『MC-モンスターズ・シティ-』と呼ばれる、基礎生物学研究所 -NIBB(National Institute for Basic Biology)- の研究所に於いて、研究員の1人であった朝日奈ヨシカは、第6ビオトープの所長に任命されることになった。
NIBBでは、深海で見つかった未知の生物、「グランスライム」の細胞を使った人工生物を研究しており、生物の可能性、及び“人類の細胞の強化”について、科学的な実験が長年に渡って実施されていた。
グランスライムが見つかった小笠原海溝は排他的経済水域(EEZ)に属していたため、この海域の管轄権を持っていた日本は、グランスライムの研究を始めた最初の国であった。
アメリカ、及び諸外国の協力のもと、グランスライムの細胞生物学は急速な発展を遂げ、あらゆる新生物の開発、また、人類の成長に向けた科学的な論文の発表が次々と起こった。
22世紀に向けた、新人類時代(ニューエイジ)の始まりである。
グランスライムの細胞は“万能細胞”と呼ばれ、あらゆる物質に対して互換性のある多能性を持っていただけでなく、細胞そのものの分子間力を上げる「ゲージ(細胞レベル)」と呼ばれる化学的性質が、グランスライムそのものの生体において発見されることになった。
グランスライムを使って生み出された細胞レベルの高い生物は『アンチ・エイジング』と呼ばれ、生物そのものが持つ寿命や身体能力が飛躍的に向上した「種」に分類されていた。
近年、『新人類』と呼ばれる新たな進化形態を生み出そうと各国で研究が続けられていたが、一向に成果が得られることはなかった。
グランスライムの細胞を利用した新しい薬の開発(創薬)や再生医療への応用は急速な成長を遂げていたものの、「人間」という種の生物学的な進化に向けた明確な発展だけは、いまだ日の目を見ることはなかった。
そんな中、人間の細胞を培養し、グランスライムそのものと結合させることを目的とした新たな実験が、NIBBの第0ビオトープ(小笠原海溝の深海)にて開始されたが…
文字数 651
最終更新日 2024.08.25
登録日 2024.08.25
『五曜星』とよばれる神々によって滅亡の危機に瀕していた人類は、最後に生き残った数万人もの兵士たちの命を犠牲にし、究極魔法「アポカリプス」を唱えた。
数万人もの英霊たちによって異空間へのゲートが開かれ、人類は束の間の休息を得る。
アポカリプスによって開かれたゲートの向こうには、外部からの情報の一切を遮断する「暗黒空間」が出現し、人間たちが住んでいた最後の砦、『グレート・ウォール』の都市部が闇の中へと呑み込まれた。
アポカリプスの効果が続く時間は1000年。
つまり、人類たちに残された最後の時間は、”残り1000年“ということになる。
「1000年の眠り」から覚め、人々は神々を退けられる力を得ることができるか?
