羽黒山、開山

 日本の古代史は改竄された。
 いや、正史「日本書紀」は、史実を覆い隠すために作られたと言ってもいい。
 ただ、そもそも「歴史」というものは、そのようにしてできるものかもしれないのだが。
 ーー崇峻天皇は暗殺された。
 ーー崇峻崩御に伴う「殯」の儀式を行わず、死後すぐに赤坂天王山古墳に埋葬された。
 正史、日本書紀はそのように書く。
 しかし、それが真実である可能性は、10パーセントもあろうか。
 むしろ、「殯」がなかったのだから、天皇ではなかった。
 すなわち、即位すらしていなかった、と考えるほうが自然ではないのか。
 その議論で、鍵となるのは泊瀬部皇子=崇峻天皇の「生年」であろう。
 他方、崇峻天皇の第一皇子、蜂子皇子はどうだ。
 崇峻天皇の崩御後、皇子は都を逃れ、出羽に赴いた、という伝説が残り、その後1400年、その蜂子皇子が開祖とされる羽黒信仰は脈々と続いてきた。
 日本書紀にこそ書かれてはいないが、蜂子皇子伝説が史実である可能性は決して低くないだろう。
 そして、蜂子皇子の母である、小手姫の伝説はどうか。
 なぜ、587年に福島県の女神山で亡くなったという伝説が残るのか。
 日本書紀が、崇峻天皇の崩御年とする、592年よりも、5年も前である。
 謎は深まるばかりである。
 読み解いても、日本の古代史は、決して真実を教えてはくれない。
 数々の記録、伝承の断片をつなぎ、蜂子皇子にまつわる逸話に、一つの流れを持たせるために、筆者はこの物語を編んだ。

 なお、この作品で、出羽三部作は完結する。
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