「針子」の検索結果
全体で47件見つかりました。
十九世紀オーストリア。
ウィーン帝室図書館の地下書庫で、一冊の古い手記が発見された。
そこに記されていたのは、存在しないはずの王国「エルミア」と、一人の王女の記録。
古手記を読み解くホーフブルク官僚ルーカスは、革命前夜の現実の中で、エルミア王女の記録をしたためた青年文官のフレートに、自分をなぞらえ手記に魅了されてゆく。
当たり前の日々を当たり前の使命として励むルーカスの耳に銃声が響く。
混乱してゆく宮廷。民衆の罵声。
皇帝一家すら亡命する中、ルーカスはたった一人手記を読み解き続ける。
一方、手記内のフレートは、王女に触れるにつれ自らの信じていた世界の深淵を知り、人間とは、王族とは何かを問われる。
手記を最後まで読み終えたルーカスが「記録を残す意味」を問われた時、決断し出した答えは、英断でもなんでもない。
書物に惹き付けられた、ひとりの人間の意思。
ウィーン三月革命を舞台に、ふたつの物語を綴った歴史小説です。
本作はムソルグスキー『展覧会の絵』の構成を参考にしています。
ルーカスの語りは、展示を巡るプロムナードのように進み、その歩みは少しずつ変化していきます。
※アルファポリス25周年カップ145位
文字数 62,733
最終更新日 2026.07.02
登録日 2025.10.26
さく、さく、ひと針通すたび、淡く小さな光の粒がふわんと布に浮かぶ。木枠にはめられた絹のハンカチに刺繍糸の花が咲く。
――これを使う人が、きっと、悲しくならないように。
私は願いながら手を進める。
魔力は素直だ。
心に迷いがあると色が濁る。だから、それだけを考えながら手を動かすのだ。そうして仕上がった刺繍を、必要としてくれる人の元へ届けよう。
「魔力は『想いの力』なの」
母の口癖だった。
この世界は、心を込めて作ったものにはそれがなんであれ魔力がこもる。込められた魔力は光の粒となって私たちを照らすんだ。
針仕事で生計を立てているルチアーナ・カフィ。ある日いつも通り仕事をしていると見えないはずの妖精が現れて――。
※カクヨムさん、小説家になろうさんでも掲載しています。
文字数 43,022
最終更新日 2020.07.19
登録日 2020.07.06
舞台は初夏の熱風が吹き抜ける、大江戸八丁堀。
うらぶれた長屋の片隅で、古着の「お直し処」を営む美しき女主人・おたま。
椿油で手入れされた白い指先から繰り出される彼女の針仕事は、まさに神業。衣服の傷を修復するだけでなく、そこに込められた人々の想いや、千切れかけた不器用な絆までも完璧に縫い合わせてしまう。
しかし、下町のしがない針子として生きる彼女には、決して誰にも明かせぬ壮絶な「秘密」があった――。
驚異的な「数理の目」を持ち、針を通す仕草に息を呑むような気品を漂わせるおたま。彼女が名前を捨て、過去を捨ててまで、ただ一振りの針を誇りとして生きる理由とは?
そんな彼女の前に現れたのは、小汚い野良犬を装いながらも、圧倒的な剣気と底知れぬ闇を纏った謎の素浪人・松葉。
おたまが施す「魂の針仕事」に魅せられ、時に不敵に、時に不器用におたまの背中を守る彼もまた、大江戸の勢力図をひっくり返すほどの「裏の顔」を隠し持っていた。
ある日、長屋の貧しい少年が持ち込んできた、引きちぎられた衣服。
そこから、おたまがずっと胸の奥底に封印してきた凄惨な過去の因縁、そして大江戸の最高中枢に渦巻く巨大な国家の陰謀が、静かに、しかし容赦なく牙を剥き始める。
絡み合う嘘と真実。襲い来る冷酷な暗殺者の影。
逃れられぬ運命の糸に手繰り寄せられるように、八丁堀の小さなお直し処は、日の本全土を揺るがす壮大な戦いへと巻き込まれていく――!
「衣服であれ何であれ、目の前に大きな綻びを見つけてしまったのなら……それを一本の糸で美しく直すことこそが、職人の務めですもの」
長屋の仲間たちと紡ぐ温かな人情劇の裏で、加速していく緊迫の算術サスペンス。
おたまがその細い指先で一本の糸を引き絞るとき、大江戸の運命が激しく動き出す!
文字数 250,794
最終更新日 2026.06.13
登録日 2026.05.25