人類の存亡をかけた戦いが、今、始まる。
文字数 599
最終更新日 2024.08.24
登録日 2024.08.24
古来より世界各地で「妖魔」と呼ばれる魔物が存在し、人々の生活を脅かしていた。
妖魔を討伐するべく立ち上げられた世界魔物対策討伐機関、「N.D.C.S.O」に所属していた笹瀬スバルは、退魔師としての育成学校、大阪府立退魔師養成高校に通いながら、A級妖魔として認定されている「雪女」とある“取引”をしていた。
スバルは幼少期の頃に彼女と知り合ったことで、社会的に禁忌とされてきた【人と妖魔との関わり】についてをいつも疑問に思ってきた。
というのも、雪女である“氷咲たま”は、人を襲うことを毛嫌いしており、妖魔としての生き方に疑問を抱き続けてきたからだ。
あらゆる妖魔は「人の心」から生み出されていると、近年の研究によって明らかになっており、その生物学的な由来は「人間」に共通するという点から、必ずしも人に害をなすとは限らないことが、ある研究者の論文によっても示唆されてきた。
たまはスバルに出会って以降、彼の家に棲みついており、退魔師の目から逃れるための生活を送ってきた。
いつか、妖魔が自由に暮らせる場所を見つける。
その「夢」を胸に、穏やかな日々を送っていたが…
文字数 4,352
最終更新日 2024.08.24
登録日 2024.08.17
世界には四つの大陸があり、それぞれの大陸において【シスエレメント】と呼ばれる巨大な魔鉱石が存在していた。
北の大陸には青のシスエレメント。
東には赤。
西には黄色。
そして、南には緑が。
世界は四つのシスエレメントによって均衡が保たれており、それは数千年もの間、【世界の秩序】として言い伝えられ、世界に於ける「天理」として、人々の教えの中に守られ続けてきた。
かつていくつかの戦争があったが、それは大陸間戦争の記録として今日の文献に残っており、それぞれの国の領土を広げるために起こった“人間同士の戦い”であったと伝えられている。
北の大陸、コルリウス
東の大陸、イーフリート
西の大陸、グレートウォール
南の大陸、ディアボロス
それぞれがぞれぞれの大陸において独自の生態系を築き、四つのシスエレメントが持つ魔力の恩恵を受けながら、豊かな暮らしと裕福な歴史を送ってきた。
創始暦2101年。
人間たちは自らの住む大陸を守るべく、それぞれのシスエレメントの恩寵にまつわる“魔法軍事帝国”を築き上げてきた。
かつての大陸間戦争は、四つのシスエレメントを巡る戦いであった。
しかし未だ大陸を超えてシスエレメントの領域が侵された歴史はなく、四つの大陸に拠点を置く国々は平和を保ち続けられてきたと言える。
東の大陸、イーフリートの中心にある軍事国家、ガルバディアの傭兵養成学校は、優れた魔法生を育成するべく、「バトルロード」と呼ばれる”傭兵訓練システム“を構築していた。
世は戦乱の時代だった
イーフリートに隣接する大陸、ディアボロスを支配する“グラシアル聖国”が、各大陸への宣戦布告を実施したのだ。
彼らは長年研究を続けてきた科学技術によって、『人工魔鉱石』という黒色のシスエレメントを生み出し、“ブラックタール”と呼ばれる魔導兵士を数多く製造していた。
ブラックタールは本来の人間の能力を大きく超える代わりに、理性を失い、異形の怪物へと変化することが明らかになっていた。
そして、最も特筆すべきは、ブラックタールはあらゆるシスエレメントを取り込むことができる“変異細胞”を持っているという点だった。
グラシアル聖国はこの特性を利用し、各大陸にある3つのシスエレメントを奪おうと、それら”兵器”を送り込むことを画策するが…
文字数 28,240
最終更新日 2024.08.24
登録日 2024.07.16
穏やかな時間が流れている小さな漁村、ゴンダダ。
この村では、漁業や稲作を中心として生活を送っている人々が、諍いごともない平和なひとときを過ごしていた。
村人の少年、クロは、幼馴染のスズと一緒に、家の手伝いや魚釣りの練習をしながら、笑顔の絶えない日々を送っていた。
そんなある日のことだった。
『アンダーグラウンド』と名乗る集団が村を襲い、突如として日常が失われたのだ。
クロは目の前で家族が殺され、命からがら逃げ出していた。
