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夏の終わり、高校前のバス停で出会った、グレイズヘアの男性。
優しい香りをまとったその人は、進路相談室の佐々木先生だった。
言葉少なめだった「私」は、先生との静かな交流を重ねるうちに、いつしかその人の香りや仕草、温かな眼差しを特別なものとして記憶するようになる。
季節は巡り、高校最後の秋。
進路も決まり、もう先生を訪ねる理由はない。
それでも、秋の深まりを告げる香りがすると、あの日々を思い出す。
これは、秋の香りとともに心に残った、ひとつの思い出の物語。
文字数 2,267
最終更新日 2026.09.03
登録日 2026.09.03
一人息子を交通事故で失った母・由紀は、深い喪失の底に沈んだまま、立ち直れずにいた。
仕事を辞め、家に閉じこもる彼女を支えるのは、薬剤師である姉・日奈子だけだった。
息子の死を境に、夫婦の関係は静かに、しかし確実に崩れていった。
そんな由紀のもとへ、日奈子が古くから伝わる黒い秘薬——「白腹イモリの黒グスリ」を持ってきた。
死者と会話できるという言い伝えを持ち、死で引き裂かれた親子を再び引き合わせるとも言われる薬。使い方を誤れば、それは強力な毒となる。
八月十三日。
由紀の前に亡くなった息子・新が現れる。
一方、夫の孝仁にはその姿が見えていないようだった。黒グスリの存在を知った孝仁は、由紀に薬を求める。
由紀の前に現れた新は、本当に死者として帰ってきたのか。
孝仁は何を隠しているのか。
三袋渡された黒グスリのうち、残る一袋はどこにあるのか。
喪失を抱えた家族のすれ違いと、死者との再会を約束する秘薬の謎が交錯する、怪異ミステリー。
文字数 6,796
最終更新日 2026.08.24
登録日 2026.08.23
感情を掬い取る女
――感情や周囲の刺激を敏感に感じ取ってしまう気質。
人の表情や声、わずかな仕草から感情を敏感に感じ取ってしまう女。
人と接するだけで疲れ、眠れない夜を繰り返していた。
そんな彼女が、いつからか向かいの家で飼われている犬の感情まで感じるようになる。
毎日17時半になると鳴く犬。
週末、家族が出かけるたびに「置いていかないで」と叫ぶ犬。
それは、ただの鳴き声だと思っていた。
けれど、ある朝。
彼女は、自分の身体ではない感覚を感じ始める。
人の感情を感じ取ってしまう女が、最後に受け取ったものとは――。
文字数 2,177
最終更新日 2026.08.14
登録日 2026.08.13
文字数 4,814
最終更新日 2026.08.07
登録日 2026.08.07
文字数 2,982
最終更新日 2026.06.09
登録日 2026.06.09
文字数 3,309
最終更新日 2026.02.28
登録日 2026.02.28
2013年春。高校1年生・橘佳織は親友・早川麗華と映画の待ち合わせに向かう途中、モールの薄暗い通路で忽然と消えた。
防犯カメラに映ったのは、激しい白いノイズだけ。
佳織の姿は跡形もなく消え、残ったのは不自然に切れたハートのキーホルダー。
二分後、待ち合わせ場所には現れなかった。
最後に一緒にいた先輩・柳沢洋介は濡れ衣を着せられ、事件は未解決のまま闇に沈む。
佳織は本当に消えたのか?
あのノイズは何だったのか?
誰かが今も、彼女の帰りを待ち続けている。
『待つ女』
――彼女が戻ってくるのを、誰かがまだ待っている。
文字数 12,005
最終更新日 2026.02.02
登録日 2026.01.26
あらすじ
1979年夏、東京下町。
夜遅くまで残業した隼人は、妊娠九か月の妻・瞳のために出産準備品を抱えて帰宅する。昼に受けた瞳の親友からの電話に背中を押され、「待っている人がいる」という思いだけを支えに家路を急いでいた。
しかし、いつもならすぐ開くはずの玄関は静まり返り、鍵は掛かっていない。中に足を踏み入れた瞬間、隼人は鉄と体液の匂いが混じる異様な空気に包まれる。乱れた靴、転がるスリッパ、そしてどこにも感じられない瞳の気配。
夏の夜には不自然な冷気が、闇に沈んだ室内から滲み出していた。
隼人は、日常が音もなく崩れ落ちたことを悟り、取り返しのつかない異変の始まりに立たされる。
文字数 10,443
最終更新日 2026.01.24
登録日 2026.01.22
文字数 5,138
最終更新日 2026.01.22
登録日 2026.01.21
文字数 777
最終更新日 2026.01.20
登録日 2026.01.20
※本作には、モラルハラスメント、毒親による心理的虐待、不倫、妊娠出産にまつわる心身の不調、家庭内での孤立など、センシティブなテーマが含まれています。
現実に重なる読者様にとって、精神的負担となる可能性がございます。ご無理のない範囲でお読みください。
「もう若くない」「帝王切開なんて甘え」「病気の嫁なんて聞いてない」
義母と夫の言葉は、文子の“母”のそれとそっくりだった。
卵巣の病気、40代での初産、誰も寄り添わない産前産後。
でも、文子はただ耐えるだけの女じゃなかった。
静かに日記を綴り、メールを保管し、義母の無神経さと夫の不倫を記録する。
「耐えることは、美徳ではない。ただ、生き抜くための準備だ」
そして、出産を終えた文子は消息を絶ち──一年後、弁護士から届く一通の手紙。
これは、誰にも気づかれず傷を抱えてきたひとりの女性が、
“自分の人生を取り戻す”ために準備し続けた物語。
文字数 3,478
最終更新日 2025.05.28
登録日 2025.05.28
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