『妹を選んだ男』

『妹を選んだ男』

あなたは
妹を選んだのではない

光を選んだのだ

冬の庭に咲いた
まだ傷を知らない
柔らかな花のほうを

---

わたしは知っている

あなたが欲しかったのは
若さではない

あなたが欲しかったのは

あなたを
無条件に
「すごい」と言ってくれる
鏡だった

---

わたしは
その鏡であることに
長く慣れすぎた

「お姉ちゃんなんだから」
その言葉で磨かれ
曇らぬように
ひび割れぬように
自分を削ってきた

けれど

鏡は
光を返すたびに
自分の輪郭を失っていく

---

あなたが
妹の笑い声を追うたび

わたしの中の
静かな湖が
ひとつ
凍っていった

パリン

という音は
外には聞こえなかった

わたしの胸の中でだけ
氷が割れた

---

ねえ

わたしは
あなたに選ばれなくても
存在していい

あなたの視線の
延長線上にいなくても

呼吸して
働いて
春の匂いを嗅いで

それだけで
いい

---

あなたは
楽なほうを選んだ

わたしは
自由なほうを選ぶ

どちらが
賢いかは
もう
どうでもいい

---

春が来る

白梅は
誰にも見られなくても
咲く

わたしも

誰の姉でも
誰の鏡でもない

わたしとして
咲く

それだけの話だ

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