スズは謎の集団に連れ去られていた。
何もできず、助けを呼ぶこともできずに逃げ出した先で、とある行商人“ラッキー・F・ロックス“と出会う。
彼は、大陸の南にある学問の国、シンフォニアからやってきた無所属のレンジャーでもあり…
文字数 1,878
最終更新日 2024.08.18
登録日 2024.08.18
人類の魂を養分とする“ヴィジランテ“という「種族」は、『原始のスープ』と呼ばれるオリュンポスの海底に数千年も前から住んでいた。
彼らは人間を“製造”し、種族として成長させ、生物の肉体の元となる「魂=精神エネルギー」のレベルを引き上げることを目的としていた。
成長させた人間たちの遺伝情報を集め、「生物種」としての成長を遂げるため、『魂の器』と呼ばれる“ドライバー”を製造、育成していた。
全ては、“星の運命”に抗うための、壮大な計画の一部だった。
ドライバーと呼ばれる者たちは人間と同じような姿形をしているが、そのままでは「自我」を持たず、「魂」を持たない。
そのかわりエネルギーを入れるための容量が他の生物たちとは異なっており、その能力も人間たちとは一線を画す。
しかし、無数のドライバーを製造する過程で、突然変異種と呼ばれる「アンチ・ドライバー」が生まれたのは、オリュンポスの12柱の1人、『クロノス』の想定していなかった出来事だった。
クロノスはドライバーの「肉体」を作る役目を担っていたが、アンチ・ドライバーの生まれた原因を突き止めることができず、一時製造の中止を余儀なくされてしまう。
アンチ・ドライバーは人間と同じように自我を持ち、「自由意志」と呼ばれる反乱因子を持つ”失敗作”だった。
アンチ・ドライバーとして生まれた“ニッキー・ヴェストフェルト”は、自らの存在が消されることを恐れ、オリュンポスから逃げ出していた。
反逆者として人間界に紛れる傍ら、王国の騎士たちがこよなく愛する酒場、『フリーダム』の2代目の店主として、「人」として生きていくための生計を立てていた。
彼女の住む西の大国、サンシティに、とある危機が迫っていることも知らずに。
文字数 480
最終更新日 2024.08.16
登録日 2024.08.16
万年予選敗退落ちの弱小野球部、春日高校は、メンバーの不足により廃部寸前の危機に陥っていた。
メジャーリーガーの父を持ち、アメリカ育ちであった氷室ネルは、父親が通っていた春日高校に通い、選手育成の道に進むことを志そうとしていた。
彼女の夢は父親のような「プロ野球選手」になることだったが、性別の関係で夢を諦め、途方に暮れる日々を送っていた。
そんな中、父親からある言葉をかけられる。
野球をプレーすることだけが、野球の「全て」ではない。
野球をするための環境や、それをサポートする人たちがいるからこそ、今の自分がいる。
いつか、「自分」を越えるメジャーリーガーを連れてこい。
彼女に伝えていた。
日本には才能あふれる選手たちがいる。
お前が今まで培ってきたノウハウを、日本の子たちに伝えてみてはどうか?
メジャーリーグという舞台で、いつか、父親を越える選手を連れてきたい。
彼女はそう決心し、生まれ故郷である鹿児島市に、一時帰国することになるが…
文字数 510
最終更新日 2024.08.16
登録日 2024.08.16
約30億年前に存在していた古代の真菌、『ゾーイ』を利用した生物兵器開発プロジェクトが、科学技術振興機構、「ISTC」によって発足されていた。
Zプロジェクトと名付けられたこのプロジェクトで生まれた、「リボソーム変異体」と呼ばれる分子機械(※「リボソーム」とは、数本のRNA分子と50種類ほどのタンパク質からなる巨大なRNA・タンパク複合体である)は、あらゆる生物種の持つ遺伝情報を越えて、細胞壁の「壁」を越えられる遺伝形質の個体変異を無視したアメーバ運動を、連続的に可能にできるメカニズムを提供するに至った。
ゾーイの細胞因子、「ナノ」に寄生された不死川アカリは、10年前のある日を境に。不老不死の肉体を手に入れることになる。
研究所から逃げ出し、やっとの思いで生まれ故郷である旭川市にたどり着いたアカリだったが、彼女は家族に迷惑をかけまいと、ある「友人」の元へと訪ねようとしていた。
友人とは中学時代の元カレであり、“初体験”の相手。
