第13回BL大賞

第13回BL大賞

選考概要

今回で13回目となるBL大賞は、昨年同様「小説部門」「漫画部門」の同時開催となった。

まず、全2,967作品が集まった小説部門。その中から一次選考を通過したのは73作品(奨励賞受賞作品参照)。
その後、最終選考において大賞候補としたのは、「婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として⽣きます!」「そばかす⽷⽬はのんびりしたい」「⾝代わりの伯爵令息は冷徹公爵の寵愛を得る」「婚約破棄を⾔い渡した王⼦は悪役令嬢の兄に執着される」「【完結】畑暮らしのΩ王子、20年越しに“番”が現れました」「王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)」「抱かれたい男No.1だけど抱かれたい」「【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました」「悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです」「悪役令嬢の子」の10作品。

これらの候補作の中で、婚約破棄をした王子が主人公となるストーリーを巧みに描き、編集部内で最も高く評価された「婚約破棄を⾔い渡した王⼦は悪役令嬢の兄に執着される」を大賞に選出。
さらにテーマ別賞として、ファンタジーBL賞に「【完結】畑暮らしのΩ王子、20年越しに“番”が現れました」「婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として⽣きます!」、学園BL賞に「王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)」、異世界転生・転移BL賞に「悪役令嬢の子」、現代BL賞に「【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました」を授与。今回新設された濃密BL賞には「抱かれたい男No.1だけど抱かれたい」を選出した。
なお、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「婚約破棄を言い渡した王子は悪役令嬢の兄に執着される」は、主人公が婚約破棄を言い渡した瞬間、前世の記憶を取り戻すというユニークな導入から始まるストーリー。心を入れ替えた主人公が、攻めである悪役令嬢の兄に監視されながらも徐々に距離を縮めていく展開は、先へ先へと読み進めたくなる魅力にあふれていた。

「【完結】畑暮らしのΩ王子、20年越しに“番”が現れました」は、運命を失い恋愛を諦めた主人公のもとに、一通の手紙が届くところから始まる物語。オメガバース作品特有の設定を最大に生かしたストーリー展開はクオリティが高く、編集部内から支持を集めた。

「婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として⽣きます!」は、婚約破棄され心に傷を負った主人公が、療養のため移り住んだ隣国の王太子に溺愛される話。主人公が薬師の令息という設定は目新しく、キャラクター設定の独自性が高く評価された。

「王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)」は、王家の影一族に転生した並外れた魔力を持つ主人公の成長譚。優しい家族に囲まれてすくすくと育つ主人公が微笑ましく、巧みなキャラクター描写がテンポの良い文章とマッチしていた。

「悪役令嬢の子」は、RPGゲームの悪役令嬢の子どもに転生した令息が主人公という、タイトル・内容ともに今までにない斬新な設定の作品。一筋縄ではいかない従者とゆっくり仲を深めていく様子は、もどかしくも先の展開が待ち遠しく感じられた。

「【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました」は、アルファにトラウマのあるオメガ主人公と、オメガが嫌いなアルファのラブロマンス。不干渉を条件とした番関係が徐々に綻んでいく、巧みなストーリー構成が魅力的だった。

「抱かれたい男No.1だけど抱かれたい」は、端正な顔立ちと恵まれた体格を持った主人公が、一夜限りの関係だと思っていた攻めから逃げ出すところから始まる物語。体格のいい二人の濃厚な性描写シーンは、まさに「濃密BL」のテーマと合致していた。

ここであげた候補作のほかにも、出版の可能性を感じる魅力的な作品が数多くあった。編集部で検討し、個別にオファー、あるいは出版化への挑戦を打診していきたい。


次に、漫画部門に応募されたのは198作品。その中から、一次選考を通過したのは8作品

これらの候補作の中で、高い画力と構成力に加え、今後の飛躍を強く期待させる作家性が評価され、編集部内で最も多くの支持を集めた『アザミの棘は愛をつらぬく』が大賞に決定。さらにテーマ別賞として、異世界・ファンタジー賞に「ここからは××ルートです!?(※強制)」、現代BL賞に「CICADA2025」「誰より君が」の2作品を選出した。なお、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「アザミの棘は愛をつらぬく」は、家族を守るため身を売って生きてきた少年がとある老紳士と出会うことで愛を知る話。安定した画力と構成力、臨場感のある演出が高い評価を得た。題材はややニッチだが、作家性が強く出ている作品で、読者から強く支持される個性を備えている。

「ここからは××ルートです!?(※強制)」は、魔術学園を舞台にした主人公総受けラブコメBL作品。キャッチーな設定とテンポの良いギャグ展開が印象的で、ファンタジーの世界観もしっかり描写できていることから異世界・ファンタジー賞に相応しい作品であると評された。

「CICADA2025」は、No.1を争うホスト同士が、泥酔したライバルを介抱したことがきっかけで関係が変化していくストーリー。流行を押さえたキャラクターデザインと、エロティックな表現への強い意欲が感じられる作品で、現代BL賞に相応しい作品として選出された。

「誰より君が」は、高校生同士のピュアな恋愛模様を描いた学生BL作品。王道の青春BLとして安定感があり、基礎力の高さを感じる作品。また、一つの作品を最後まで描ききる継続力やストーリー構成力も高く評価され、現代BL賞に選出。

