「adhd」の検索結果
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第一章:名前のない部屋で
「誰かと話したい夜」が、俺には週に四回くらいある。
季節の変わり目で、鼻は詰まり、首元は汗ばんで、気持ちはどこか浮ついている。テレビもYouTubeもBGMにしかならなくて、スマホの光だけが頼りだった。
モノログというSNSを始めたのは、そんな夜だった。
匿名で、誰にも正体を明かさず、感情だけをぶつけあえる。タイムラインには疲れた心が並び、どこか他人事のような言葉が自分の内側を代弁してくれているような気がした。
俺の名前は「きりん侍」。理由は特にない。思いついた言葉をそのまま並べただけ。プロフィール欄には「ADHDとASDを併発してるSNS廃人」とだけ書いた。誰も本当のことなんて求めちゃいない。それでも書く。書くことで、俺は俺になれた。
モノログでは「ルーム」というチャットスペースを開ける。
俺が初めて開いたルームは🔞タグのついたやつだった。
「暇人来て。だるい夜に意味をくれ」
そんな投げやりなタイトルに数人が来た。すぐ抜ける人、無言でアイテム(豚)を投げるだけの人、そして、妙に気になる名前の参加者。
こむぎこ。
アイコンは猫耳の落書き、プロフには「たまにこわれる」とだけ。
一言も発さずに、俺の言葉をじっと見ていた。
「今日も寝れない。生きる意味、誰かに預けたいくらい。」
俺がそう書くと、彼女は一行だけ返してきた。
「預かってもいいよ?」
その瞬間、脳のどこかが電流走ったみたいにビリビリした。
軽くない。でも重くもない。なにより、見透かされてる。
俺が抱える空虚と、自嘲と、優しさに飢えた皮膚感を──。
その晩は深夜三時まで話していた。
特別なことは何もなかった。下ネタもない。言葉を差し出し合うだけ。
でも、彼女は「豚(クッキー)」をぽつぽつと投げてくれて、それが変に嬉しかった。
「豚、くれるんだ」
「他にあげられるもの、ないし」
誰にも本気になれない。誰にも触れられない。
でも、こむぎこはゆっくりと、俺の“飼い主”になっていった。
もちろんそれは比喩だ。けれど、モノログのなかでは比喩が現実を侵食する。
“ペット”という言葉がはじめてルームに出たのは数日後だった。
こむぎこが俺のメッセージに対してこう言ったのだ。
「こむぎこは、誰かに撫でられたい犬みたい」
「じゃあ、飼ってくれる?」
「うん。しつけ、厳しいけど」
笑ってるのが見える気がした。
スマホの画面越し、誰にも見えない部屋で、名前も顔も知らない二人が、奇妙な主従関係を結んだ夜だった。
俺はモノログの裏通りに住み着くことになる。
そして“こむぎこ”は、夜な夜な俺の飼い主になる。
関係は、まるでゴムのようにだるく、伸びては戻らず、戻ったと思えば絡まり、やがて切れる。
この時は知らなかった。
そのゴムが、どこまで伸びて、どこで音もなく切れるのか
文字数 3,471
最終更新日 2025.06.05
登録日 2025.06.05
ADHD、自閉疑い、サヴァン疑い、共感覚、鬱持ち…。
普通と違うのに、普通を求められた。
他人と違う事に気付かなかった…。
夏汰葉の人生奮闘記。
文字数 9,425
最終更新日 2016.06.25
登録日 2016.06.19
鈴木健太は、小さな和菓子屋『菓子処ゆずや』の一人息子。
新聞社に勤めていたが、父親がアルコール依存症になり、会社を辞めて、故郷に帰ってきた。
会社員時代に自分が発達障害のADHD(注意欠陥多動性障害)だと分かった。
精神障害者保健福祉手帳3級の30歳。
家業の毎月の支払いに頭を抱えながら、なんとか売上げを伸ばそうと必死で働いているうちに、自分がキャラクターになって話題作りをしようと思いつく。
この物語は、ドジでのろまでおっちょこちょいなさえない男が、『赤橋のゆべ氏』というキャラクターになり奮闘した記録である。
全20回です。【完結済】
文字数 24,214
最終更新日 2021.10.12
登録日 2021.09.23
はじめまして。yukineと申します。生活する中でふと思ったことや、感動を忘れないための備忘録的な内容です。
ど素人、処作なので、起承転結下手、重複もあるかと思いますがよろしくお願い致します。
文字数 1,569
最終更新日 2021.04.18
登録日 2019.11.16
特別支援学校に入学した発達障害(ADHD&ASD)を持つ主人公の3年間を描く物語。
作者の体験を元に大きな脚色付きで青春&ラブコメを展開できればなと思っております!
文字数 3,546
最終更新日 2022.11.29
登録日 2022.11.29