藤堂ツバサ。
訳あって中学時代に別れたきり、彼とは連絡を取っていなかった。
ある組織に追われる身となった彼女は、組織の実態を探ろうとしていた「国際刑事警察委員会(ICPC)」の日本支部の場所を突き止め、自らの存在を抹消しようとするが…
文字数 25,131
最終更新日 2024.08.15
登録日 2024.08.12
世界に存在しない区画、『第零番地区(ゼロ・ゾーン)』。
ここでは、“世界に属さない人たち”が暮らしており、現実世界とは対をなす「場所」として、巨大な機械都市が建設されていた。
ゼロ・ゾーンは、現実世界の“片割れ”であると言われる場所であり、また、過去と未来の交差点でもあった。
現実は、たった一つの選択によって生まれ、一つの時間の先につながっていく。
私たちが暮らしている「現在」とは、事象の地平面において1つの確率が収束した姿であり、時空の揺らぎが閉じた状態でもある。
ただし、世界には“裏のチャンネル”と呼ばれる場所が存在していた。
その場所は、まだ「現在」が「現実」に到達していない場所であり、また、過去と未来が“動き続けている場所”でもあった。
現在にたどり着けていない、あらゆる可能性の集う場所。
「ゼロ・ゾーン」とは、すなわち、“そうならなかったという時間”が集まる場所のことを指していた。
「A」であり、「B」であるもの。
それでいて、現実ではないもの。
私たちは普段の生活の中で、何気ない選択を取ることがあるだろう。
しかしその選択は、たった1つの時間と空間の岸辺に辿り着き、決して変わることのない「結果」へと結びつく。
——もし、あの時ああしていたら…
長門高校に通っていた赤木ユウタは、突如として街中に現れた謎の球体に吸い込まれる。
暗闇に包まれた視界の中で、走馬灯のような目まぐるしい景色が頭の中に駆け巡った後、得体の知れない化け物が、自分を襲おうとしていることに気づいて…
文字数 2,376
最終更新日 2024.08.11
登録日 2024.08.11
星の内部に巡るエネルギー、「エンタングルメント」を利用した新しい文明が、“ディープ・グラウンド”という水の都を中心に繁栄していた。
ディープ・グラウンドには“ウォーターエージェンシー(WA)“という巨大企業が鎮座しており、かつて世界に存在していた「人」という種族の研究を行うための生命科学研究所が、センター・ドームというビルを中心に建設されていた。
ディープ・グラウンドは、世界最大の商業都市としての側面も持っており、WAが提供する経済的な資金力を元手に、世界全土を網羅する防衛都市としての成長を遂げつつあった。
世界は“汚染”が進みつつあった。
「死獣化(デスゲイズ)」と呼ばれる原因不明の病がルカたちの体を蝕み、徐々にその影響を無視できないほどの被害が、年を追うごとに拡大していた。
ルカとは、新世界である『ミズガルズ』で生まれた新しい生命体のことである。
ルカの外見は人間とほとんど変わらないが、その“中身”は似て非なるものだった。
死獣と呼ばれるモンスターは、死獣化に罹ったルカから変異した魔物たちのことだ。
WAはこの死獣を治療できる方法を模索していたが、同時に、街の平和を脅かすこの魔物たちを駆逐するため、特殊な訓練を積んだ”兵士“たちを育成していた。
兵士たちは『ランナー』と呼ばれた。
次期ランナー候補であった訓練生、キサラギ・ロキは、街の郊外に出没した死獣を討伐するべく、同じ訓練生であるハルとともに、現地へと赴くが…
文字数 986
最終更新日 2024.08.10
登録日 2024.08.10
人間には生まれつき「ソウル」と呼ばれる呪力が存在している。
呪力とは、別名“負のエネルギー”と呼ばれる。
負のエネルギーは、魂の原型となるエネルギーの一種であり、“生物の持つ生命力として“、細胞の中に潜在する「物質」だった。
この負のエネルギーは必ずしも“マイナスの感情”、つまり「悪」となる元のエネルギーを意味しているわけではない。
ただし負のエネルギーには、同じく人間の持つ“正のエネルギー”の流れを阻害してしまうほどの強さがあり、生命体としての形を維持するために、エネルギーを常に対流させられる「ルート」を構築する必要があった。
