『49歳の亡命 〜子供部屋からの脱出〜』

『49歳の亡命 ~子供部屋からの脱出~』

天井の木目は、僕の履歴書だ
四十九年分、数え切れないほどの後悔を
じっと見守ってきたシミの列
窓の外の季節は、いつもスクリーン越しの映画だった

「あなたのため」という名の銀の鎖が
僕の年金を、僕の未来を、音もなく削り取る
母の台所から漂う 煮物の匂いは
安心という名の 甘い毒ガス

通帳の数字は、僕が外へ出るための酸素
奪われていたのは お金じゃなく
「自分で選ぶ」という 一呼吸の重さだ

勇気なんて、大層なものじゃない
ただ、この古い靴の紐を結び直し
家の敷居という 国境線を越えるだけ

四十九歳の亡命
パスポートは、震える手で握った印鑑ひとつ
僕は今日、僕自身の領土を
取り戻しにいく

昨日までの死にたかった自分を
子供部屋の幽霊として置いてきた
五十歳の朝に、初めての他人として出会うために

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