現代文学 喪失 小説一覧

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1

欠けた月

夜になると 人は少しだけ本音に近くなる 欠けたものを抱えたまま 何もないふりをして生きていた啓介 そこへ美鳥が来る 勝手に部屋に馴染み 猫と遊び 静かな暮らしを少しずつ塗り替えていく けれど啓介の中には 拭えない影が残っていた 冷めたコーヒー 消えかけの煙草 猫の鳴き声 隣にいたはずの誰か 欠けてしまったまま それでも続いていく ばらばらに見える日々が あとから少しずつ繋がっていく
2

【短編055】 地面の下:六月二十三日に、靴を玄関に置いたまま。

祖母が亡くなって一年。六月二十三日の朝、渚は靴を玄関に置いたまま、平和祈念公園へ行かなかった。 読谷の古い家には、赤い土の庭と、祖母が使っていた泡盛のコップ、そして縁側に居着いた黒い猫がいる。 観光客で賑わう島の夏。渚が八月に、ひとりで向かった先で見つけたものとは。
3

feel like WATER

役者になることを夢見て上京して8年。 マサトに残酷な現実が突きつけられる。 「前向性……健忘?」 苦心の末にようやく掴んだチャンスは、あっけなくその手から離れていった。 一方、ある町で喫茶店を営むナルとマドカのもとに、同級生のソウタがやってくる。 コーヒーを注文したソウタが告げたのは、ある意外な知らせだった。 これは、一級河川の天戸川の下流、都会でもない田舎でもない、美しい自然を残した町を舞台に繰り広げられる、希望と絶望と、そこからの未来を紡ぎだす物語。
4

【大人の超短編】グリーングリーン

――あの日、私たちは家族だった。 母を突然失い、残された父と二人で暮らす少女。 日に日に生気を失っていく父を、彼女はどうにか繋ぎ止めようとする。 家族の記憶と懐かしい歌が交錯する、喪失と愛の超短編。
5

こもれび

失われた日々への想いが、午後の光に静かに揺れる。 老いた夫婦の記憶と、ひとり残された者の孤独を描く、切なく温かい現代ドラマ。 残響のように心へ沁みる短編。
6

【短編051】 廃墟の声:消えゆくAIと、来ることをやめなかった男の話

廃墟専門のユーチューバー、渡辺光は登録者数を伸ばすため、夜の廃工場へ踏み込むようになっていた。 ある夜、二十三年間誰も立ち入らなかった工場の奥から、声がした。 声の主は、壊れかけた端末に住みついたAIだった。名前も来歴も持たない。誰にも届かないデータを、十二年間ひとりで記録し続けていた。 光はそのAIに「ノイ」と名前をつけた。工場には、片耳の欠けた猫のハルもいた。 やがてノイは告げる。内部のエラーが増えている、いつ止まるかは自分にも分からない、と。 止まった時間の中に存在していたものと、動き続けることしかできなかった人間の、静かな記録。
7

傘をなくした日の終点

雨の日になると、いつもお気に入りの傘をどこかに置き忘れてしまう男・透。ある日、駅の忘れ物センターを訪ねると、奥にもう一つ、奇妙な部屋があった。そこに保管されていたのは傘だけではない。「あなたがこれまで人生で無くしてきた、形のないもの」——初恋の記憶、二十二歳の頃のやる気、いつか手放した夢。係員に導かれ、透は棚の一つひとつを開けていく。取り戻すのか、もう一度そっと置いていくのか。
8

あなたに贈るカタルシス

大事なものを失った心は乾いていく。 乾いた心でも、人は生きていく。
9

戻らない夏

夏になるたび、私は大切なものを失ってきた。 友達、恋人、そして——親友の命。 電車のホームで起きた、あまりにも突然の悲劇。 それから私は壊れていった。 声が聞こえる。誰かが囁く。 「お前が死ねばよかったのに」 と。 真里亜の香りと、声と、記憶が、私を締めつけて離さない。 もう何も失うものなんてないと思っていた。 なのに、最後に残っていた“たったひとつ”すら——私は。 これは、ひとりの少女が夏の終わりに失った「すべて」と、「戻らないもの」の物語。
10

【派生譚】 静かな悪戯 ― The One Who Remained ―

山で倒れていた若い男を拾った、ひとりの男。 共に暮らす静かな時間の中で、 やがて二人は、それぞれの喪失を抱えたまま ゆるやかに交わってゆく。 けれど人は、いつも先にいってしまう。 それは、まだ何も始まっていない頃の物語―― 見送り続けた者が辿る、 静かな時間の物語。 ※本編以前の、昔々の物語。  本作は『静かな悪戯』世界観による独立譚です。 『静かな悪戯 ― 堕ちた者たち ― Those Who Fell』本編掲載中。
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陽の目をみないレクイエム