負のエネルギーを、外へと放出できる「ルート」を。
そうしなければ、内側からのエネルギーによって身を灼かれ、肉体の原型を留めることができなくなってしまうからだ。
だからこそ、「人」として生きていくためには、肉体と精神を切り離す必要があった。
『魂の契約』と呼ばれるそれは、自我が芽生えるとされる2歳前後の頃に行われる、”社会的義務”の1つだった。
その後、修行を積み、少しずつ負のエネルギーをコントロールできる技術を磨いていくことになり、「モンスター・テイマー」としてのステータスを築いていくことになる。
魂の契約によって、人間には“パートナー”と呼ばれる存在が生まれる。
「幻獣」と呼ばれるそれは、自分自身の分身であり、また、「可能性」そのものでもあった。
時には笑い、時には喧嘩し、人生を共にしていく「ソウルメイト」として歩んでいく彼らを、人々は『友』と呼ぶ。
4年に一度開催されるハンター試験に参加した、タマネギ村いちばんの天才モンスター・テイマー、サーシャ・シュヴァルツシルトも、自らのパートナーである「キューブ」を、“最高のモンスター”であると自称していて…
文字数 2,194
最終更新日 2024.08.08
登録日 2024.08.07
人々の見る夢で構成された町、神廻町。
そこは、人々の記憶が集う「場所」でもあった。
現在に生きている人も、そうでない人も、永遠に変わることがない時間と空間の中で、平和なひと時を過ごしていた
世界が存在している限りは、神廻町も消えることがない。
ただし、この場所では、「可能性」という概念がなかった。
人生という制約がなく、縛られる“ルール”もない
一見するとそこは楽園であり、人々が理想とする世界でもあった。
2001年7月に起きた、死傷者約300人以上にも上った脱線事故。
事故の当日、先頭車両に乗車していた夏凪ウミは、生と死の境目を彷徨っていた。
夢の中で神廻町に紛れ込んでしまった彼女は、町の住人である、涼風ソラと出会う。
ソラは元々現実に住んでいた人間ではなく、神廻町で生まれ育った「夢の住人」と呼ばれる存在だった。
この町では、そういった人間があちこちに存在していて、現実に存在している人の「魂」と一緒に、永遠に続く時間の流れの中に漂っていた。
自らの存在が、世界のどこにも属していないことも知らずに。
夏凪ウミは、ソラを見て驚く。
そう、彼は栞にとって、どこか見覚えのある人間だった。
小学生の時に告白した、“初恋”の相手に——
文字数 3,669
最終更新日 2024.08.04
登録日 2024.07.29
古来より人々の間では、「精霊」と呼ばれる、草木、動物、人、無生物、人工物などひとつひとつに宿っている超自然的な存在が、“【生物】という概念の誕生とその歴史に関係している”と言い伝えられてきた。
現代社会においてもその存在が科学的に証明できない状況であったが、「マテリアルバンク」と呼ばれる“霊魂錬金術科学研究所”という機構が発足して以降、あらゆる生物の肉体には、「マテリア」と呼ばれる未知の原子が存在していることが明らかになった。
このマテリアを使って肉体と精神を切り離す“霊魂錬金術”と呼ばれるテクノロジーが発展し、コンピュータ上にあらゆる「死者」のデータを保存するという計画が、2031年よりスタートした。
そしてその計画の中枢を担う研究員のグループに、「マテリアメーカー」と呼ばれる錬金術師が配属されることになる。
彼らは、“陰陽道”と呼ばれる、古代日本の律令制下において中務省の陰陽寮に属していた者たちであり、『陰陽五行』に基づいた思想によって、悪霊の討伐や死者の霊の鎮魂の役割を1000年以上も担っていた。
そしてその歴史の中でも、“1000年に1人の逸材”と呼ばれる少女が、マテリア研究所付属の“霊術師育成学校”に在学していた。
彼女は、研究所のある「計画」によって生まれてしまった特殊生命体、【プラーナ(透明人間)】とある“取引”をする。
それは、プラーナの“精神”として生まれ変わった火神ナオトという少年がかつて描いていた「夢」であり、ある少女との約束を叶えるための「時間」だった。
「世界に存在しなくなったとしても、あなたはそれを望むの?」
生と死の狭間を流れる現実の果てに、待ち受けているものとは——?
