『勇者リリアと記憶の王都ミルフェリア』Eden Force Stories Ⅲ(第三部)

王都ミルフェリア──祈りと祝福が集うはずの都は、今や〈甘味の魔物〉に蝕まれつつあった。
人々の“幸福な記憶”だけをそっと奪うその存在は、笑顔を残したまま心だけを空洞に変えていく。
第二結界《バラード地区》が揺らぎ、封印の守護者が目覚めたとき、そこに立っていたのはかつてリリアに剣を学んだ“弟子”だった。

「どうして、帰ってこなかったのですか。師匠。」

その言葉は、刃より深く胸を刺す。

セラフィーは真実を言えないまま唇を閉ざし、
ワン太は沈黙のまま、ただ“見ている”。
颯太は「自分」と「リリア」のあいだで揺れながら、戦いに身を投じる。

そして、激闘の最中──リリアの魂が“目を開く”。
世界がその震えを受け取った瞬間、颯太は突如【現代】へ戻されてしまう。

元の部屋。スマホの光。
何も知らない日常の中で、それでも胸の奥には残っている。
あの小さな声と甘いぬくもり。

『ねぇ、これ……心があったかくなる味なんだよ』

忘れられるはずがない。

颯太は選ぶ。
逃げるか。
忘れるか。
それとも──自分の意志でもう一度、あの世界へ戻るか。
24h.ポイント 214pt
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