第18回恋愛小説大賞
選考概要
全2,575作品が集まった第18回恋愛小説大賞。その中から一次選考を通過したのは60作品(奨励賞受賞作品参照)。
その後、編集部内で最終選考において大賞候補としたのは、「【R-18】もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜」「人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない」「エリザベートが消した愛」「王命って何ですか?」「公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~」「【完結】だからその手を離して〜再会した幼馴染CEOは忘れたいのに忘れさせてくれません!〜」「【R18】これから夫は聖女様を愛する予定です」「奥さん、俺にしときませんか。」の8作品。
これらの候補作の中で、毒殺され死に戻りから始まる溺愛ストーリーを描き、編集部内で最も高く評価された「【R-18】もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜」を大賞に選出。
また、次点としてそれぞれ個性に秀でていた「人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない」「エリザベートが消した愛」「王命って何ですか?」の3作品を優秀賞に選出し、次いで評価の高かった「公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~」を特別賞に選出した。
さらにテーマ別賞として、「【完結】だからその手を離して〜再会した幼馴染CEOは忘れたいのに忘れさせてくれません!〜」にエタニティ賞、「【R18】これから夫は聖女様を愛する予定です」にノーチェ賞、「奥さん、俺にしときませんか。」に今回新設された濃蜜ラブ賞を授与。
また一次選考通過作品のうち、授賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「【R-18】もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻りの人生は別の誰かと~」は、夫の愛人に毒を盛ろうとしたが逆に毒殺されてしまったヒロインが、夫と出会う前まで死に戻るという序盤から惹き込まれるストーリー。愛し合っていたはずの夫から裏切られた一度目の人生を繰り返さないよう画策するものの、夫への愛情が捨てきれずに葛藤するヒロインの姿が切なく、その後の展開にも驚かされた。
「人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない」は、夫の不貞により、婚約時に結んだ呪いでヒロインが本当に人形になってしまうというユニークな設定の物語。次々と事件が起こるミステリー的展開には勢いがあり、テンポの良い文章とマッチしていた。
「エリザベートが消した愛」は、亡くなった母親の遺言によって孤立を余儀なくされたヒロインの成長譚。孤独だったヒロインがだんだんと前へ進んでいく描写が晴れやかで、先へ先へと読み進めたくなる魅力にあふれていた。
「王命って何ですか?」は、ヒロインが王家を相手に裁判を起こすインパクトのあるストーリー。裁判を通して嫁ぎ先の侯爵家を断罪するだけでなく、王命を出した王自身を失脚させ、王太子と結ばれるという結末には爽快感があった。
「公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~」は、前世の記憶を取り戻したヒロインが、家族や侍女たちに虐げられている現状を回避しようとする話。両親との関係や恋愛模様がどうなっていくのか、今後の展開に期待が高まる。
「【完結】だからその手を離して〜再会した幼馴染CEOは忘れたいのに忘れさせてくれません!〜」は、ヒロインを取り巻く三角関係が展開されるラブロマンス。幼馴染とのすれ違いの様子や一筋縄ではいかない恋愛模様にもどかしくも、先の展開が待ち遠しく感じられた。
「【R18】これから夫は聖女様を愛する予定です」は、明るく可愛らしいヒロインの語りが魅力的な作品。コミカルなやり取りが展開される一方、色っぽいシーンも充実しており満足感を得られた。
「奥さん、俺にしときませんか。」は、DVに苦しむサレ妻ヒロインが、夫に嵌められ会社の後輩と寝ることになってしまうスリリングなストーリー。実はハイスペックだった後輩との濃厚な性描写シーンは、まさに「濃蜜ラブ」のテーマと合致していた。
ここであげた候補作のほかにも、出版の可能性を感じる作品が数多くあった。編集部で検討し、個別にオファー、あるいは出版化への挑戦を打診していきたい 。
今年は全体的にオリジナリティあふれる設定や魅力を持った作品が多く、作風の幅が広がる結果となった。一方、選考を行う中で、圧倒的な人気と面白さで王道を行く恋愛小説が少なかったという声も上がった。新たなヒット作へのポテンシャルを歓迎しつつ、次回以降は心揺さぶる王道の恋愛大作を期待したい。
【R-18】もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
私のバラ色ではない人生
ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。凛とした強さを持つヒロインが実に生き生きと描写されており、その鋭いツッコミは小気味よく感じられました。物語全体の推進力が読者の心を捉え、多くの支持を集めたのでしょう。
人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない
人形になった主人公が謎を追う、という展開のオリジナリティが非常に印象的で、斬新な世界観に冒頭から引き込まれました。主人公を取り巻くキャラクター達も皆個性豊かで魅力的で、彼らの抱える想いと事件が交差していく展開に、最後まで目が離せない作品だと感じました。
エリザベートが消した愛
ミステリアスで独自的な設定を用いつつエリザベートの感情が向かう先を丁寧に描いた作品でした。人気である、夫へのざまあ描写などもありつつ、孤独だったエリザベートがだんだんと前へ進んでいく描写が晴れやかで先へ先へと読み進めたくなる魅力にあふれていました。
王命って何ですか?
王家を相手に裁判を起こすヒロインという、インパクトのある設定がとても魅力的に描かれており、序盤から物語の世界観に引き込まれました。嫁ぎ先である侯爵家の断罪や国王の失脚など、次々に展開されるざまぁも爽快感があり、一気に読み進められる作品でした。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
前世の記憶を取り戻した主人公が小説の結末を思い出し、なんとか回避しようとする意志の強さや家族の仲が少しずつ良くなっていく場面は思わず応援したくなる魅力がありました。これからの展開がどうなっていくのか、ますます知りたくなる作品でした。
【完結】だからその手を離して〜再会した幼馴染CEOは忘れたいのに忘れさせてくれません!〜
初恋を引きずるヒロインの凪沙、ハイスペに成長した幼馴染の一哉、優しく凪沙を支える衛の三角関係に惹き込まれました。三人が織り成す複雑な恋愛模様が魅力的で先の展開がとても待ち遠しく感じられる作品でした。
【R18】これから夫は聖女様を愛する予定です
かわいさと明るさをあわせ持つ主人公レアセルがとても魅力的な作品でした。コミカルなセリフのかけあいがおもしろいのはもちろんのこと、異世界TL小説らしい色っぽいシーンも充実しており、ドキドキしました。
奥さん、俺にしときませんか。
DVに苦しむサレ妻が本気で愛されるスリリングなストーリーで、様々な角度から読者を惹きつける作品でした。ギャップある絶倫ハイスペヒーローが魅力的で、快楽に堕ちていくヒロインの心情描写も切なく巧みでした。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
自分を裏切った夫に出会う前までヒロインが死に戻るという設定を活かした見事な展開に驚かされました。また、一度目の人生では裏切られたと頭では理解しつつも、夫への愛情を捨て去ることのできないヒロインの切ない恋心と葛藤が丁寧に描かれており、タイムリープという人気の設定に高い文章力が合わさった、最後まで目の離せない魅力的な作品でした。