文字数 413
最終更新日 2024.07.14
登録日 2024.07.14
15歳の夏、高校生活をスタートさせたばかりの女子高生・北川綾音(おおさかあやね)は、中学を卒業して、特に目標がないまま、気がつけば夏が終わろうとしていることに驚く。
退屈な授業の片隅で、何事もなく過ぎていく猛スピードの日常の違和感を、どこか拭いきれないまま、また、一日が終わろうとしていた。
そんな中、ある日クラスメイトの一人・八王子桜智(はちおうじさち)と花火大会に参加して、夜空に飛んでいくたくさんの花火と光の道すがら、遠い未来について話し合う。
会話の中、桜智は、綾音の両親のことについて切り出し、最近お墓参りに行っているのかを質問する。
彼女の両親は、4年前、2011年3月に起きた、東日本大地震の被災者だった。
綾音は節子の質問に対して、笑いながら「明日覗いてみる」と返事をするが...
文字数 1,021
最終更新日 2024.07.07
登録日 2024.07.07
『ソウルシーカー』と呼ばれるDEA(Devil Enforcement Administratio アメリカ連邦悪魔取締局)の職員、ナナ・キャットは、悪魔狩りの精鋭部隊「LAタイムズ」の一員として、“ヴィランズ”という悪魔を討伐する仕事を担っていた。
ナナは人間ではなく、鬼の一族として古くから悪魔狩りの活動を続けており、“悪魔化”と呼ばれる謎の現象を収束するべく、数百年もの間戦い続けていた。
“悪魔化”とは、悪意を持つ人間が罪を犯した時に起きる現象であり、罪の大きさの度合いによって多少の差異はあるものの、一定の確率で人間が「悪魔」へと変貌する時に用いられる指標である。
地上には元々人間ではなく、『鬼の一族』が繁栄を極めていた。
鬼は人間を毛嫌い、奴隷のように扱い続けてきたが、『黙示録の戦争』と呼ばれる出来事を機に、衰退の一途を辿ることになる。
その背景には、人間を愛した赤鬼のグループと、人間を嫌う青鬼のグループの対立があった。
赤鬼は人間と共存することを選び、青鬼は人間を駆逐することを望んでいた。
鬼は永遠に生きれる強い生命力がある反面、生殖器がなく、人間のように増え続けることができない生物学上の問題を抱えていた。
鬼を増やすには、自らの血を人間に与える必要があった。
“鬼化”と呼ばれる現象は、鬼が一族としての地位を確立するためには欠かせない儀式であり、また、プロセスでもあった。
つまり人間は鬼の一族にとっての“贄”であり、「血の器」として道具のように扱われてきていた。
今から約三千年も前のことである。
人間には人間の生活があり、生き方がある。
人間は鬼が繁栄するための道具ではなく、自由に生きるための権利がある。
人間と共存することを選んだ赤鬼は、人間と対等に生きることを望み、例え一族が滅びることになったとしても構わないとして、人間に血を分け与える行為そのものを禁止しようとした。
戦争によって多くのものを失ったが、代わりに得たものは平和であり、人間と鬼が互いに笑い合える日々であった。
しかし——
鬼と人間と、——悪魔。
星を巡る命の戦いが、今、幕を開ける。
文字数 2,948
最終更新日 2024.07.07
登録日 2024.07.07
創世暦4755年。
人類は新たな進化を遂げ、崩壊した地球を脱し、「漂流者」となって宇宙を旅していた。
彼らは第4次世界大戦の後、核兵器の使用によって荒廃した大地の上で、死にゆく星と生命の行く末を見届けようとしていた。
人類を救ったのは、ソラリス(調停者)と呼ばれる外界の“ヒト”であり、人類の“祖先”であり、——現生生物の祖先であった。
実は、人類を含む地球上のあらゆる生命体は、地球の誕生以後、宇宙生命化プログラム(エネルギー保存化計画)の一端として、原始生命体の細胞を分け与えられ、独自に進化を遂げた歴史を持っていた。
