第18回ファンタジー小説大賞
選考概要
前年を大きく上回る3248作品と、多くのエントリーが集まった第18回ファンタジー小説大賞。その中から一次選考を通過したのは58作。王道のスローライフや悪役令嬢ものから、人外転生や最近流行りのおっさんもの、あるいは一風変わった設定のローファンタジーまで多彩な方向性の作品が集まった。
さらに選考を重ね、編集部内で大賞候補としたのは、「婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!」「ヒロインは始まる前に退場していました」「皇帝の隠し子は精霊の愛し子~発覚した時にはすでに隣国で第二王子の妻となっていました~」「地味スキル《お片付け》は最強です!〜社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?〜」「獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。」「神々のダンジョン~チートスキル【アイテムボックス】と【鑑定】でアラフォーおっさんは成り上がる~」の6作品。
これらの候補作の中で、編集部内で最も高い評価を集めた「地味スキル《お片付け》は最強です!〜社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?〜」を大賞に決定。また、ポイント最多として読者賞に「婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!」が選出された。そしてテーマ別賞では、『癒し系ほっこり賞』に「獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。」、『キャラクター賞』に「皇帝の隠し子は精霊の愛し子~発覚した時にはすでに隣国で第二王子の妻となっていました~」、『おっさん賞』に「神々のダンジョン~チートスキル【アイテムボックス】と【鑑定】でアラフォーおっさんは成り上がる~」、『ヒロイン賞』に「ヒロインは始まる前に退場していました」を選出した。なお、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「地味スキル《お片付け》は最強です!〜社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?〜」は、前世が社畜OLの主人公が地味な整理整頓のスキルを駆使して、王国の問題を解決していくというストーリー。倉庫のお片付けから始まり、やがては王家の諸問題までを解決して成り上がっていくという展開が痛快だった。また、スキルの設定がよく練られており、それを活かしたイベントが多彩で、物語に引き込まれた。
「婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!」は、婚約破棄を言い渡された令嬢が前世の記憶を取り戻し、スキルを使って復讐していくという作品。ユニークなスキルを使った奇妙な牢獄生活と、その後の一風変わったざまぁ劇には驚かせられた。誰も予想できないような大胆な展開が魅力的だった。
「獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。」は、魔獣の世話係から解雇された主人公が、実は王国で唯一の魔獣の聖女だった……というお話。王道の追放展開から始まる物語の中で、相棒のドラゴンなど可愛らしい魔獣たちの存在感が光り、読んでいて癒やされる作品だった。
「皇帝の隠し子は精霊の愛し子~発覚した時にはすでに隣国で第二王子の妻となっていました~」は、精霊に囲まれて生活している少女が、気が付けば第二王子の妻になってしまうというシンデレラストーリー。安定の愛され展開だけではなく、要所でシリアスな王家の継承争いが展開されるという、オリジナリティ溢れる構成が評価された。
「神々のダンジョン~チートスキル【アイテムボックス】と【鑑定】でアラフォーおっさんは成り上がる~」は、現代日本で、氷河期世代のおっさんがダンジョンに挑戦するというお話。ダンジョンものではあるが、非常に穏やかな展開が続く。その中でも、ダンジョン産作物の売買など、主人公がビジネスに邁進するユニークな展開が光った。
「ヒロインは始まる前に退場していました」は、異世界に転生した幼い少女が、心優しき獣人に拾われて成長していくという、ほのぼの冒険譚。主人公の成長とともに広がっていく世界観に引き込まれた。同時に、とにかく天真爛漫な主人公にほっこりさせられる作品だった。
また、上記以外にも、是非出版化を進めたい、あるいは出版化の道を探りたい魅力のある作品については、編集部で改めて検討し、個別にオファーあるいは出版化への挑戦の打診をしていきたい。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。引きこもりという奇想天外なスキルが非常に魅力的で、牢獄を天国のような、快適空間へと変えた場面には思わず笑いがこぼれました。文明の利器を使い、主人公が軽快に無双する姿が読者の皆様に爽快感を与えたのだろうと思います。高い人気もうなずける素晴らしい作品でした。
主人公相棒のドラゴンをはじめ、キャラクターがどれも魅力的で、物語が進むほどに世界観の厚みが増していきました。セリフの応酬も軽快で、会話を重ねるたびにキャラクターの個性が際立ち、物語に引き込まれました。さらに、設定も練りこまれており、文章も大変読みやすかったです。
皇帝の隠し子は精霊の愛し子~発覚した時にはすでに隣国で第二王子の妻となっていました~
多くの精霊に愛される主人公リタの穏やかな暮らしが魅力的な作品でした。読んでいて、リタと個性豊かな精霊たちの楽しげな会話に癒されます。また、皇帝サイドで描かれる、様々な思惑が絡まる物語には読み応えがあり、緩急のあるストーリー展開も見事でした。
神々のダンジョン~チートスキル【アイテムボックス】と【鑑定】でアラフォーおっさんは成り上がる~
氷河期世代しか潜れない現代ダンジョンというオリジナリティのある設定が目を引く作品でした。主人公がダンジョンで得たスキルをビジネスに生かし、成り上がっていく様が爽快で、共感する読者も多かったのではないでしょうか。テンポよく展開されるストーリーラインも魅力的です。
ヒロインは始まる前に退場していました
可愛らしい主人公をはじめとして、獣人のお父さんに学び舎、冒険者の面々など、キャラクターたちが個性豊かでとても素敵です。ほのぼのとした主人公の冒険も魅力的でしたが、ただゆるいだけではなく、設定の作り込みも伝わってきて、読み応えのある作品でした。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
貧乏貴族の娘に転生したOLが、前世のSE知識と「整理整頓」という現実味のあるスキルを生かして、王家の開かずの倉庫から国に根付く不正にいたるまでテンポよく「整理」していく様にわくわくしました。また、頻出するユーモラスな社畜ネタや、騎士団長レオンとのじれったい恋模様など、多彩な魅力が詰まった作品だと思います。