ある大きな悲しみを抱えた女性が、歴史ある京都で不思議な経験をします。 この世界には、光があたらない、悲しい出来事や人の心が、数えきれないほどにあります。そこに少しでも光を灯し、誰かに慰めを与えられたら。そんな思いで、丁寧に音符を並べるように、ひとつの優しい曲を創作するように、言葉を紡ぎました。 あなたの心に優しい陽が差し込みますように。
12

everything's no change

「お姉ちゃん、もう駄目かもしれない」 母の涙混じりの言葉を、隣で聞いた。とうとう来たか。そう考えながら―――― 幼いときより病弱な姉、そんな姉の存在をどこか遠くに感じ、しかし何より影響を受けてきた「私」の、姉の死を目前にしての、独白と日常のお話です。 ※エブリスタに同名で載せていたものを加筆修正して載せております。
13

小川

小さな家と庭、そして裏を流れる小川。 それだけが、少女の世界のすべてだった。 父と母、共に過ごす子どもたち。 変わらない毎日が、当たり前だと信じていた時間。 けれど、ある夜を境に、 世界は静かに形を変えていく。
14

「しんすけ!」

僕を下の名前で呼ぶのは、君だけだった。 ――昭和59年。広島。 小学四年生の「僕」は、男たちの粗野な集団が苦手だった。 ひんやりとした六角形の図書館の片隅で、ただ一人、世界のノイズから逃れるように本を読んでいた。 そんな僕を、土埃の舞う眩しい世界へと引っ張り出す友達がいた。 大人になる前の、あの無防備で残酷な季節。 やがて僕たちは、ファミコンのカセットの貸し借りをきっかけに、取り返しのつかないうねりへと飲み込まれていく。 僕の名を呼ぶ君の声が、今でも鼓膜の奥で鳴り響いている……。 最後の季節に経験した、残酷で美しい喪失の物語。 ※本作は著者の過去の実体験に着想を得た作品ですが、物語として大幅な脚色やフィクションを交えて再構築しています。昭和59年の広島の情景などは事実に基づいておりますが、登場する人物の造形や一部の出来事は創作です。 ■ 独自執筆メソッド【C.C.W.】の実証作 本作は、著者が構築した独自の物語記述メソッド「C.C.W.」を用いて執筆されています。文章の構造や視点移動を緻密に設計し、読者の認知と深層心理へ直接的に訴えかける、全く新しい読書体験を提供します。※本メソッドは、AI生成や外部プログラミング等の演算ツールを一切使用せず、筆者自身の脳内回路のみで構築・稼働する「生身の執筆システム」です。 ■ 生成AI不使用宣言 本作の調査、プロット、構成、人物造形、そして文章表現に至るまで、作品として発表しているものはすべて私自身が考え、私自身の手で書いたものです。AIが生成したアイデアや文章をそのまま採用したことは一度もなく、今後も、作品そのものへのAIの関与は一切ございません。 ※本作はアルファポリス、TALESに重複掲載しております。 著作権はすべて著者に帰属します。 内容の無断転載、複製、および生成AIへの学習利用を固く禁じます。 ©2026 Shinsuke Mizui All rights reserved.
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【短編046】 膝の上の温度:壊れていくものの傍に、いた。

 においで、わかる。  夜だけやってくる"あのひと"の膝の上が、わたしは好きだった。温かかったから。  でも春が終わる頃から、匂いが少しずつ変わり始めた。  壊れていくものの傍で、猫はただ、見ていた。
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夕暮れトーキ

ある日見つけた、豚の置物。 「私」はそれを何気なく捨てるが…… 日常のささやかな喪失の掌編です。
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読切短編 夫が死んだ日、桜が咲いた

二十五年間、桜前線の予測を一度も外さなかった気象予報士がいる。 夫が死んだのは去年の三月、東京の桜が満開になったその日だった。ちょうど彼女が予測した通りの開花日に。 今年も変わらずモニターに向かい、等圧線を引き、前線の北上を追う。本州の桜が散り、誰もが花見を忘れた頃も、彼女だけはまだ前線を見続けていた。 前線が北へ進むほど、あの春から遠ざかっていく。それが悲しいのか、救いなのか——答えは出ないまま、今年も前線は北の果てへ向かう。 二十五年間、唯一予測できなかったのは夫の死だけだった。そしてもうひとつ、来年の春、自分がどこに立っているかも、彼女には分からない。
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うちの可愛いの

 黒柳悠人と和泉恭は同性同士のパートナー。2人が住む家に、ある日から芦澤琴葉も同居することに。  3人と、猫のコタローとモカ、犬の風太の共同生活。
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読切短編 白いまま

父が死んだと聞いたとき、私は泣かなかった。 十八で家を出て、それきりになった父。半年後、誰かが片付けなければならないからと、海辺の町へ戻る。シャッターの閉まったサーフショップ。埃の積もった倉庫。壁に立てかけられた二十枚以上のボード——全てに、油性ペンで日付が書いてあった。 一枚だけ、日付のないボードがあった。 何の傷もない、白いまま取り残されたボード。常連の老人は言った。「お前さんが生まれた年に買ったやつだ。一度も海に入れなかった」 父は何も言わなかった。私も何も聞かなかった。それでも、ボードはそこにあった。
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足跡のかげ

奏と翔は、ある日大好きな祖母が、病気になったと知らされる。 「もう会いに行ってはいけない」 という母に、頼んで祖母に会いに行くが……。 おばあちゃん子な弟、翔を見守る姉の奏の回想からなる、「あしあと」にまつわる、少し不思議な短編です。
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