ソラリスは全宇宙に存在する無数の星に種を植え付け、あらゆる生命体の可能性を探り、様々な種と生命の繁栄を手助けする「箱舟」の役割を担っていた。
人類は、彼らの集積する生命のパーツ、——すなわち“宇宙生命化プログラム”の「データ」の一部として回収され、次なる進化へと向けたステップに移行していた。
銀河GN-z11の中にある星、カストル星には、かつて地球で暮らしていた人類の細胞を受け継ぐ「フェアリー」や「バーバリアン」、「アヤカシ」、「エルフ」、「ドラゴニア」、その他様々な種族が、“第一次大陸間戦争”と呼ばれる大規模な戦時時代の真っ只中にいた。
東の大陸に鎮座する帝国、ミゼリア東方共和国の兵士養成学校、『セントラル・アカデミー』の期待の新人として名を馳せる“セフィリア・ハールート”は、自らの特性を活かした修道士(ソーサラー)としての道を極めようと、日々の修練を重ねていた。
そんな最中、アカデミーの教官から“ある人物”と手を組んでみてくれないか?と提案を受ける。
彼女は研修生の身ながら、次期魔導兵候補生の一員として将来が約束されていたも同然だった。
誰かの手を借りる必要も、余計な勉学に励む必要もない。
しかし、教官は言ったのだ。
「お前に足りないものは、戦闘に於ける「力」ではなく、「知識」なのだ」
と。
彼女は理解できなかった。
力はもちろん、知識が不足していることなんて…
才能あふれる彼女の前に現れたのは、同じく“期待の新人”として名を馳せていたダリの村出身の戦士、“ソラ・アーケード”だった。
彼は、期待の新人ながら、とある問題点を抱えていて…
文字数 12,248
最終更新日 2024.06.18
登録日 2024.05.27
人々は夢を見ている。
現実と、非現実。
その境界線には、果てのない「線路」があった。
地平線の彼方へと伸びる、3番線の線路。
線路は、“いつの日かの世界”からやって来ていた。
昨日でも、今日でも無い世界から。
「線路を走る電車には、帰りの便がない。それでも行くの?」
夢と現実、——生と死の狭間にて繁栄する街、「黄泉國(よもつくに)」。
そこでは、人々の魂を捕食する存在、“ソウルイーター”と呼ばれる獣が跋扈していた。
これら魔物は人々の魂に棲みつき、内側から命を蝕んでいく存在であり、古くから下界(ソウル・シティ)を脅かす存在として忌み嫌われていた。
近年、ソウルイーターと呼ばれる怪物たちはその勢力を広げつつあり、『十界曼荼羅』と呼ばれる謎の軍事戦略組織が、黄泉国の中央に鎮座する『八葉蓮華』を破壊しようと目論んでいた。
八葉蓮華は人々の魂が輪廻するために必要なエネルギーの通り道であり、魂が持つ記憶を浄化し、新たな生へと昇華するための事象変異機関(Sマトリクス機関)であった。
出雲国真那(いずもくにまな)は、元々ソウルイーターとして生まれた魔物であったが、ある出来事を境に、ソウル・シティに紛れ込んでしまう。
紛れ込んだ当時、幼子の姿であった彼女を森の中で見つけた平山薫は、彼女を匿い、自らの娘として育てることを決意する。
平山薫は、黄泉国の元住人であり、ソウル・シティに紛れ込む魔物たちを討伐する役割を担うハンターだった。
ある日、魔物との戦闘によって脳に重い傷を負ってしまった薫は、植物状態となり、1年以上意識不明の状態が続いていた。
真那は自らがソウル・イーターであること、人間ではない異形の怪物であることを知らされないまま、12年もの間下界で暮らしていた。
しかし、薫の書斎で、彼女が書いた一冊の日記を発見し、そこで自らの存在や、薫が待ち受ける運命を目の当たりにする。
薫の意識が戻らないことを悟った真那は、急ぎ病院へと向かうが——
文字数 971
最終更新日 2024.06.16
登録日 2024.06.16
ねえ、タカ君。
私はもう存在していないって知っている?
