夜凪蒼

夜凪蒼

夜凪蒼です。悪役令嬢の物語を書いています。破滅フラグも、政略結婚も、ちょっと笑えてちゃんと泣ける話も、シリアス展開も全部好き。今日もどこかの令嬢の運命を、一緒に変えにいきましょう。
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『拝啓 セシリア・ヴァルモント様。第37回・王立親睦茶会へのご参加を、心よりお慶び申し上げます』  便箋を裏返す。 『※本茶会は、会場内のご参加者が一名になるまで終了いたしません』  ……ん?  王家主催の由緒正しい親睦茶会は、その実、令嬢32人の潰し合いだった。最後の一人になるまで、誰も帰れない。負けても命は取られない。取られるのは家名のほうだ。辞退も同じ値段。武具の持ち込みは、おひとりさま3点まで。  剣術・可。体術・可。魔法実技・不可。実技オール最下位の悪役令嬢セシリアに、勝ち目は1ミリもない。単勝180倍。何分で脱落するかの賭けも立っていて、本命は2分。  だから彼女はトランクに、刃物でも杖でもないものを詰めた。紅茶の缶と、アルコールランプと、ティーセット一式を。 「武具は3点まで。武具以外については、一行も書いていないもの」  硝子張りの庭の隅、園丁小屋にこもって湯を沸かす。すると追い詰められた令嬢が、一人、また一人と匂いに引き寄せられてくる。誰も倒れない場所が、殴り合いの真ん中に、勝手にできていく。  最初の客は、単勝1.1倍の最強令嬢だった。彼女は一口も飲まずに去り、扉の閂だけを折っていった。それなのに何日かのちの夜、閉まらなくなった扉の外に、板越しに背中を預けに来る。  これは、優勝しなかった令嬢の話。 ※本作は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
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