世界は稀に奇跡を見る

 一家が空き巣犯に襲われる事件が起きた。そんな中、運良く一人だけ助かった少年・広翔は、叔父夫婦に引き取られていた。子供のいない叔父夫婦は広翔を可愛がった。
 高校にも通い、何不自由なく過ごしていた。


 保健委員になった広翔だったが、ある事がきっかけで倒れてしまう。


 保健委員として活動し始める広翔。
 保健室の周りにある花壇に水をやるのが、その日の彼の主な業務となっていた。
 水をやっていると、保健室から音がした。
 見知らぬ顔で、会ったことも無い女子生徒がカーテンの隙間から覗いていた。


 女子生徒は広翔と目が合うと、ボードを取り出した。
『声が出せません』
 ボードには、そう書かれていた。
 女子生徒は澄香と名乗った。


 澄香と会う機会が増え、勝手にだべり相手にされていた。だべりと言っても、筆談だが。
 別に苦ではなかった。
 むしろ、居心地の良ささえ感じていた。


 一緒に過ごすほど、少し、気になることが出てくる。
 澄香はちょこちょこいない日があった。会うのは多くて一週間に四回で、毎日会うことは決してなかった。
 その理由を尋ねても、
『内緒』
 とはぐらかされた。
 また、彼女はいつも淡い色のサングラスをかけていた。


 そんな日常が、ある日、急に終わった。


 澄香が、突然居なくなったのだ。



 そんな時、広翔はある事実を知る。



 声が出なくなったきっかけを作った事件、サングラスをかける理由。それらは全て、広翔の記憶の中に答えがあった。


 開かなかった記憶の扉が、身近な人物たちによって開けられていく。


 
 人間の情が絡み合う、複雑で悲しい因縁を紐解いていく。
 記憶を閉じ込めた者と、記憶を糧に生きた者が織り成す物語。
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