性的でテンポのよい対話劇が魅力的だった。
「珠珠は死者の想いを読む 毒杯の皇后が遺した後宮継承録」は、死者の影を見ることができる異能を持つ主人公が、皇后毒殺の犯人である皇帝を追い詰めるまでを描いた作品。主人公と彼女の才能を見出した皇弟のコミカルな掛け合いが楽しく、さらに名脇役たちとのエピソードも印象的だった。
「身代わりのあなたに花束を」は、実の家族から虐げられている公爵令嬢の主人公が、娼館を追い出された伯母と出会ったことで始まる壮大な復讐劇。キャラクターの心情描写が巧みで、影は薄いが芯の強い主人公と、不遇でも強さを失わない伯母に感情移入できる作品だった。
「ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~」は、勇者を騙る元盗賊の主人公が、行く先々で事件に巻き込まれ、少しずつ周囲に祭り上げられていくという勘違いファンタジー。バトル描写が多彩で、中でも手段を選ばず勝利にこだわる主人公の姿が、ダークな世界観に映えていた。
「恋愛リアリティデスゲームショー〜脱出条件は真実の愛だけ〜」は、恋愛リアリティショーという名目でデスゲームに参加させられた高校生たちが、生き残りをかけた頭脳戦を繰り広げる作品。丁寧な心情描写や、よく練られたゲームの設定によって生み出される駆け引きがリアルで、ラストまで引き込まれた。
「お嬢様と『私』は、終末世界で釣りをする。~侵略宇宙人は調理法次第でそこそこ美味しい~」は、無邪気なお嬢様と冷静なメイドロボが、宇宙人に滅ぼされた地球で桃源郷を目指して旅をするという物語。人類が滅んだあとの終末世界で繰り広げられる、二人のささやかで、温かくも切ない日常に癒される作品だった。
「余命4時間〜あの日、きみはなぜ消えた?〜」は、行方不明の少女を救うため、仲良し高校生グループが、何者かが仕組んだ命懸けのゲームに挑むという作品。登場人物の心情描写が巧みで、心理戦の中で生じる衝突や、それをきっかけに揺れる友情関係がありありと描かれていた。
「俺と邪龍の神成り物語」は、幼馴染を救うため生贄になった主人公と、手違いで彼に使役されることになった邪龍が織りなす救国ファンタジー。見た目は可愛い少女だが中身は豪快な邪龍と、とにかく真っ直ぐな主人によって展開される、勢いのあるストーリーが魅力的だった。
初めての試みとなった今大賞だが、難しいお題にも果敢に挑戦してくれ、さらに将来の漫画化・映像化を想起させる期待値の高い作品も見られ、非常に有意義だった。来年もまた、時流に合わせた複数テーマでの開催を予定している。メディアミックスを予感させる大作の誕生を期待したい。
なし
一糸報いて、幕は下りる
よしなにお頼み申す
濡れ衣を着せられて絶望のどん底まで落とされた主人公が仲間を得て再起していく、という物語の軸が、読み手に伝わりやすい形でありありと描かれていました。キャラクターたちが非常に魅力的な、完成度の高い作品だと感じます。
お江戸 盗人懲悪帖
表と裏の顔を持つ義賊たちが江戸を揺るがす陰謀に挑む姿が、軽快な文章で描かれていて、明るくからっとした読後感が味わえました。春二郎一味をはじめとした個性豊かなキャラクターたちの、陽気な掛け合いも魅力的です。
後宮書庫の記録係 ~腹黒監察官と文字に憑かれた下女~
隠された真実を「文字」から鮮やかに読み解く下女の漣と、一筋縄ではいかない監察官・公孫との間で繰り広げられる対話劇に、強く引き込まれました。またミステリーパートのロジックは緻密に組み立てられており、読み応えがあります。
珠珠は死者の想いを読む 毒杯の皇后が遺した後宮継承録
「影が見える」という主人公の特殊な設定が、ミステリーの謎解きに活きているのみならず、後宮モノのファンタジックな雰囲気とマッチしていました。登場人物たちが生き生きと描かれていて、珠珠と靖王のコミカルな掛け合いも魅力的です。
身代わりのあなたに花束を
冒頭からの引き込まれる展開の中で、魅力的なキャラクターたちに圧倒されました。特に、不遇ながらも強さを失わない伯母や芯の強いヒロインは、自然と応援したくなります。テンポがよく、最終話まであっという間でした。
ニセ勇者パーティ、はじめました ~名声を悪用するつもりが、本物より活躍している件について~
勇者を騙って甘い汁を吸おうとしつつも、巻き込まれた問題を泥臭く解決したり、どこか優しさを捨てきれなかったりする主人公に好感が持てます。仲間たちとのテンポの良い掛け合いも楽しく、臨場感のある戦闘描写も素晴らしい作品でした。
恋愛リアリティデスゲームショー〜脱出条件は真実の愛だけ〜
キャラクターやデスゲームの設定作りが繊細な、とても読み応えがある作品です。主人が秘密を抱えているという伏線や、まる実在するかのようなリアルな描写が魅力的で、どんどんと内容に引き込まれました。
【完結】お嬢様と『私』は、終末世界で釣りをする。~侵略宇宙人は調理法次第でそこそこ美味しい~
お嬢様とメイドロボの可愛らしい日常にほのぼのとさせられます。二人が協力する食料調達のシーンは個性的かつ印象的で、文明崩壊後の世界観に没頭できました。読み進めていて温かい気持ちになる作品です。
余命4時間〜あの日、きみはなぜ消えた?〜
ゲームを通して暴かれていく人間関係や、登場人物である高校生たちの繊細さ、そして彼らの葛藤が丁寧な描写で巧みに描かれていました。読み進めていく中で構成力の高さを感じる、非常に完成度の高い作品です。
俺と邪龍の神成り物語
生贄となった主人公が神龍ライとの出会いをきっかけに、国を救うための旅に出るというストーリーと、ユニークな世界観が魅力的です。ライを含めキャラクターたちが個性的で、テンポの良い掛け合いが楽しい作品でした。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。王太子の娘が実は亡くなった妹や母の生まれ変わりで――という展開から始まる王家への復讐劇が、見事に繰り広げられていました。ハラハラドキドキさせられる展開に、読者の皆様が引き込まれたのだろうと思います。高い人気も納得のとても素敵な作品でした。