私が「人間」じゃなくて、神様の子どもだってことを。
あなたと会えた日から、いつも思ってた。
いつかこうなる日が来るだろうな、って。
いつか、今日という日が無くなるんだろうな、——って。
何もなかったことにはしたくないんだ。
あなたと出会えたことを、なかったことにはしたくなかった。
でも、もう行かなくちゃいけない。
星が降るのを止めなくちゃいけない。
きっと、もう、間に合わない。
だけど——
あなたと過ごせた日々のことを、世界に置いていくことはできない。
私は最初からどこにもいなかった。
それが「運命」なら、私たちが立ち止まれる場所は、もうどこにも残っていない。
たとえ抗うことができない時間が、明日の世界に続いているとしても、きっといつか、あなたと再会できる日が来ることを願っている。
失われた記憶の底で、いつか、雨が止む日が訪れたとしても。
文字数 4,062
最終更新日 2024.06.15
登録日 2024.06.09
時読みの巫女としての血を引く鬼、三途川三月(さんずがわみつき)は、18の年に必ず死ぬという一族の運命に抗うため、1000年の歴史を持つ自らの「血」を断ち切るために、『雛代の社』と呼ばれる一族の魂が眠る祠を訪れる。
三途川の家系は、人の魂が洗い流されるという「信濃川」の清流を保つために、“人柱”としての役割を担っていた一族だった。
彼女は人柱としての宿命を担うため、自由に生きるという選択を奪われながら、それでも、村に住んでいた時透飛鳥(ときとうあすか)という少年に惹かれ、人として生きる道に憧れを抱く。
同じ村で子供時代を過ごし、三月は巫女として、飛鳥は国に仕える武士として旅立とうかという頃、2人は恋に落ちていた。
飛鳥は三月が一族としての宿命を担っていること、そして人間ではなく、「鬼」であるということを知りながら、彼女の運命に共に立ち向かうことを決意した。
三月の手を持ち、一緒に村を出て、自由に生きるための道を探すべく、祠に向かう。
祠を破壊し、その地に眠っていた魂が浄化していく様を見て、呪われた三月の運命が、無事に断ち切れたのだと思っていた。
しかし、2人が待ち受けていた未来は——
文字数 878
最終更新日 2024.06.01
登録日 2024.06.01
「じきに空が沈む」
神戸市街地の交差点。
歩行者天国の信号機の上で、スカートをはためかせる女子高生が1人、座っている。
並行世界の断層、——タイム・スクエア。
そこは、現実の「壁」に飲み込まれる、滅びる運命を待つ世界だった。
女子高生、——大坂楓は、時空要塞の都市、クロノポリスに住まう住人であり、“セカンド・キッド”と呼ばれる「アノマリー」の1人で、22世紀の世界へと時空を繋ぐ計画、『人工時間結晶化プログラム』の実行のための、重要な任務を任されていた。
世界は滅びる運命だった。
それは、1995年に起きた災害、”阪神淡路大震災“をきっかけとして引き起こされた、『第一次タイム・クラッシュ』が原因であり、ある科学装置を使ったこと、——起こるべきはずだった出来事を変えてしまったことが、全ての始まりだった。
世界の時空平面上に広がる境界、「ベッケンシュタイン境界」。
その境界に入った亀裂を塞ぐため、人類は時空の『修復』を行うことを試みる。
大坂楓は、街に出現した「ゼノ」を排除するため、1人奔走していた。
「ゼノ」は時空の亀裂から出てきた“魔物=外来種“であり、世界には元々存在していなかった異形の怪物たちだった。
彼らは人類最後の砦、クロノポリスへと侵入し、人類の計画を阻止しようと攻撃を続けていた。
彼女は街中の交差点で、ある少年と出会う。
並行世界の果て、——過去と未来が交錯する、時の平原の彼方で。
文字数 20,182
最終更新日 2024.05.31
登録日 2024.03.31