本コンテストは、昨年より漫画大賞からBL部門を独立させ、BL小説との合同開催として今回で2回目の実施となった。昨年に引き続き応募作それぞれに強い個性と作家の想いが感じられ、異世界ファンタジー、現代BLともに粒ぞろいだった。次回も、より多くの才能と出会い、本コンテストから新たな作家・作品が生まれていくことを期待したい。

開催概要はこちら
応募総数 3,165作品 開催期間 2025年11月01日〜末日

編集部より

主人公が婚約破棄をするというユニークな導入に始まり、それぞれのキャラクターたちの心情が丁寧かつ巧みに描き上げられており、大変惹き込まれました。特に、主人公が自分の過去を見つめ返すシーンやヒーローが抱く主人公への想いはとても繊細で、一つ一つの設定がしっかりと工夫して描かれた作品でした。


編集部より

ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。オリジナリティあふれる世界観や魅力的なキャラクターを前提に、誠実で丁寧な話運びが読者の心を捉え、多くの支持を集めたのでしょう。


編集部より

運命を失い恋愛を諦めた主人公のもとに、一通の手紙が来たことで20年ぶりの恋愛が始まる、という展開に冒頭から惹き込まれました。オメガの恋愛模様や、アルファの執着愛の強さなどが巧みに描かれていて、ファンタジーBL・オメガバースBLとしてとても魅力的な作品でした。


編集部より

婚約破棄から始まるテンポのいいストーリー展開と、薬師の令息という目新しい設定が魅力的な作品でした。周囲を取り巻く人々の温かさで、大変な目に遭った主人公が心の傷を癒していく様子は安心して見守ることができ、先へ先へと読み進めたくなる魅力にあふれていました。


編集部より

キャラ描写とストーリー展開が巧みで、主人公が活躍するさまも爽快な作品でした。王家の影一族に転生した並外れた魔力を持つ主人公がすくすく育っていく様子が微笑ましく、主人公たちの成長をずっと見守っていたいと思わせる作品でした。

悪役令嬢の子

205位 / 3,165件

編集部より

主人公が悪役令嬢の子ども、という今までにないような斬新な設定が魅力的でした。また従者が一筋縄ではいかない魅力的なキャラクターで、二人がゆっくりと仲を深めていく様子も丁寧に描かれ、最後まで目が離せない作品だと感じました。


編集部より

契約的な番関係で互いに干渉しないはずが、不可抗力で触れ合わざるを得なくなる。という序盤の流れから始まる二人の丁寧な恋愛ストーリーは、オメガバースBLとしてとても魅力的でした。


編集部より

ドラマチックな冒頭のつかみの上手さ、テンポのよさ、そしてキャラクターたちの魅力、どれをとっても大変魅力的な作品でした。受けが攻めの前で見せる可愛らしさにも惹き込まれました。


編集部より

身体表現やキャラクターの描き分けが非常に巧みで、高い画力・表現力をお持ちであることが窺えます。ストーリー構成の他、背景などを含めた描写も非常に秀逸で、ファンタジーBLへの理解度の高さが随所に感じられました。“イヴァーシュカ”をやめる決意をした主人公が恩人・ロニと再会できるのか、再会したのち二人の関係性はどうなっていくのか、期待が高まります。一方で、やや情報過多に感じられる場面もあるため、情報量を整理し読者に分かりやすく伝えることを意識していくと、さらに多くの読者に届く物語になりそうです。

勇者と魔術師

45位 / 3,165件

編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定しました。スチームパンク要素を含んだハイファンタジー世界観の中で、バトルアクションとBL要素を組み合わせた構成が目を惹きます。冒険を重ねる中で冒険者としても、個人としても信頼や関係性を築いていく二人の様子が読者にも支持されたのでしょう。


編集部より

今っぽい絵柄、分かりやすいフリとオチが心地よく、作品全体に勢いのある魅力的な作品でした。各キャラクターが個性豊かに、男女問わず丁寧に描かれている点は大きな強みです。うっかり惚れ薬を頭から被ってしまった主人公にこれから訪れるであろう受難の数々が非常に楽しみです。少し身体表現に固さが見られる箇所があるため、身体や表情の描写の幅を広げ、キャラクターの魅力をさらに引き出すことができれば、さらに活躍の場が広がりそうです。

CICADA2025

858位 / 3,165件

編集部より

No.1ホストの座を争うキャラクターという設定に沿った、美男子の描写や官能的な演出に光るものがあり、特に発情シーンの表現力は印象的でした。ファンタジー展開も絡む本作はややダークな世界観を感じる箇所もあり、今後の展開に期待が持てます。セリフ量やコマ数がやや多く感じた点があり、情報量の精査に課題は残るものの、読者に刺さるビジュアルを描ける点は大きな武器であり、経験を積むことで確実に伸びていく作家さんだと高く評価されました。

誰より君が

72位 / 3,165件

編集部より

ほんわかとした作風と読みやすいコマ割りが好印象でした。高校生同士の王道の青春BLで、友達から告白された主人公が徐々に相手を意識していく様子が丁寧に描かれることで、二人の心情や関係性の変化に説得力がありました。絵柄やテーマが王道ゆえ、やや懐かしさを感じる箇所もありますが、そこに何か1つ突出した要素を足すなど、強みに変えることもできるかと思います。地力のある作家さんだからこそ、次の一歩に期待しています。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

奨励賞

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